【咲-Saki-SS】亦野誠子「哩賽」

1 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 20:55:33.55 ID:Wzi8AXdL0

ちょうど昼前のこと、自宅でくつろいでいた亦野誠子の所に一匹の狸が訪ねてきました。

哩「邪魔するばい」

誠子「ん?お客さんかな?」

誠子「なんだ?声はするけど姿は見えない」

誠子「さては、また宮永先輩のいたずらかな?」

哩「ここばい」

誠子「うわ!何だ狸か、何の用だ?」

哩「恩返しにきたと」
2 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 20:59:49.53 ID:Wzi8AXdL0

誠子「恩返し?あぁお前きのう釣り堀で溺れてたのを助けた狸か!」

哩「そや」

誠子「私も色々な魚を釣ってきたけど、まさか釣り堀で狸が釣れるなんてねぇ……」

哩「ばってん、そのせつはお世話になったとよ」

誠子「はぁ、で、そのことの恩返しに……」

哩「あぁ、昨日そのことを新道寺の狸専用SNS『マイッター』に書き込んだら、『すばらです、その方は人間にしておくのは
もったいないほど出来た方ですね、いっそ狸にしてみれば?』ってリツイートが返って来たと」

誠子「狸の世界にそんなものがあるのか……」

3 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:04:59.26 ID:Wzi8AXdL0

哩「ぜひに恩返しをせねばと思ってきたと」

哩「助けてもらって恩を返さんば、人間にも劣ると」

誠子「さっきから人間の評価がすこぶる低いなぁ……」

哩「気にすることなか」

誠子「はぁ……」

哩「それより、何でも言ってくれて構わんと」

誠子「何でもするってもなぁ……人間の子供ならお使いを頼むなり、掃除をしてもらうなり出来るけど……」

誠子「狸だしなぁ……お使いに出しても相手にされないだろうし、モップにしたって毛が散ってよけい手間がかかるし……」

5 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:06:19.87 ID:Wzi8AXdL0

哩「さあ、何でも言ってくれ」

誠子「釣り餌用のミミズでも取ってきてもらおうかなぁ……いや、昨日買い足したばっかだしなぁ……」

誠子「う~む、困るなぁ」

誠子「そうだ!お前何か化けられないか?」

哩「化ける?あぁ化けるのなら得意ばい」

誠子「ほぅ、例えばどんなのに化けられるんだい?」

哩「ついこないだはお菓子に化けたばい」

誠子「ほうほう」

6 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:10:48.55 ID:Wzi8AXdL0

哩「お菓子に化けて道ばたに転がってると時々食い意地のはった馬鹿が釣れるばい」

哩「こないだなんて、赤くとんがった変な髪型した女が『あれ?こんなところにお菓子が落ちてる……』って言って拾おうと  したから、その手を思いっきり噛み付いてやったばい」

哩「そしたらそいつ『お、お菓子が噛み付いた!てるてる食べられちゃう!』なんて言って一目散に逃げて行ったばい」

誠子「……なにやってんだあの人……」

哩「ん?知り合いか?」

誠子「いや、全然知らない人だ……」

7 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:11:26.71 ID:kS6c9Ubzo

落語咲シリーズ

8 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:11:56.48 ID:Wzi8AXdL0

哩「他にも色々化けられるばい」

誠子「ほぅ……ならサイコロにも化けられるのか?」

哩「サイコロ?あぁそれなら得意ばい」

誠子「よし!それなら化けてみてくれ!」

哩「それ!」ぽん!

そういうと、たちどころに狸の姿は消え、そこには大きなサイコロが現れました。

誠子「あぁ、それじゃあ大きすぎるもっと小さく!」

9 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:14:15.56 ID:Wzi8AXdL0

哩「なんや、わがままやの」ぽん!

誠子「もっと、もっと小さく!あぁそれじゃあ小さすぎ!アリより小さいサイコロなんて聞いたことないぞ」

哩「まったく、注文が多いばい」

哩「それ!これでいいか?」ぽん!

