2 :代行ありがとうございます 2013/07/28(日) 21:50:24.99 ID:NZHSH8KrP
誠子「はぁっ……はぁっ……」
誠子(奈良の山奥にピラルクーがいるという都市伝説を信じてここまで来てしまったけど……迷ってしまった)
誠子(もう日が暮れそうで、電波も届かない……)
誠子(完全に遭難だ、これ)
誠子(あー、明日の練習出られないなぁ……それどころじゃないけど)
ガサガサ
誠子「ん?」
穏乃(今日の夕飯はビビンバだったなー、早く帰ろ!)ピョーン
穏乃「~♪」ピョーン
誠子「えっ!?」
誠子(あ、あんな高いところを木から木へ飛び移るなんて……)
誠子「あれは……天狗?」
誠子(いやいや、それはさすがに……でも……)
誠子「ちょっと、追ってみよう!」ザッ
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 21:56:29.29 ID:LRpUzowkP
天狗見つけてそれ追おうって思う亦野のアグレッシブさ
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 21:58:04.77 ID:+U8X3WJm0
釣竿を使って立体機動のごとく飛び回るんですか?
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 22:03:55.18 ID:NZHSH8KrP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
照「…………」
菫「で、その天狗を追っていったら町へ出られたと」
誠子「まぁ途中で見失っちゃいましたけど、方角が町の方だったんで」
尭深「かわいそう……水辺の岩は滑りやすいから気をつけろってあれほど……」
誠子「へ?」
淡「先輩……頭、打っちゃったんだったら病院に行かないと」
誠子「ちょっと待って! 本当に見たんだってば!」
菫「頭部への衝撃は、外傷がなくとも危険な場合があるからな、早く病院へ連れて行ったほうがいいだろう」
誠子「だから! 頭を打ってもいないし、本当に見たことなんですってば!」
菫「その木だが……だいたいどれくらいの高さだった?」
誠子「えっと……だいたいここの3階くらいの高さだった気が」
菫「よし、病院へ行こう」ガシッ
誠子「なんでそうなるんですか!」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 22:10:28.15 ID:osA67iFF0
それ天狗じゃなくて猿ですよ
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 22:17:40.09 ID:NZHSH8KrP
照「待って、菫」
菫「なんだ」
照「今の情報だけで、亦野の頭がパーになったと断じるのは性急だと思う」
誠子「パーって……」
照「だから私たちも奈良へ行こう」
菫「はぁ?」
照「行って、この目で確かめてこよう」
菫「正気か?」
尭深「先輩、いくらなんでもそれは……」
淡「え、旅行するのテル?」
照「とにかく、亦野のいうことを頭から否定するのは良くない」
誠子「宮永先輩……」ジーン
照「ということで、菫、早速交通手段の手配を」
菫「アホか、一人で行け。部費からは何も出んぞ」
尭深「先輩、宮永先輩を一人で行かせたら大変なことに……」
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 22:25:58.17 ID:NZHSH8KrP
菫「……確かにな」
淡「せんぱーい、いい機会ですからみんなで温泉とかに行きましょうよ」
菫「……仕方ない」
照「っし!」グッ
菫「ただし費用は各自自分で捻出するように」
淡「え~」
誠子「尭深も行くの?」
尭深「もう誠子ちゃんが転ばないように見てないと……」ズズ
誠子「……もう何も言わないよ」
誠子(あの天狗……また見れるのかな)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
照「やってきました、奈良」
菫「このあたりは確か阿知賀女子があるところだな」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 22:32:07.28 ID:NZHSH8KrP
淡「え!? じゃあ穏乃もいるってこと!?」
菫「まぁそうなるな」
淡「先輩! 私とりあえず阿知賀に行ってみます!」
菫「今日は土曜だからな、部活がなければいないと思うぞ?」
淡「あ、そっか……」
菫「まぁとりあえず宿に荷物をおいて……それから、なんだ? 天狗? のいた山でハイキングということか」
誠子「なんですかそのかわいそうなものを見る目は」
照「もう昼近くだし、みんなの荷物は私が旅館へ届けに行くから、先に山へ行ってて」
菫「……なんだ、いつもと様子が違うな」
照「……そんなことない、ただ提案者としてできる限りの雑用を引き受けようと」
菫(あやしいが……まぁいいか)
照「あ、淡も着いて来て」
淡「えぇ!? なんで私が?」
菫「照を一人にするわけにも行かない……ご指名だしついて行ってやれ」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 22:38:10.51 ID:NZHSH8KrP
淡「ぶー、じゃあそのあとちょっと阿知賀まで付き合ってね?」
照「善処する」
誠子「じゃあ先輩、荷物よろしくお願いします」
尭深「お願いします」
照「承った」
菫「じゃあその山へ行ってみようか」
誠子「あの山ですね、登山道は……この道をまっすぐいったところです」
尭深「待って、その道具は何?」
誠子「え? 釣具だけど」
尭深「私たちがいるのに釣りをする気?」
誠子「いや、万が一ピラルクーがいたらさ、ね?」
尭深「……」
菫「埒があかん、とりあえず歩くぞ」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 22:43:03.33 ID:NZHSH8KrP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
誠子「ここですここ! ここで天狗を見かけたんです」
菫「そうか、疲れたから帰ろう」
誠子「えええ!?」
尭深「先輩、ちょっと休憩して行きましょう。お茶持ってきてありますから」コポポ
菫「済まないな」
誠子「ほら! あそこの木とか、なんか不自然に枝が曲がってるような気がしません!?」
菫「気のせいだ、それにしてもなかなか良いところだな」ズズッ
尭深「空気が美味しいとお茶も美味しいです……」ズズッ
誠子「だからっ」
菫「しかし、こうやって運動したあとの温泉は格別なんだろうな」
尭深「楽しみです」
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 22:52:56.38 ID:NZHSH8KrP
誠子(ダメだ……二人とも完全にただのハイキング気分になってる)
誠子「はぁ……ちょっと水辺に行ってきます」
尭深「無茶しちゃダメだよ?」
誠子「大丈夫だよ……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
誠子(絶対に見間違いなんかじゃないのに……)ハァ
誠子「お、ここはなかなか……」
誠子(これだけの広さなら、ピラルクーがいてもおかしくは……)
誠子(ちょっと試してみようかな)ゴソゴソ
カラン
誠子「あ、テグス……あっ!?」ズルッ
バシャーン
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:02:20.86 ID:NZHSH8KrP
誠子(しまっ!?)ゴボッ
誠子(み、見た目以上に流れが……)ゴブッ
誠子(ヤバイ溺れる!)ゴボッ ガボッ
誠子(肺がっ……ぐっ……)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
誠子「……っ、ぐぇほ! おえっ!」ガハッ
「あ、気がついた!」
誠子「がはっ……ごほっ」ハァハァ
「大丈夫ですか!? どこか痛いところとかありますか?」
誠子「はっ……はっ……きみ、は」
穏乃「いやぁ、川の中でもがいてる人がいたから……どうしようかと……」
誠子「確か、阿知賀の大将の……」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:13:09.11 ID:NZHSH8KrP
穏乃「え? 私のこと……あ!」
穏乃「白糸台の……えっと」
誠子「亦野だよ……君は」
穏乃「高鴨です、それにしてもなんで東京の人がこんなところに?」
誠子「……なんというか、釣り?」
穏乃「あ、そうだったんですか……じゃあ釣具とかは上流の方に置きっぱなしなんですか?」
誠子「……っ! そ、そうだ!」ガバッ
穏乃「あぁ! 無理しないでください! 私がとってきますから」
誠子「いや……そういえば君、高鴨さんが助けてくれたのか」
穏乃「はい、そうですけど」
誠子「ありがとう、助かったよ……命の恩人だ」
穏乃「当然のことをしたまでです、困った人がいたら助ける、山のマナーみたいなものですから」
誠子「山を降りたらお礼をさせてくれないかな」
穏乃「いいですって! そんなに気にしないでください」
誠子「しかし……」
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:20:02.64 ID:btFAXvPKP
しずもんかわええええ
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:25:30.69 ID:hxjJ/sr90
天狗を追いかけた結果天狗の仲間入りとか京都・奈良ではよくある
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:27:37.12 ID:NZHSH8KrP
穏乃「今は天気がいいから、服は絞って岩の上に広げておけばすぐに乾くと思います」
穏乃「そのあいだに、亦野さんの道具を取ってきますから」
亦野「何から何まで……本当に済まない」
穏乃「気にしないでください、じゃあささっと行ってきますね」スルスルスル
亦野(え、なんで木登りなんか……)
穏乃「よっ、ほっ」ピョーン ピョーン
亦野「!!??」
亦野「なっ……なっ……」
亦野(あれは……あれって……)ドキドキ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
穏乃「お待たせしましたー!」ズザー
誠子「あぁ、ありがとう」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:34:29.83 ID:NZHSH8KrP
穏乃「それにしても随分すごい装備ですね、何を釣るつもりだったんですか?」
誠子「いや、その、ネットでピラルクーがいるって噂になっててね」
穏乃「ぴらるくー?」
誠子「世界最大の淡水魚って言われてるんだけど……だいたい3mから5mくらいって言われてるかな」
穏乃「……あー、もしかしたら私が知ってる魚かもしれないです」
誠子「えぇ!? 見たことあるの?」
穏乃「はい、案内しましょうか? あ、釣っちゃうのはダメですよ、一応ヌシみたいなんで」
誠子「あ、うん、そういうことなら……っていうか元から釣れるなんてあんまり思ってなかったし」
穏乃「じゃあ行きましょう! こっちです」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
誠子「ねぇ……さっきみたいに木から木へ飛び移るっていうこと、ふだんからやってるの?」
穏乃「そうですね、半分山で育ったようなものなので、日常的にやってます」
誠子「そっか……そうなんだ」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:38:56.01 ID:NZHSH8KrP
穏乃「あ、ここです」
誠子「こんなところにこんな大きな池が……」
穏乃「温泉がどこかから湧き出してるみたいで、冬でもそこそこ暖かいんですよ」
誠子「なるほど……それで……」
穏乃「おーい、健蔵!」
誠子「けんぞう?」
穏乃「そのヌシの名前です。健蔵って書いてある袋がこのへんに落ちてたから、そう呼んでるんですけど」
コポォ
穏乃「あ、ほら、出てきましたよ」
誠子「うおっ!?」
誠子(で、でかい! これは……6mはあるんじゃないのか!?)
スイー
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:43:03.46 ID:NZHSH8KrP
穏乃「たまにああやって口を出してるんですよ」
誠子「あれは……いったいいつから?」
穏乃「ここにいるのに気づいたのは中学2年生くらいの時ですね。それからたまに一緒に泳いでます」
誠子「一緒に?」
穏乃「はい、泳いでるととなりに寄ってくるんですよ」
誠子(すごいな……)
誠子「それにしても……綺麗だね」
穏乃「そうですね、ウロコが光を反射して……」
誠子「いや、健蔵もだけど、この池もさ……奈良にこんな場所があるなんて」
穏乃「奈良には来るの、初めてですか?」
誠子「うーん、ちょっと前に一度だけ来たことがあるけど……その時は日帰りだったし」
穏乃「そうだったんですか、今日はどちらに?」
誠子「松実館ってところなんだけど」
穏乃「あ、そこ知ってます! っていうかクロさんの家ですよ!」
誠子「クロさん?」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:45:09.43 ID:ug1L1W9N0
実際数メートルあるピラルクの尾ビレの一撃を食らったら大変なことになるだろうな
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:54:36.92 ID:NZHSH8KrP
穏乃「阿知賀先鋒の松実玄さんです」
誠子「……あ!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
誠子「あの、宮永で予約していた者なんですが」
女将「はい、お待ちしておりました……あら、穏乃ちゃん?」
穏乃「こんにちは」
女将「お嬢さんたちなら、ちょうどその、宮永さん達と一緒にいますよ? 一緒にいらっしゃったってことは……お知り合いなんですか?」
誠子「え?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
照「ロン」
玄「ひっ」ガクガク
宥「く、くろちゃ……」
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/28(日) 23:59:30.93 ID:NZHSH8KrP
照(はあああぁぁぁあああん!! 涙目で震えてる玄ちゃんかわいいよおおおおおぉぉっ!)
玄「ひっ……ひ……」カタ
照(もっともっといじめて、たっぷり泣き顔を堪能しなきゃ……私だけ個室なんだし、誰も気にしないでオカズにできるしね!)ジュルッ
誠子「あ、宮永先輩」
照「え、亦野?」
淡「あ、亦野先輩……と、穏乃!?」
穏乃「ど、ども」
宥「亦野さんと穏乃ちゃん?」
玄「ど、どうしたの?」
穏乃「いや、いろいろとありまして」
誠子「何やってるんですか、二人とも」
照「玄ちゃんのなきg……もう一度勝負してみたくて」
淡「もう半荘6回もやったんだよ? いい加減やめようよー」
誠子「はぁ……そうなんですか」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/29(月) 00:03:48.26 ID:pCUu6HNkP
照「そういえば菫と尭深は?」
誠子「……あ゛」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
~一ヶ月後~
憧「……」イライラ
宥「憧ちゃんの機嫌が……あったかくない……」
玄「穏乃ちゃんのところに、白糸台の亦野さんが泊まりに来てるんだって。だから今日は部活お休み」
灼「わずらわし……」
玄「なんか最近仲良くなったみたいで……今度穏乃ちゃんが向こうに行くらしいよ」
ガタッ
憧「ちょっと玄……どういうこと?」
玄「ひっ、いやその……」カタカタ
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/29(月) 00:07:16.17 ID:pCUu6HNkP
ガラッ
晴絵「うーっす、みんな揃ってるか」
灼「穏乃以外なら……」
晴絵「ああ、そういえばそうだったな……あ、今日は特別ゲストが来てるんだ」
宥「え?」
晴絵「あれ? 宥と玄は知ってると思ってたんだけどな」
玄「どういうことですか?」
晴絵「いや、松実館に泊まってるらしいからさ……あ、入ってきていいよ」
照「こんにちは」
玄「!?」ビク
照「久しぶりだね」ニッコリ
玄「あ……あ……」カタカタ
照「今日はよろしく……玄ちゃん」
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/07/29(月) 00:11:54.14 ID:pCUu6HNkP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
穏乃「はふはふ」
誠子「やっぱり川辺で焼いて食べるっていうのは格別だね」
穏乃「はい、すっごく美味しいです!」
誠子「次は海釣りだからね、もっとクセのないのが食べられるよ……まぁ釣れればだけど」
穏乃「だいじょうぶですよ、誠子さんなら」
誠子「まぁこればっかりは時の運もあるから……穏乃が来た時はちゃんと釣れるように頑張るよ」
穏乃「楽しみにしてますね!」
終わり