【セーラ・憧SS】穏乃「私達はずっと友達だよね」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:08:26.40 ID:v1QMkGYG0

憧の携帯電話が唸る。

ブーブーブー

なんだか嫌な気持ちになった。

休憩の時に携帯を見る憧が嫌だ。

憧「まったく……暇なのかっつーの」

文句を言ってはいるけれど、嬉しそうで嫌だ。

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:14:12.77 ID:v1QMkGYG0

部活が終わる。

憧は誰かに電話を掛ける。

憧「はぁ……あんた毎日飽きないわね」

憧「ば、馬鹿、違うわよ」

憧「ま、まぁ嬉しくはあるけれど……」

憧「ツンデレ!?違うわよ、もう!」

あぁ、もう……
どうして嫌なのに目が離せないんだろう

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:15:52.31 ID:v1QMkGYG0

穏乃「憧」

憧「あ、シズ」

こんな風に裾を引けば、憧は……

憧「ごめん、そろそろ切るわ」

憧「うんうん……また電話する」

憧「ばいばい」

穏乃「……」

憧「ごめんシズ、帰ろっか」

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:18:08.01 ID:v1QMkGYG0
電話を切らせたのは帰りたかったからではないけど、だけど憧達の話を聞きたかったわけでもないんだけど。

憧「それでね、あいつときたらさー」

穏乃「それ、こないだも聞いたよー」

憧「あれ?そうだっけ?」

穏乃「そうだよ」

憧「だけど、本当馬鹿でしょあいつ」

穏乃「結構会ってるんだね」

憧「そうでもないよ」

穏乃「月に2回くらいは会うでしょ?」

憧「う、うん、まぁ……」

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:21:19.90 ID:v1QMkGYG0

穏乃「明日も会うの?」

憧「え?」

穏乃「先々週会ったって言ってたし」

憧「そっか……シズには何でも話せちゃうからな」

穏乃「……」チクリ

憧「先々週はあいつが来てくれたから、明日はあたしが行くんだ」

穏乃「泊まりで?」

憧「その予定」

穏乃「そっか」

憧「ん?」

穏乃「憧、嬉しそうだなって」

憧「え……まぁ、嬉しくないわけではないけど……」

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:23:30.42 ID:v1QMkGYG0

穏乃「……」

憧「シズ……?」

穏乃「じゃあ、また明日部活でね」

憧「う、うん」

穏乃「明日は部活終わったら行くんでしょ?」

憧「うん」

穏乃「たまにはお土産買ってきてね、ばいばい」

憧「はいはい、じゃあまた明日」
何でも話せちゃうなんて憧は言う。
嬉しいけど、嬉しくないな。

……私、わがままだな。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:26:11.59 ID:v1QMkGYG0

憧「じゃあね」

次の日、部活が終わってから憧は大阪に向かった。
部室を急いで出ていく憧が嫌だと思った。

穏乃「はぁ……」

最近の私はよくわからない。
憧を見ていると嫌な気持ちになるし、嫌な気持ちになるのに目を離せない。

穏乃(こんなこと今までなかったんだけどな)

玄「穏乃ちゃん?」

穏乃「玄さん」

玄「今日は穏乃ちゃんの当番の日だけど手伝うね」

穏乃「え、そんな、悪いですよ」

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:29:08.57 ID:v1QMkGYG0

玄「お姉ちゃんは補習に出てるし」

玄「灼ちゃんは赤土先生と今度の練習試合のことでお話があるみたいだし」

玄「一人で帰っても寂しいから」

穏乃「……」

玄「一緒にやれば早く終わるし……ね?」

穏乃「ありがとうございます」

穏乃「……」サッサッサッ

玄「……」フキフキ

穏乃(今頃憧は電車に揺られながら嬉しそうにメールを打ってるのかな)サッサッサッ

穏乃(……何考えてるんだろ、私)

玄「……ねぇ穏乃ちゃん」フキフキ

穏乃「はい?」サッサッサッ

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:31:56.34 ID:v1QMkGYG0

玄「何かあった?」フキフキ

穏乃「え……?」ピクッ

玄「なんだか元気ないみたいだから」フキフキ

穏乃「……そんなことないですよ」サッサッサッ

玄「……憧ちゃんのこと?」フキフキ

穏乃「……!」

玄「幼馴染だからね……なんとなく、わかるよ」フキフキ

穏乃「……はぁ……玄さんには隠し事できないですね」

玄「穏乃ちゃん自体隠し事するのは苦手でしょ?」フキフキ

穏乃「そんなこと……」

玄「だって下手だもん」

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:32:37.19 ID:UPEqpRtc0

これは綺麗なくろちゃん

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:33:03.23 ID:v1QMkGYG0

穏乃「……でも、よくわからないんです」

玄「わからないって?」

穏乃「どんな中学時代を過ごしているかとか、どんな友達がいるかとか……」

穏乃「あまり気にしたことはなかったんですけど」

気にしたことなんてなかった。
寂しいとは思うけど、人間関係なんてそんなものだと思うし。

穏乃「最近の憧の様子は……なんか……」

穏乃「気になっちゃうし、なんだか嫌な気持ちになるし……」

何かに執着することなんて、なかったし。

穏乃「憧と話をするのは好きだけど、憧があの人の話をするのはなんか嫌」

穏乃「……私、おかしいですよね」

穏乃「……憧に恋人が出来たのに素直に祝福できないなんて」

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:35:01.80 ID:v1QMkGYG0

小学校を卒業する時、憧と別れた。
中学生時代、和と別れた。

悲しくはあったけど、私はそれを止められないし、仕方ないし。
玄「……穏乃ちゃんにとって憧ちゃんは大切な存在なんだね」

玄「私もお姉ちゃんに恋人が出来たら、お姉ちゃんをとられたみたいで嫌かも」

穏乃「素直に祝福できないですか?」

玄「うん……私お姉ちゃんにべったりだから、お姉ちゃんを困らせちゃうかな」

穏乃「玄さんもですか」

穏乃「……でも、私と憧は姉妹じゃないですし……」

玄「大切なのは変わらないでしょ?」

穏乃「そうですけど……」

穏乃(でも、違うような気がする……)

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:37:26.66 ID:FbqVn1SkO

大阪ということはセーラか

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:38:06.00 ID:v1QMkGYG0

玄「穏乃ちゃん」

穏乃「は、はい?」

玄「片付けも終わったし、帰ろう?」

穏乃「あ、そ、そうですね」キョロキョロ

穏乃「あれ……もしかしてほとんどやってくれちゃいました?」

玄「ふふ、穏乃ちゃんってば一つのことを考えると他が出来ないよね」

穏乃「ごめんなさい!」

玄「大丈夫だよ。それに私片付け好きだし」

玄「ほら、帰ろう?」

穏乃「……変じゃないんですか?私の気持ち」

玄「変じゃないよ」

穏乃「だけど、素直によかったなって思えないのは友達としてどうなんでしょう……」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:40:31.53 ID:v1QMkGYG0

玄「穏乃ちゃんは憧ちゃんのこと好き?」

穏乃「もちろん」

玄「私のことは?」

穏乃「もちろん好きです」

玄「……じゃあもし私に恋人が出来たら?」

穏乃「そりゃあめでたいですよね!ラーメンとかおごりますよ」

玄「……」

穏乃「……あれ?」

玄「……ほんと、穏乃ちゃんは素直だね」

穏乃「え?あれ?」

玄「……ラーメンでも食べようか?」

穏乃「え?」

玄「食べたい気分なんだ」

穏乃「は、はぁ……」

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:42:18.19 ID:v1QMkGYG0

穏乃「……やっぱり私どこかおかしいんじゃないですか」

玄「ううん、そんなことないよ」

穏乃「でも……」

玄「穏乃ちゃん、ラーメン伸びちゃうよ?」

穏乃「……」ズズズ

玄「ねぇ、穏乃ちゃん?」

穏乃「なんですか?」

玄「穏乃ちゃんって和ちゃんのことが好きだったよね」

穏乃「え?」

玄「和ちゃんと遊ぶために戻ってきてくれたわけだし」

穏乃「……うーん……好きは好きですけど」

玄「けど……?」

穏乃「ちゃんと考えたこと、ないんです」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:44:56.22 ID:v1QMkGYG0

玄「穏乃ちゃんって、中学1年生の時どう過ごしてたの?」

穏乃「え?」

穏乃(何の話してるんだろ……?)

玄「同じ学校にいたのに全然会わなかったから」

穏乃「……どう過ごしてたかな」

玄「憧ちゃんは阿太中に行っちゃったけど、和ちゃんは一緒だったよね?」

穏乃「……」

玄「穏乃ちゃん?」

穏乃「……憧とは遊ばなくなっちゃって……」

穏乃「和とはクラスが違っちゃってあまり……」

玄「……私は?」

穏乃「……」

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:46:35.92 ID:v1QMkGYG0

玄「私はね、和ちゃんと一緒に二人に会いに行ったことがあるんだよ」

穏乃「え?」

玄「憧ちゃんはあっちの中学で楽しそうにやってたから話しかけられなかったな」

玄「穏乃ちゃんはね、山に行ってたみたくて会えなかった」

穏乃「え……知らなかった……」

玄「私ね、穏乃ちゃんはずっと和ちゃんのことが好きなんだと思ってた」

穏乃「え……いや、好きですよ、和のこと」

玄「うん」

穏乃「んん???」

玄「……おいしかったね」

穏乃「え……あ、はい」

玄「ごちそうさまでした」

穏乃「……ごちそうさまでした」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:48:15.34 ID:v1QMkGYG0

帰り道、玄さんはさっきまでの話題に一度も触れずに別れた。
穏乃(結局、何が言いたいんだろう?)

穏乃(憧のことも和のことも玄さんのことも……好きだよね)

穏乃(和のことが好きだと思ってた……ってどういう意味なんだろ)

穏乃(……中学時代……か)

新しい友達って和には言ったけど、憧や和程の友達がいたわけじゃない。
友達と一緒にいても、なんだか寂しくて、山に登ってみたりなんだり。

思えば……憧とは同じ町に住んでいるのに。和や玄さんとは同じ学校にいたのに。
私は見送るだけで、覚悟とかどうとか、仕方ないとか……いろいろ言い訳して、繋がりを保つ努力をしてなかった。

和が転校してから何度か手紙が届いた。
返事を書こう書こうと思いながら、書かないでいたら、和からの手紙も来なくなった。
和が保とうとしてくれた繋がりを自分で断ち切ったんだ。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:50:23.08 ID:v1QMkGYG0

穏乃「……そういえばなんであの日、憧に電話したんだろ」

穏乃「やっぱり興奮したっていうのが大きいかな」
自分でもわけが分からないくらい感情が込み上げてきて、思わず憧に電話してた。

憧は冷静に私の話に答えて、私はつい電話を切った。

なんでだろ?
憧が冷静に現実をつきつけたからかな?
憧が敵に回ると言ったからかな?
穏乃「わかんないけどやっぱり憧の存在って私の中で大きいんだろうな」

穏乃「中学に入ってからほとんど連絡もとってなかったのに、無意識に電話してたくらいだし」

穏乃「色々言い訳したけど……」

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:53:07.45 ID:v1QMkGYG0

結局、寂しかったんだと思う。
憧がいないというのが。

和は友達だし、好きなんだけど……やっぱり憧じゃないから。
和といると、憧の不在を感じずにはいられなかった。
だから、あまり接しないようにしてた。

麻雀教室をやってたあの部屋には近づかなくなった。
行くと、憧との思い出が浮かんで寂しいから。

穏乃「玄さんには悪いけど、ちょっと自暴自棄なところがあったんだろうな」

穏乃「憧に否定されてカッとなっちゃったんだ」
玄『……じゃあもし私に恋人が出来たら?』

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:55:34.00 ID:v1QMkGYG0

やきもち。嫉妬。

玄さんや和、他の人にはそういうのはないのに。
わかんないわかんないわかんない。こんな感情。今までなかった。

あぁでも……もしかしたらたぶん……そっか……これが……。
恋なんだ……。

* * *
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:57:45.50 ID:v1QMkGYG0

タイミングってゆうんは本当に大切なんやと思う。

結局、気付いてた癖に、気付かないふりしとったら、もうあの頃には戻れなくなったってだけ。

セーラ「おっさきー」

竜華「今日部活には出えへんの?」

セーラ「約束あんねん」

怜「あぁ例の子やな」

竜華「例の子?」

怜「ほんと竜華は鈍いな」

セーラ「そんなとこがええんやろ?」

怜「まぁ……そうやけど」

竜華「なんやねんもう!さっきから」

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:59:14.49 ID:v1QMkGYG0

セーラ「俺のことはええから勉強せなな?」

怜「麻雀特待で進学する余裕やな。ほんと羨ましいわ」

竜華「なぁなぁ、結局例の子ってなんなん??」

怜「そろそろ行かないと遅刻すんで」

セーラ「そうやな!ほな」

竜華「無視せんといてー」
中学3年生の時は違った。

俺が特待貰ってどっか行きたいって言うたら、一般でそこ受けるなんて……な。

もう今更戻られへん。

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/11(月) 23:59:56.61 ID:v1QMkGYG0

セーラ「よ!」

憧「相変わらずね、あんたは……」

セーラ「お前も相変わらずで何より何より」

憧「はいはい」

セーラ「とりあえず荷物置き行くか?」

憧「そうね」

意外……といっちゃ憧に悪いんやけど、やっぱり意外やな。
手を繋ぐのだって慣れてない。ほら、今も顔を赤くしとる。

憧「……セーラって、なんか慣れてるよね?」

セーラ「慣れてるって……こんくらいのスキンシップは普通やろ」

憧「あたし以外にもこうやって手を繋いだりするわけ?」

セーラ「そら手は繋ぐけど……」

セーラ「こういう繋ぎ方すんのは憧だけやで」

憧「…………ふんっ」

そして意外と嫉妬深い。それがまた可愛く思えるから困る。

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:02:38.23 ID:069O31Wp0

憧「あ、そうだ」

セーラ「ん?」

憧「友達にお土産頼まれてたんだった」

セーラ「なら先に買うとくか」

憧「案内してもらえる?」

セーラ「おう」

セーラ「麻雀部にか?」

憧「うーん……部にではないけど麻雀部の子」

セーラ「大将の子?」

憧「そうそう」

セーラ「仲良いんやな」

憧「まぁ……」

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:06:07.20 ID:v1QMkGYG0

セーラ「なんや煮え切らん言い方やな」

セーラ「分かった!」

憧「へ?」

セーラ「そいつのことが好きなんやろ」

冗談のつもりやったのに……そんな顔するから焦るやん。

憧「……そ、そういうんじゃ……」

セーラ「分かりやすいな憧は」

憧「……セーラには隠し事できないわね」

セーラ「それじゃ……」

憧「でも今は違うわよ」

セーラ「ふーん?」

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:10:10.95 ID:069O31Wp0

自分で言うのもアレやけど、俺はめっちゃ憧のこと好きやし、憧も俺のこと好きやと思う。

憧「……はぁ」

憧「シズは……初恋の人なの」

セーラ「……初恋か」

憧「……それだけ!今は、もう……違うし」

セーラ「今は何?」

憧「……言わせたいわけ?」

セーラ「いや言ってくれんと俺あほやからわからんし」

憧「……今は……その……セーラが好き」

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:14:29.50 ID:069O31Wp0

俺と憧の出会いは全国大会で。最初はその打ち筋を気に入ってて。
なんやかんやで連絡先を交換して。

ネット麻雀で打ったり、チャットしたり、メールしたり、電話したり……。

たぶん波長が合うんやと思う。
一緒にいると楽しいし、だんだんもっと一緒にいたいなんて思うようになって。

あぁ好きなんやな……好きなんや。

今度は逃さへん。間違えへん。

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:16:05.68 ID:KG23sWel0

クロチャー敗北不可避…

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:20:04.12 ID:069O31Wp0

セーラ『俺、憧のことが好きやねん』

憧『は?』

セーラ『憧は俺のことどう思ってる?』

憧『どうって……』

セーラ『別に今答えんくてもええよ』

憧『だけど……』

セーラ『大丈夫大丈夫!どんな結果になっても付き合い方変えへんし』

憧『でも、それって……』

セーラ『同情とかはなしやで』
正直言ってちょっとズルイやり方したと思う。
けど……今の憧の顔見てると間違いやないって思えるからええねん。

間違ってもええとも思ったけど。

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:23:46.12 ID:069O31Wp0

憧「あぁーもうっ!!そんな勝ち誇った顔するなー!」

セーラ「勝ち誇ってへん。嬉しいだけやって」

憧「……むぅ……」

憧「あんたばっかずるい!セーラの初恋の話を聞かせてよ」

セーラ「俺?俺の初恋か……」

セーラ「……それはもちろん、憧やんな」

憧「なっ!?」

セーラ「話してもええけど、大半が憧の話やな」

憧「……う、うそ……」

セーラ「さぁどうやろな」

憧「またはぐらかしたな」

セーラ「おー怖」

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:25:07.61 ID:HmYdsy6hO

信じて千里山に送り出した憧が・・・

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:26:08.38 ID:069O31Wp0

憧「教えなさいよ」

セーラ「そんな聞きたいもんか?」

憧「……話の流れで」

セーラ「そうやろな、おっ着いたでー」

憧「……う、うん」

初恋が憧ゆうんは嘘で本当……なんて言うたら憧は怒るんやろな。
だけど、それが正しい気がすんねん。

セーラ「……そんなに気になるん?」

憧「へ?」

セーラ「ぼけっとしとるから」

憧「言いたくないっていうのは……なんか吹っ切れてないのかななんて疑ってみたり」

セーラ「そんなわけないやん」

62 :>>55訂正 素で間違えてた 2013/03/12(火) 00:35:13.80 ID:069O31Wp0

憧「じゃあ……」

セーラ「憧はどう吹っ切ったん?」

憧「え……聞きたいの?」

セーラ「聞かせてくれたら話したるわ」

憧「……」

憧「……約束だからね」

セーラ「おう」

セーラ(別にこんなもったいつける程の話ではなかってんけど)

憧「初恋……シズへの気持ちに気付いたのは小6の頃かな」

セーラ「えらいませてんな」

憧「そう?普通じゃない?」

セーラ「最近のガキは早いんやな」

憧「2コしか変わらないじゃない」

セーラ「2コでこんなに変わるんやな」

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:32:22.26 ID:069O31Wp0

憧「はぁ……ませてたっていうか……」

憧「転校生が来て、シズがとられそうって不安になったのがきっかけだったかな」

セーラ「転校生?原村和?」

憧「あれ?なんで知ってるの?……あぁ雑誌に書いてあったもんね」

憧「で、和の気持ちはシズに向いてると思ったし、シズも和を気にしてたし」

憧「そんな風に過ごしていくのが嫌になっちゃって……あたしは逃げたの」

セーラ「逃げたって?」

憧「進路をね、変えたの」

セーラ「進路……」

憧「そう、あたしだけ別の中学に進学した」

憧「何ていうか、一緒にいるのが辛くなっちゃって……」

セーラ「でもお前、今は同じ学校やん」

憧「中3の夏に電話がかかってきたの、突然」

憧「そのきっかけも和だったんだけど」

セーラ「中3夏、原村和……インターミドル?」

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:33:06.22 ID:QH39vNaA0

セラ憧とかいうガチノンケ

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:37:06.79 ID:069O31Wp0

憧「そう。その中継を見ていたシズが興奮気味に電話してきた」

憧「シズは高校で全国の舞台に立ちたいって言って、あたしは阿知賀じゃ無理って言った」

セーラ「ちょ、直球やな」

憧「あたしは晩成に行こうって思ってたから、敵に回るとも言ったかな」

セーラ「ほぉーん」

憧「そしたら電話切られた」

セーラ「電話切る気持ちも分からなくはないけどな」

憧「……全国に行きたいっていう気持ちは強くあたしの中にあって」

憧「たぶん……麻雀くらいは和に勝ちたかったのかもしれない」

セーラ「それが何で阿知賀へ?」

憧「自分でも分かんない……自分で言ったくせにシズの敵になりたくなかったのかもしれない」

憧「久しぶりの電話で懐かしさとか気持ちが溢れてきたのかもしれない」

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:41:29.17 ID:069O31Wp0

セーラ「中学ん時もずっと好きやったんか?」

憧「諦めようと思ってたし考えないようにはしてたけど、たぶん……」

憧「でも、また一緒に過ごすようになってわかったんだ」

憧「シズはあたしのことそういう風には見てないって」

憧「麻雀でも和に勝てなかったしね」

セーラ「直接あたったわけやないやん」

憧「あたしあそこまで強くないもん」

セーラ「でも……」

憧「ま、とにかく……離れてた期間があったからか、あたしが大人になったのか……」

憧「わかんないけど、そういうのを受け止められるようになってて……」

憧「……そこにあんたも現れて……」

セーラ「……タイミングやな」

憧「気付いたら、シズのことは大好きな友達って思えるようになったの」

憧「セーラのおかげ……それだけ!おしまい!」

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:44:18.18 ID:069O31Wp0

憧「さぁあんたの番よ!」

セーラ「そやな、憧がここまで話してくれたんやから俺も話さなな」

セーラ「俺の場合はな、憧ほど一途なもんとちゃうねん」

憧「?」

セーラ「ずーっと相手の子が俺んこと好きでいてくれたのに、俺はずーっと気付かんふりしてたんや」

憧「それが……セーラの初恋?」

セーラ「そう、逃げ続けた挙句気付いた瞬間終わった初恋」

憧「どんな人なの?」

セーラ「……病弱な癖に頑張り屋で一途で……」

憧「それってもしかして……」

セーラ「そう、園城寺怜や」

憧「そう、なんだ……」

セーラ「俺がすんのも中学ん時の話で今やない」

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:46:52.93 ID:069O31Wp0

セーラ「俺と怜と竜華は中学ん頃からの仲や」

怜な、俺がインターミドルで活躍して特待貰う話したら、うちも一般で受けて同じとこ行くわなんて言うてな。
そしたら竜華もならうちも行くわなんて言うんや。

怜が俺のことを好きやってことは気付いてた。
竜華が怜のことを好きやってことも気付いてた。

竜華は怜が俺のこと好きやって気付いとったみたいやけど、怜は竜華の気持ちには気付いてへんかった。

せやから、俺が気付かんふりしとったら、このままの関係が続くんやろうなって思ってた。
まぁ、そんな上手くいくわけなかってんな。

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:49:41.65 ID:069O31Wp0

高校に進学してから、俺と竜華は1軍で、怜と離れてしもたんや。
俺はレギュラー獲ろう思て必死で、怜のこと気にしてへんつもりやなかってんけど、竜華は1軍で頑張りながらもずっと怜のこと支えてたんや。

なんやろうな。あの頃の俺は、結局、怜が俺のこと好きやっていう気持ちに甘えてたんかもしれんわ。
俺がいつまでも気付かんふりしとったし、竜華はずっとそばにおったし、そりゃいつまでも永遠に俺のこと好きでいるわけもないねんな。

竜華と怜がいい感じになってきて、初めて俺は焦った。びびった。

今思えばいろんなとこから特待の話あったのに、結局千里山を選んだのは、怜のことを考えてやったんや。
やっぱあいつ病弱やろ?せやから今とあまり変わらん方が体の負担も軽いはずやし、内部進学やからそう簡単に落ちへんはずやし。
気付かないふりしとったけど、俺、なんだかんだでずっと怜のこと好きやったんやな、って。
セーラ「とまぁ……そんな感じやな」

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:52:30.01 ID:069O31Wp0

セーラ「そんな気持ちに気付いた時は葛藤もしたけど」

セーラ「今はもうそういうんはあらへん」

セーラ「竜華も怜も大切な友達やし」

憧「……そんなことがあったんだ」

セーラ「おう、でもまぁ……今思えば恋と呼べるかは微妙なもんやけどな」

憧「そう?」

セーラ「おう、憧の時とは全然違うし」

憧「は?」

セーラ「憧への気持ちの方が大きいっつうことや!」

憧「ほんと、あんたはそうやってあたしをからかう!」

セーラ「照れた顔も可愛くて好きやで」

憧「もう!ちょっと黙って!」

セーラ「憧、耳まで赤いわ」

憧「もう、見んなー!」

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:57:03.65 ID:069O31Wp0

好きやねん、憧のこと。

俺の初恋は本当幼くて、恋と言えるもんと違うかもしれない……。
竜華と怜を見てるとたまにあの頃を思い出す時もあるんやけど、今はもう受け止められるんやで?

好きやねん、憧のこと。
これは本当に恋で、恥ずかしいけど憧への気持ちは愛やろって思うんや。
* * *

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:59:11.31 ID:069O31Wp0

初恋は実らないらしい。

私もその例に漏れず……、恋だって気付いた時にはもう憧には恋人がいる。

憧「おはよーシズ」

穏乃「おはよー、憧」

憧「あ、そだそだお土産買ってきたよ」

穏乃「本当に買ってきてくれたんだ」

憧「でもみんなの分はないから内緒ね」

穏乃「あーうん」

憧「何かシズ元気なくない?」

穏乃「え?そんなことないよ」

憧「そうかなぁ……」

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 00:59:44.61 ID:069O31Wp0

みんなには内緒。二人だけの秘密。
私が元気ないことを気付いてくれる憧。

だけど、それは友達だからであって……。

穏乃「あ、憧」

憧「んー?」

頭では分かっているのに。

まるで中3の和の活躍を見た時みたいに……感情が込み上げてきて。

穏乃「憧が好き」
暴走した。

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:03:55.71 ID:069O31Wp0

憧「あたしもシズのこと好きだよ」

穏乃「そうじゃなくて……」

憧「シズ……?」

穏乃「好き……好きなんだよ、憧」

憧は動揺してた。

あの時勢いで電話を切ったように、私は……

穏乃「……もういいよ!!」

逃げた。走った。

憧「……今更遅いよ、ばか」
憧の声がしたような気がした。

* * *

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:06:16.90 ID:069O31Wp0

なんとなくわかるよ。
穏乃ちゃんと憧ちゃんの間で何かあったんだってことくらい。

玄「憧ちゃんまだ帰ってなかったの?」

憧「あ、玄……なんで?」

玄「私はお姉ちゃんの補習待ち」

憧「そっか」

玄「穏乃ちゃんが休みなんて珍しいよね」

憧「……」

玄「明日は雨が降ったりして」

憧「……」

玄「憧ちゃん……?」

憧「玄……あの、あたし……」

玄「……何かあったの?」

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:06:51.44 ID:fIiIH7dc0

すれ違ってるなぁ

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:11:49.61 ID:069O31Wp0

憧「……今朝、シズに告られた……」

玄「そっか……」

穏乃ちゃんはまっすぐな人だからね。
自分の気持ちに気付いたらそれに向かって突進するような人だもんね。

憧「……あたし、どうしていいかわかんなくて……シズは、どこか行っちゃった」

玄「それで今日休みだったんだ」

憧「心配だし連絡しようと思ったんだけど、何ていえばいいかわかんなくて」

玄「……ちょっと電話してみるね」

憧「うん」

玄「……電源切れてるみたい」

憧「大丈夫かな、シズ……」

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:17:13.05 ID:069O31Wp0

憧「あたし……どうすればいいんだろ」

憧「シズと友達でいられなくなるなんて嫌だよ」

玄「でも、憧ちゃんには恋人がいるでしょ」

憧「うん……あたしはシズの恋人にはなれない」

玄「……憧ちゃんは穏乃ちゃんのことを今でも好きなの?」

憧「どうして知って……?」

玄「幼馴染だからね」

穏乃ちゃんにもそう言ったっけ……。
きっと幼馴染っていうのも気付く1つの要素だとは思うけど。

憧「……わかんない」

憧「友達として大好きっていうのはあるけど、そういう意味で好きかって言われると……」

憧「だって今更……そんなこと言われたって……」

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:22:30.84 ID:069O31Wp0

玄「大丈夫だから……憧ちゃん、泣かないで」

憧「泣いてなんか……」

憧「うぅ……だってだって……このままじゃシズがいなくなっちゃ……」

玄「穏乃ちゃんはいなくならないよ」

玄「穏乃ちゃんは強い人だから」

玄「優しい人だから」
だから、私は穏乃ちゃんのことが好きなわけだし。

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:23:51.78 ID:+UsY0yGO0

なんか玄が怖い

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:25:25.24 ID:069O31Wp0

憧「玄……」

憧ちゃんはもう穏乃ちゃんのことは友達っていうけど、本当は違うでしょう?
夢を見たりしたでしょう?