誠子「おお!上出来上出来!」

誠子「いまからな仲間のところに博打を打ちに行くからなそれに使おうと思う」

哩「ほう、イカサマしようってわけやな」

誠子「そう、私がうまくやるからお前は言われた通りの数字を出してくれたらいいからな」

11 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:17:11.04 ID:Wzi8AXdL0

哩「わかったばい」

こうして誠子と哩は博打仲間のところへに遊びに行きました。
着いてみると真っ昼間から博打で盛り上がっている様子、これはチャンスと誠子は鷺森灼に声をかけました。

灼「う~ん、今日は誰がやっても胴つぶれしちゃうな……」

フナQ「なんや、今日は厄日やな」

怜「なんか、体の調子が悪くなってきたわ……」こほっこほっ

誠子「お~い!私もまぜてくれないか?」

12 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:19:05.68 ID:Wzi8AXdL0

フナQ「お!誠子か、残念やけど今日はもうお開きや」

誠子「そんなことを言わずにさ、頼むよ」

灼「まぁいいけど……」

フナQ「しゃあないな」

誠子「よし!今日は私に胴を取らせてくれないか?」

怜「胴を取らせるといっても……」こほっ

灼「お金は持ってきてるの?」

13 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:20:29.17 ID:Wzi8AXdL0

誠子「ほら有り金全部用意してきてるんだ!」

灼「ふ~ん面白そ……」

誠子「だろ?」

灼「勘違いしないで、お金の問題じゃない亦野さんから有り金全部奪うのが面白そうだと言ってる……」

誠子「む!」

誠子(相変わらずむかつく奴だな……まぁせいぜいたっぷり儲けさせてもらうよ)

怜「ほな、始めるで!」

15 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:22:39.91 ID:Wzi8AXdL0

誠子「ちょっと待ってくれ」

フナQ「どうしたん?」

誠子「そのサイコロ、さっきから胴つぶれが起きて縁起が悪いだろ?」

誠子「だから、私が持ってきたこのサイコロを使ってもいいか?」

サイコロ「………」

怜「まぁええよ」

灼「じっ……」

16 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:23:47.88 ID:Wzi8AXdL0

誠子「な、なんだ?なにかおかしなところがあるか?」

灼「そのサイコロ触ってもいい?」

誠子「なんだ、疑ってるのか?ほれ!」

サイコロ「………」

灼「なんだか妙に生暖か……」さわさわ…

誠子「そ、それは肌身離さず持ってきたからかな」あせあせ

サイコロ「ぴくっ!……」

17 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:25:21.42 ID:Wzi8AXdL0

灼「!?今なにか動いた!」

誠子「き、気のせいだよ」ダラダラ

灼(もしかして、イカサマ?)

灼「………」ハンマーすちゃ…

誠子「おいおい何する気だよ…」

灼「えい!」ガシャーン!!

誠子「うわわ!!私のサイコロが!!」

灼「あれ?何も無い……」

18 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:27:40.21 ID:Wzi8AXdL0

誠子「うぅ、私のサイコロが……」シクシク

灼「ごめ…あとで弁償する…」

フナQ「しゃーないから元のサイコロでやりましょ」

誠子(よし!上手くいったな……)

誠子(さっき壊されたのはあらかじめ用意してた別のサイコロ、保温機や釣り糸で細工をして怪しく見せただけだ)

誠子(そして今フナQが手に持ってるのこそ私の用意した哩賽!)

フナQ「ほれ、誠子これやで」

19 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:29:23.52 ID:Wzi8AXdL0

誠子「ああ、ありがとう」

怜「ほな、改めて始めるで!」こほっ

こうして誠子の策が上手く行き、元のサイコロと哩賽をすり替えることができました。

誠子「よし!この丼でサイコロをまわして……」

誠子「えい!さぁ!張ってくれ!」

灼「私は6と3に…」

フナQ「じゃあ5に張るで」

怜「うちは4と2や」こほっ
20 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:33:50.49 ID:Wzi8AXdL0

誠子「なんだ?1は誰も張らないのか?」

フナQ「1はさっきから一回もでてへんのよ」

誠子「これは助かるなぁ……」

灼「なに?助かるって?」

誠子「い、いやあこっちの話……よし!一だぞ!」

そう言って誠子が丼からサイコロを出すと、見事に1の目が出てきました。

フナQ「うわわ、本日初の1の目が出たわ」

誠子「いや~儲かっちゃったな~」

21 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:35:23.51 ID:Wzi8AXdL0

灼「くっ……煩わし…」

フナQ「あかんな……」

怜「取られてもうたわ」こほっ

誠子「はは、勝負は時の運、こういう時もあるんだなぁ」

フナQ「ええから次や!」

誠子「さて!勝負!」どん!

フナQ「くっ今度は取り返すで!1と3や」

22 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:39:42.95 ID:Wzi8AXdL0

灼「よし私も1と4に」

怜「うちは5と6にしとこか…」こほっ

誠子「今度は2か……よし2だ!2!」

サイコロ「………」ころっ

誠子「お!2だ!いや~まいったなぁ」

灼「くやし……」わなわな

怜「………」こほっこほっ

フナQ「じっ……」

23 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:41:41.23 ID:Wzi8AXdL0

誠子「よし、続けて行くぞ!」

灼「くっ………2と3!」

フナQ「今度こそ…4と6!」

怜「3と1や………」こほっ

誠子「5は誰も張らないのか?よし次は……」

灼「ちょっと待った!」

誠子「ど、どうしたんだ?」

24 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:43:16.86 ID:Wzi8AXdL0

灼「さっきから、誠子が言った目ばかり出て面白くな…」

灼「その1とか2とか、言うのやめて…」

誠子「そ、そんなぁ言わないと調子が……」

灼「ぎろっ」

誠子「わ、わかったよ、数字を言わなきゃいいんだろ?」

誠子「そ、そうだ!天神様だ!天神様頼むよ!」

サイコロ「………」ころっ

25 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:44:22.25 ID:Wzi8AXdL0

灼「な……!5が出た……」

誠子「へへ、悪いねぇ~」

哩賽(言われた通りこっそり忍ばせておいたサイコロと入れ替わったばい)

誠子(上手くいったぞ哩、フナQ)

誠子(2回も続けて叫んだ通りの目を出せばさすがに怪しまれる……)

フナQ(やから、私は誠子と事前に取り分半分の約束でイカサマの打ち合わせをしてたんや)

26 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:45:24.21 ID:Wzi8AXdL0

フナQ(3回目でフナQ特性シゴロ賽と入れ替える…!)

誠子(そう…この4と5と6の目しか出ないシゴロ賽と哩賽を組み合わせて…!)

フナQ(怜と灼から根金際しゃぶりつくしたるで…!)

誠子(さ、またシゴロ賽と哩賽を入れ替えて……)

誠子「よし!最後のひと勝負だ!」

灼「くそっ!次は4と5!」

フナQ「そんじゃあ1にでもかけるか」

27 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:46:46.42 ID:Wzi8AXdL0

怜「わたしはここで大勝負にでるわ」どん!

フナQ「お!そんなにええんか?悪いなぁ」

怜「?なにが悪いんや?」

フナQ「い、いやぁ別に……」あせあせ

怜「よし……6や6に有り金全部賭けるで!」こほっこほっ

誠子「よし!勝負!」こん!

そういうと誠子はサイコロの入った丼を小突いて合図を出しました。

28 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:53:10.35 ID:Wzi8AXdL0

哩賽(お!合図か1やな……)

哩賽「!?」ビビクン!

哩賽「な、なんや…突然体に衝撃が走って…//」びくっ…

誠子「それ!」

なんと誠子が丼を取ればそこには妙に色っぽくなったサイコロが6の目を出して果てていました。

フナQ「あわわ!」

誠子「そんな…!こんな理不尽が…!」わなわな

怜「やったわぁ、最後の最後で大勝ちやで」

29 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:54:51.16 ID:Wzi8AXdL0

灼「くっ…煩わし…!煩わし…!」ぶるぶる

誠子「くう、最後の最後で儲けた分全部取られた!」

フナQ「ウチの有り金が……」

こうして博打で大負けしたフナQと誠子、灼はとぼとぼと帰って行きました。

丼「………」

怜「もうええで!」

30 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:56:47.59 ID:Wzi8AXdL0

丼?「ふぅ~疲れたばい」

姫子「いやあ、助けてもらったお礼ができてよかったと」ぽん!

怜「まさか、あの時助けた狸の姫子が恩返しにきてくれるなんてなぁ」

姫子「私がサイコロを回す丼に化ける」

姫子「そして怜が一回咳をしたらなにもせん、2回で6の目を出るようサイコロに細工する……」

怜「せや、ここぞという時に6に大金賭けたら儲かるって寸法や」

姫子「ほんまうまくいったばい」

怜「あぁ、『狸を使ったイカサマ』なんて誰も思いつへんやろうしな」

カン!

31 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 21:58:36.39 ID:PGPad4uJo

なんという騙し合い

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする