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1: 名無しさん 2014/03/26(水)01:03:04 ID:bQTNPoDv7
ばたんと閉められたドアに、がちゃりと鍵がかかった。
その音に和がびくりと身を震わせると、咲がゆっくりと近付いて来る。
「あ…」
ぴりぴりと与えられる重圧に、和の身体がガタガタと震え出す。
そんな和を見つめる咲がにぃ、と笑みを浮かべた。
「どうしたの?そんな顔して」
表情とは裏腹な冷たい声。
ひたり、ひたりと近付く足音が、怖い。
「違う!違うの!」
ぶんぶんと首を振って、ひたすら謝罪を繰り返す和の肩に咲の手が置かれた。
「わかってるよ、和ちゃんが一番好きなのは」
そこまでで、景色が一転する。
気付けば天井が見えて、ベッドの上に押し倒されていた。
「あたしだもんね」
2: 名無しさん 2014/03/26(水)01:05:50 ID:bQTNPoDv7
にっこりと笑う表情は影がかかっていて、表情を読み取れない。
がっ、と肩が押さえ付けられて、スカーフが抜き取られる。
ベッドの下へ投げ捨てると、両手で制服を開いた。
「やだっ…!やめ…!」
「大人しくしてないと、後で酷いよ」
低く、冷たい言葉に、和は抵抗を止める。
「初めからそうすればいいんだよ」
機嫌を直した咲がほんの少し口端を上げた。
しかしすぐに笑みは消える。
「で、何やってたの?」
咲の質問に和が再び首を振る。
「違う!あれは勘違いなんです!」
必死に叫んでみるも咲に睨み付けられると、和は黙らざるを得ない。
「言い訳は和ちゃんらしくないなぁ」
言い訳なんてレベルでもない。
ただ真実を伝えようとしているだけなのに。
咲が怒っている原因は、放課後の教室での出来事だった。
同じクラスの生徒と談笑している所を見られた。
ただ、それだけなのだ。
しかし咲にとってはそれだけなんて言葉では済まない。
咲は和に異常なほど執着していた。
今回みたいに、ただ他の人と話しているだけでも半端ではない苛立ちを露にする。
3: 名無しさん 2014/03/26(水)01:07:51 ID:bQTNPoDv7
咲との関係がいつからこんな関係に変化したかは覚えていない。
一番最初は恋人同士だった。
普通に一緒に帰ったり、手を繋いだり、甘酸っぱい時を共有していた。
しばらく経つと、咲の心に変化が表れ始める。
事ある毎に「淋しい」「嫌だ」と泣きじゃくる咲を慰める為に、身体を重ねることを繰り返した。
何かあれば咲がすぐに和を求める。和がそれに応える、そんな繰り返しだった。
それが少しずつ、少しずつエスカレートしていって、今では「淋しい」や「嫌だ」の代わりが 、「支配することで手に入る何か」を求める事へ変化していったのだ。
初めのうちは嫌だと精一杯抵抗していたが、繰り返し与えられる、どこか歪んだ愛に抵抗する力を奪われた。
今は成すがままの、まるで遊び道具の人形だ。
5: 名無しさん 2014/03/26(水)01:12:12 ID:bQTNPoDv7
「のどか」
先程とは変わって、泣き出そうな咲の表情が見えた。
「あたしは和ちゃんが好きだよ?」
覆い被さって、抱きしめてくる腕にはまだ温かみが残っているのだ。
だから、つい、許してしまう。
「咲さん…」
でもこのままじゃ、駄目だという事もわかっていた。
「ねぇ、もう止めましょう」
このままじゃ、お互いの為にならないの。
あなただってわかってるでしょう?
和の言葉に、咲はぴたりと動きを止めた。
そして額に手を当てて、ふと目を細める
「ほんっと」
その言葉と共に乱暴に下着を剥ぎ取られた。
7: 名無しさん 2014/03/26(水)01:20:29 ID:bQTNPoDv7
声にならない声を上げて、和が身体を丸めようとしたが 、咲の腕に遮られて、それも叶わない。
「まだ、あたしの気持ちわかってくれないんだね」
くつくつという笑い声が和の耳をぞわぞわとなぞった。
ぞくり、と身体が震え、危険を知らせる。
だが、知らされたところでどうにもならないのだ。
「や、だ…!」
ぐっと握り締められた手首を振り払おうとするが 、がっちりと掴まれた腕は解く事が出来ない。
「もっとわかってもらう必要があるね」
そう言って咲が和をうつ伏せにして押さえ込んだ。
うつ伏せられたその状態のままぐっと頭を押さえられて、顔がシーツに擦り付けられる。
顔を上げようとしても押さえ付けられる強さが大きく、醜くもがく事しか出来ない。
「あぁ…あっ…!」
この体勢になると、何をされるのかはもうわかっている。
身体を低く保った咲が和の背中に口付けた。
次の瞬間―……
8: 名無しさん 2014/03/26(水)01:21:36 ID:bQTNPoDv7
「いっ…!」
肩甲骨辺りに鈍い痛みを感じる。
咲がそこへ噛付いたのだ。
手加減無しの噛み付きに白い肌が傷付き、血が零れた。
しかし和は声を押し殺してそれに耐えようとする。
9: 名無しさん 2014/03/26(水)01:38:34 ID:bQTNPoDv7
「…んっ…っ…!」
更に傷口を舌で突かれるように舐められる。
ぎゅっとシーツを握り締めて和がひたすらその痛みに耐える。
目からは涙が零れ、シーツを色濃く染めていく。
和の白くて狭い背中には 、たった今新しく付けられた傷以外にも治り掛けの傷や、ここ2、3日で付いたと思われる傷が背中のあちらこちらに見えた。
傷口を貪っていた咲が、ふいと顔を上げる。
背中に付いた傷をじい、と見つめて、にやりと笑った。
「こんなに傷だらけになっちゃ、お嫁に行けないよ」
くつくつと笑いながら、和の身体を仰向けにさせる。
涙でぼろぼろになった顔が、咲の視界に飛び込んでくる。
10: 名無しさん 2014/03/26(水)01:48:08 ID:bQTNPoDv7
「そんなに泣くほどあたしが好きなんだね」
嬉しそうに歪められた表情に、和の背筋が凍る。
ゆっくりと顔を近付けた咲が、頬を伝った和の涙を舌で拭った。
んん、と声が漏れる。
快楽とは違う、苦痛と言うにもまた違う。
微弱な毒のように少しずつ、でも確かに身体が侵食されていく感覚。
抵抗する力はすっかりと姿を消した。
いや、もう初めから諦めているのだ。
「あ、和ちゃんはあたしのお嫁さんになるから、いっぱい傷だらけになってもいいか」
あたしはそんな和ちゃんでも大好きだから。
そんな和ちゃんでも愛してあげれるよ。
そう言って咲が和の唇を乱暴に奪った。
息も出来ないほどの深く、何もかもを奪いつくす口付けに頭がくらくらとする。
―その口付けは、微かに自分の血の味が、した。
―END―