もし穏乃ちゃんに告白されたらって……。

私はね、そんなにいい人じゃないんだよ。

憧ちゃんの恋人には悪いけど、穏乃ちゃんの気持ちが叶えばいいなってちょっと期待してる。
穏乃ちゃんの気持ちはまっすぐでまっすぐでまっすぐだから。

私には向かないって知っているから。
付き合うとかはもう諦めているから。

だからせめて穏乃ちゃんの幸せをそばで見られればいいなって。

玄「……自分の気持ちに誠実にね、憧ちゃん」
* * *

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:27:39.68 ID:fIiIH7dc0

これはしっかり者の玄ちゃん

94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:29:31.25 ID:069O31Wp0

今更遅いよ。

だってもうあたしは諦めたし、もう恋人がいるし。

prrr…

憧「もしもし」

セーラ「おう、憧か」

憧「セーラ……」

セーラ「……何かあったんか?」

憧「……」

セーラ「もしかしてこないだ言ってた初恋の人のことか?」

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:33:28.67 ID:069O31Wp0

野生の勘。無駄体力。
あぁ、セーラはなんでこういうの気付いちゃうのかな。

憧「あたしもよくわからないんだけど、今朝シズに告白された」

セーラ「……」

憧「あたしどうしていいか分からなくて……」

セーラ「……なぁ――――」

望「憧ー」

憧「ごめん、ちょっと待ってて」

セーラ「おう」

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:37:09.03 ID:069O31Wp0

憧「どうしよう……どうしようセーラ」

セーラ「落ち着けって」

憧「あたしのせいだあたしのせいだ……」

セーラ「……何があったんや」

憧「シズがあれから家に帰ってないみたくて……」

セーラ「言うてもまだ6時やろ」

憧「学校さぼっていなくなるなんて初めてだって……」

セーラ「今からそっち行ったるから」

憧「え?」

セーラ「俺が今からそっちへ行く」

憧「あんた今何時だと……」

セーラ「もう電車には乗ったし2時間くらいでつくから大人しくしてるんやで」

98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:41:02.37 ID:069O31Wp0

諦め切れた……そう思っていた。中学の頃も、今も。
だけど、こんなずっとずっと願って止まなかった出来事が起こると、あたしの心のどこかで何かが疼いて。

でも、でも……今更遅い。

だってあたしには恋人がいる。

こんな時に駆け付けてくれて、優しくあたしを包み込んでくれる、大きな存在が。

ね、シズ。ごめんね。

あたしは、セーラが好きなんだ。
憧「……シズ」
でもね、シズはあたしにとって大切な存在っていうのは変わらないんだよ。

これはね、友達として心配してるんだよ、シズ。……ごめんね、シズ。

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:43:20.28 ID:069O31Wp0

憧「山だ……シズのことだからきっと山にいるんだ」
TO:セーラ

シズはたぶん山にいるはず。
あたし探しに行くね。

大切な友達だから。
憧「シズ……シズ……」タタタッ

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:46:08.33 ID:069O31Wp0

prrr

憧「はぁはぁ……セーラ?」

セーラ「おまえ、突然山って……もう暗なる時間やんか」

憧「大丈夫だって。昔はよく遅くまで遊んだし」

セーラ「……もしかしてもう山にいんの?」

憧「ピンポーン」

セーラ「はぁ……待っとれ言うたやん」

憧「だって大切な友達だもの……待ってるだけなんてできないよ」

憧「何て声を掛ければいいかとかわかんないけど」

憧「心配だから……だから……」

セーラ「なぁ、憧」

憧「ん、なぁに?セーラ」

105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:50:05.25 ID:069O31Wp0

セーラ「……俺に遠慮せんでいいんやで」

憧「は?あんた何言ってんの?」

セーラ「俺ずっとズルしてたやろ」

セーラ「告白した時やってズルイ言い方したし」

セーラ「憧がな、俺にそいつを重ねてたちゅうんは気付いとった」

憧「え……?」

セーラ「俺はそれでもいい思ってたんや」

セーラ「せやから……な」

ツー ツー ツー

憧「セーラ?セーラ!?」

憧「って圏外……」

セーラにシズを重ねてた……その指摘はたぶん間違いじゃない。
106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:52:53.56 ID:069O31Wp0

穏乃「……憧……」

憧「あっ、シズ……」

穏乃「……っ」ダッ

憧「待って!」ダッ

憧(中学の頃はあまり外で遊ばなくなってたからかな)ハァハァ

憧(ヤバい、シズが行っちゃう……)ズルッ

憧「あっ」ズターン

憧「いったー……」

憧「何してんのよあたし、情けな……」

穏乃「……憧」スッ

憧「シズ、ありがと」

110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:55:35.25 ID:069O31Wp0

穏乃「……ごめん」

憧「シズの馬鹿!心配掛けて……でも、よかった」

穏乃「あの……」

憧「……あたしは……シズのことが好きだよ」

穏乃「うん……」

憧「だけど……」

穏乃「分かってるよ、憧の言いたいこと」

穏乃「山を走り回って、色々考えてたら、なんとなくわかったんだ」

憧「……」

穏乃「憧を混乱させて、心配させてごめんね」

憧「シズは悪くないよ」

憧「もしかしたら、あたしとシズは逆の立場だったかもしれないし」

112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:58:07.27 ID:069O31Wp0

穏乃「……私は憧を好きだって気付いたことを後悔してないよ」

憧「うん、ごめん……ありがとう」

穏乃「ねぇ憧」

穏乃「ずっと一生友達でいようね」

憧「うん」

穏乃「ありがとう」

憧「ううん、こっちこそありがとう」

穏乃「帰ろうっか」

憧「うん」

穏乃「歩ける?」

憧「大丈夫」

穏乃「おんぶしようっか?」

憧「ううん、なんとなく横に並んで歩きたいから」

穏乃「そっか」

113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 01:59:37.88 ID:069O31Wp0

手を繋ぐこともなく、触れることもなく、ただシズの隣を歩いた。

シズの気持ちを考えると胸が引き裂かれそうになる。
穏乃「私は大丈夫だから」

憧「シズ……」

穏乃「いいよ、憧にとっての1番じゃなくても」

穏乃「私が一緒にいたいからいるんだもん」

もし、昔のあたしが告白してたら、きっとこんなこと言えない。
どうせならあたしのこと嫌いになってよ、とか、距離をとろうとするだろう。

あぁ、シズは強い、強いなぁ。
あたしはそんなシズに甘えちゃうんだね。

116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 02:04:28.90 ID:069O31Wp0

憧「ごめん」

穏乃「謝るのもうやめようよ」

憧「でも……」

穏乃「私は憧みたいに計算が得意じゃないけど、きっと私が告白なんてしなければ、よかったんだもんね」

憧「……」

穏乃「憧は……ずっとそうしてきたんでしょ」

憧「……!」

穏乃「だからね、私が悪いんだよ」

穏乃「後先なにも考えなかったから、憧を無駄に苦しめて」

穏乃「だからごめん、憧」

117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 02:06:55.29 ID:069O31Wp0

山を降りると、セーラがいた。玄がいた。宥姉がいた。灼がいた。晴絵がいた。お姉ちゃんがいた。
玄「穏乃ちゃん、ごめんね」

穏乃「え?なんで謝るんですか玄さん」

玄「だって私が変なこと言っちゃったから」

穏乃「変じゃないです。おかげで大切な気持ちに気付けました」

玄「……よかったね」

穏乃「はい」

120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 02:09:42.61 ID:069O31Wp0

セーラ「見つかったんやな」

憧「うん」

セーラ「って怪我してるやん」

憧「ちょっと転んだだけだけど……家まで歩くのダルいなー」

セーラ「じゃ、車に」

憧「おんぶしれくれないかなー?」チラッ

セーラ「俺?」

憧「おんぶしてほしいなー」

セーラ「何考えてるんや、こいつ」ホレッ

憧「サンキュー」ギュッ
穏乃「あ、憧」

憧「ん?」

穏乃「また明日、学校でね」

憧「うん、また明日」

123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 02:13:16.51 ID:069O31Wp0

セーラ「なぁ――――」

憧「あんたの指摘はさ、正しいよ」

セーラ「……」

憧「確かにあたしはあんたにシズを重ねてた」

セーラ「……なんでお前俺におぶられてんのや?」

セーラ「同情か?」

憧「何言ってんのよ、ばか」

セーラ「は?」

憧「いくら重ねたって別の部分はあるでしょ?」

憧「そういうのに気付いて、シズとは違うって気付いて」

憧「あたしはそういうところに惹かれていったのよ」

セーラ「は……?」

125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 02:19:32.47 ID:069O31Wp0

憧「ちゃんとあたしは江口セーラが好きっていうこと!」ギュッ

セーラ「……」カァー

憧「あ、セーラ、耳まで真っ赤」

セーラ「うっさいわ、あほ」

憧「あんたの背中あったかい」

セーラ「何恥ずかしいこと言ってるんや」

憧「ふふ……」

あたしの中でセーラとシズを重ねてたところから、あんたはどんどん表に出てきて。
だけど、それが嫌じゃなくて。むしろどんどん惹かれていって。

気付いたら、本当に大好きになってたんだよ、セーラ。

どこかでタイミングが違えば、あたしはシズと付き合ってたかもしれないし、別の人かもしれない。
だけど、あたしとセーラはこうして恋人になってる。

それを運命だって信じたっていいじゃない。
後ろはもう振り向かない。
* * *
127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 02:21:22.53 ID:069O31Wp0

憧「おはよ、シズ」

穏乃「おはよー憧」

憧「シズのおかげで全身筋肉痛なんだけど」

穏乃「運動不足じゃない?」

憧「あんたの体力がおかしいのよ」

穏乃「私は毎日山に行ってるからね」フフン

憧「はぁ」

穏乃「そういえばセーラさんは?」

憧「朝早起きして学校に行ったわよ」

穏乃「迷惑かけちゃったね」

憧「いいんじゃない?おかげで珍しいものも見れたし」

穏乃「珍しいもの?」

憧「服を忘れたって言うからあたしの服を貸してあげたのよ」

穏乃「憧の服を着るセーラさん……想像できないや」

129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 02:23:26.30 ID:069O31Wp0

玄「おはよ、二人とも」

穏乃「おはよう、玄さん」

憧「宥姉は?」

玄「早く行って勉強するんだって」

穏乃「受験生って大変だー」

憧「あたしたちも2年後はそうなるのよ。玄は来年だけど」

玄「うーん、でも想像がつかないな」

憧「勉強してるイメージないもんね」

玄「それはちょっとひどい」

憧「冗談だって」

玄「確かに勉強は得意じゃないけど、そうじゃなくて」

玄「将来のことなんてわからないなって」

穏乃「……そうですね」

130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 02:25:33.36 ID:069O31Wp0

もし、私がもっと早くにこの気持ちに気付いていたら、違っていたのかな?
もしかしたら、今セーラさんの居場所に私がいられたのかな。

だけど、もしもはもしも。昔には戻れない。

憧が片想いしてた間、ずっと気付かないでいて、やっと自分が気付いた時にはもう憧の心は移っていたってだけ。
穏乃「まぁ将来とか進路とかよくわからないけど……」
憧はずっと友達でいてくれたから。

今度は私の番だよね。

だから……。
穏乃「私達はずっと友達だよね」

おしまい
131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/12(火) 02:26:00.58 ID:cSHkPtSz0

憧チャーがいなくなっても嫁候補がたくさんいる山の主流石っす

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする