【三尋木咏SS】慕「この鳥さんが見えるの?」咏「おう?」

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1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 21:51:05 ID:Y6uOIX6Y

現代 実況解説者控室

咏「いいじゃんよー、解説中にせんべいくらい食べたってさー」

えり「バリバリ食べる音がマイクに入るじゃないですか!だめですよ!」

咏「持ち込みくらい他のプロだってやってるぜぃ~?」

えり「……そうなんですか?」

咏「解説席でカツ丼かっこんだり、唐突に歌いだしたりさ~」

えり「えっ…」

咏「ペットのハヤブサ持ち込む人もいる気がするし」

えり「ハヤ……」

咏「今の途中からでまかせ」ふはは

えり「…………」イラッ

2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 21:52:07 ID:Y6uOIX6Y

咏「…………」

えり「……?」

咏「…………」ジーッ

えり「……なんですか?」

咏(…ま、でまかせって事にしとこうかねぃ。えりちゃんにゃーちょいっとシゲキが強いだろうしね…)

えり「?」

――いたんだよ。ホントに鳥と一緒に打ってた人が。

ハヤブサだったのかは知らんけど。

今頃…どうしているんかねぃ…――

3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 21:53:20 ID:Y6uOIX6Y
――「あら? あなたはこの鳥さんが見えるの?」――
――「うん、私の大事なお友達だよ!」――

4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 21:54:08 ID:Y6uOIX6Y

咏 中学三年生 横浜

友人A「ねー三尋木さん!お願い!」

咏「知らんって言ってんだろーよー」

友人B「高校に行ったらさ、一緒に麻雀部入ろうよ!」

咏「ガッコーの部活でやる麻雀なんか興味ねーってさ」

友人A「三尋木さんがいればきっと全国だって行けるよ!一緒に頑張ろう!」

咏「ハナっから他人に頼ってんじゃねーぜい」

友人B「もー、つれないなー」

5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 21:55:11 ID:Y6uOIX6Y

友人A「あと一人いれば来年団体戦に出られるんだ!」

咏「いや、知らんし」

友人B「三尋木さん、小学生の時は全国大会だって出てたのにー」

咏「存じ上げぬ」

友人A「中学になってずっと無所属なんでしょ? 勿体ないよ!」

咏「!」

友人B「?」

咏「…………」

友人A「どうしたの?」

咏「…………フン」

6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 21:56:04 ID:Y6uOIX6Y

咏(……ま、それはそーなんだよね)

咏(中学高校の全国大会ってな、部活の大会しかねーからねぃ。小学生じゃ、んなこたーなかったってのに…)

咏(なーんでわざわざ学校で麻雀打たなきゃいけないんだか…。雀荘でプロと打ってるほうがよっぽどいいってさ…)

咏(あーあ、小学生に帰りたい……)

咏(なんか楽しーことでも無いかねぃ……)

友人B「三尋木さん…?」

咏「……んにゃ、知らんから」

友人A「…………」

友人B「……そう……」

咏「…………」

ワイワイ キャッキャッ ハヤヤ~☆

咏「ん?」

7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 21:57:06 ID:Y6uOIX6Y

はやり「わー、ランドマークタワーだよっ☆」

杏果「あっちの観覧車も凄く大きいねー」

閑無「いちいち騒ぐなよみっともない…。田舎者丸出しじゃないか」ドキドキ

悠慧「何だよ、いちばん横浜に行きたいって言ってたの閑無だろー」

閑無「う、うるさいな!ランドマークとかはついでだろ!?慕の住んでたところを見に行くんだろ!」

慕「うん…、できれば、友達にも会えるといいな…」

8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 21:58:05 ID:Y6uOIX6Y

咏(おのぼりさん丸出しだねぃ… 夏休みってなこれだから…)

友人A「ねえ、あの人って…」

友人B「うん、はやりんだ!」

咏「?」

友人A「今注目の女子高生アイドル麻雀部員だよ! インハイ島根代表の!」

友人B「わぁー、初めて見たー!」

咏「……ふーん」

9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 21:59:04 ID:Y6uOIX6Y

咏(あー… そっか……)

咏(どっかで見た顔と思ったら…。むかーし、こども大会にいたねーさんたちか)

咏(そうそう、小二くらいの全国大会で打った……瑞原はやり、だっけかね)

咏(それにあの後ろのは…その次の年に見た…)

咏(アイドルとかは別に知らんけど…部活麻雀やってたんかい…)

咏(どいつもこいつも部活動ってか… そんなにいいもんかねぃ…)

10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:00:50 ID:Y6uOIX6Y

咏「…………」

友人A「三尋木さん?」

咏(……まーでも、どうせ暇だし……)

咏(このままグダグダしてるよりは、ちったぁ面白そうかもねぃ)

咏(ちょろっと、ついてってみよっか)

友人B「どうしたの?」

咏「悪ぃね、用事できちった」

友人A「えっ?」

咏「今日はもう付き合えねーや。またねーぃ」バイバイ

友人B「あっ、麻雀部の話は…」

咏「来年のことだろー? 前向きに善処しとくってさ」

タッタッタッ

11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:01:38 ID:Y6uOIX6Y

閑無「ところでさ、その友達ってのは、ちゃんとアポ取ってあるんだろうな?」

慕「あぽ?」

杏果「会う約束はしてるの?ってことだよ」

慕「してないよ…」

閑無「はあ!?」

慕「連絡先とか知らないし…。行こうって話になったの、こっち来てからだったし…」

閑無「大丈夫なのかよそれで…」

悠慧「まーいいじゃん、最悪横浜観光でもさ。トラの穴ってこっちにもあるんでしょー?」

閑無「昨日はお前の希望で秋葉原行っただろ! 今日はこっちを優先しろよ!」

悠慧「わかってるってー」

12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:02:32 ID:Y6uOIX6Y

悠慧「ま、それより先に腹ごしらえだよ! ほら、あっちの方でしょ、中華街!」

はやり「わーい、楽しみー☆」

閑無「ったく…しょうがないなお前たち…」ブツブツ

杏果「いいじゃない、せっかくこっちに来てるんだから楽しまなくちゃ」

悠慧「そうだ、慕のオススメのお店とかないの?」

慕「ごはんはいつも私が作ってたから…あんまり外食とかは…」

悠慧「なーんだよー」

杏果「まあ、知らないところを探検するのも楽しみってもんだよ」

閑無「そ、それならさ、まずあっちの…」ドキドキ

ドスン

閑無「うわっ!」

バサッ バサバサッ

13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:03:30 ID:Y6uOIX6Y

通行人「あ、サーセンッス」

閑無「もう!気をつけてください!!」

慕「閑無ちゃん、何か本が落ちたよ…」

杏果「これは…」

閑無「あっ!!」

はやり「……『必勝!中華街ぐるめガイド』……?」

閑無「…………」カァァァ

慕( ´∀`)

はやり( ´∀`)☆

悠慧( ´∀`)ニヤニヤ

杏果( ´∀`)プフー

14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:04:35 ID:Y6uOIX6Y

中華街

ワイワイガヤガヤ

はやり「わー、凄い人ー」

売り子A「甘栗アルヨー オイシイヨー」

悠慧「えっ、あ、はい?」

売り子B「甘栗アルヨー オイシイヨー」

悠慧「わっ、わわっ」

売り子C「甘栗アルヨー オイシイヨー」

悠慧「なんかいっぱい甘栗くれるんだけど!?」

杏果「いちいち相手にしない!」

咏(……危なっかしーねぃ)

15 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:05:47 ID:Y6uOIX6Y

閑無「わりと美味いな」甘栗ポリポリ

慕「うん、おいしいね」甘栗ポリポリ

はやり「うちのお菓子にも使えるかな…?」甘栗ポリポリ

杏果「もう…あんたたちってば……」ヤレヤレ

はやり「杏果ちゃんもどう? おいしいよっ☆」甘栗ポリポリ

杏果「そんなに食べたら、肝心の中華が食べられなくなるよー?」

閑無「……はっ!そうだった!」

杏果「やれやれね……」

16 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:06:44 ID:Y6uOIX6Y

露天商「見てってヨー、珍しいのあるヨー」

はやり「わー、なにか色々売ってるよー☆」

慕「露天商だねー」

悠慧(ふーん……って、あれは!!)

杏果「どうしたの?」

悠慧(あの本…。噂でしか聞いたことなかった幻の同人誌、『大沼プロ×南浦プロ』だ!!)

悠慧(あの二人の写真と麻雀の絵の表紙……間違いない!!)

スッ

杏果「悠慧?」

悠慧「すみません!この本ください!」

17 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:08:00 ID:Y6uOIX6Y

露天商「ほう、お目が高いネお嬢ちゃん、この本に興味アルカ?」

悠慧「はい! いくらですか!?」

露天商「残念だけどこれ、非売品アルネ。お金じゃ買えないヨ」

悠慧「えーっ!? じゃあなんで置いてあるの!?」

露天商「これ、うちの店の景品ネ。欲しかったらうちの店に来て勝つヨロシ」

悠慧「うちの店って…?」

露天商「ここヨ」スッ

悠慧「雀荘じゃん! 麻雀で勝てばいいの!?」

露天商「そうダヨー」

18 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:09:12 ID:Y6uOIX6Y

悠慧「やる!やります!!」

閑無「おい何言ってんだ悠慧! そんな時間ないだろ!」

悠慧「大丈夫だって! サクっと勝つからさ!」

露天商「はいはーい、おひとり様ご案内アルネー」

閑無「おい待てって!」

悠慧「~♪」

杏果「しょうがないな…。ちょっとごはん遅くなるけど、みんないい?」

慕「うん」

はやり「甘栗食べちゃったし、大丈夫だよー☆」

露天商「……ニヤリ」

咏(……おいおい、わっかりやすいのに引っかかっちゃって……)

19 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:10:27 ID:Y6uOIX6Y

店内

店長(露天商)「一位になったら景品引換券あげるヨ。それと交換ネ」

悠慧「わかった! じゃあ早く打とう!」

閑無「おいおい…」

慕「わぁー、麻雀屋さんだー」

はやり「はやや~☆」甘栗ポリポリ

店長「じゃ、この三人がお相手するネ」

代打ちA「……よろしく」

代打ちB「……よろしく」

代打ちC「……よろしく」

悠慧「よろしくお願いします!」

20 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:11:37 ID:Y6uOIX6Y

東一局

代打ちA「…………」タンッ

代打ちB「…………」タンッ

代打ちC「…………」タンッ

悠慧(なんか三人とも変な捨て牌……。大したことないや!)

悠慧(よーし……もらった!!)

タンッ

悠慧「ツモ! 2000・4000です!!」

代打ちA「?」

代打ちB「?」

代打ちC「?」

悠慧「?」

21 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:12:51 ID:Y6uOIX6Y

悠慧「……えっと、2000・4000だけど……」

代打ちA「…………」フフフ…

代打ちB「…………」ニヤニヤ

代打ちC「…………」ククク…

悠慧「な、なんだよ…」

店長「アイヤー、チョンボアルネ。そんな和了りは無いアルヨ」

悠慧「はあ!? なんだよそれ!?」

店長「さっき渡したルールの紙、見てなかたか」

悠慧「えっ」

店長「ここ、中国麻将専門店アルネ」

悠慧「!?」

22 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:14:02 ID:Y6uOIX6Y

店長「罰金払ってもらうアルネ。チョンボは高いアルヨー」

悠慧「なんだよ…。4000オールくらい……?」

店長「チョンボの支払いは点じゃないヨ」

悠慧「?」

店長「場代と別で五万円、払うヨロシ」

悠慧「五万!?」

閑無「はあ!?」

23 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:15:04 ID:Y6uOIX6Y

悠慧「待ってよ!そんなの知らなかった!!教えてくれなかったじゃん!!」

閑無「五万なんてボッタクリだろ!?おかしいよ!」

店長「最初にルール書いてある紙渡したヨー。罰金の額も載ってるアルネ」

悠慧「紙って……あっ」

閑無「…そんなのあったのか…?」

店長「そこにサインもしてるネ、このルールで文句は言いませんって」

杏果「悠慧…、サインしたの…?」

悠慧「したけど…ただの利用記帳だと思って……」

はやり「これかな? その紙って…」ピラッ

閑無「げっ、全部中国語…」

杏果「確かに…悠慧がサインしてるね…」

24 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:16:12 ID:Y6uOIX6Y

杏果「悠慧、これ中身ちゃんと……読んだわけないよね、中国語だし」

悠慧「う、うん…」

閑無「何やってんだよ…」

悠慧「うう…」

杏果「日本の麻雀といろいろ違うみたいだけど、やる前に気付かなかった…?」

慕「わぁー、花牌が入ってるー」

はやり「点棒って無いんだね~」

悠慧「それはその…本に目がくらんでたっていうか…」

閑無「さすがに花牌ツモったら気付くだろ?」

悠慧「……ツモらなかったし……」

閑無「……ったく……」

25 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:17:10 ID:Y6uOIX6Y

店長「さ、どうするネ?」

悠慧「…どうするって…?」

店長「やめて大人しく五万円払って出ていくか、勝ってチャラになるまで続けるか。選ぶヨロシ」

悠慧「チャラになるまでって…」

店長「一位取れば、引換景品にチョンボ無効券もあるヨ」ククク

悠慧「そんな無茶な…ルールわかんないのに…」

店長「それとも…」

店長「代金踏み倒しで、ケーサツ呼ぶか?」ギロッ

悠慧「ぐっ……」

26 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:18:16 ID:Y6uOIX6Y

悠慧「どうしよう……」

杏果「……サインしちゃっている以上、やるしかなさそうだね」

悠慧「やだよ! こんなボッタクリ店の言うこと聞くなんて!」

店長「何言うテルカ、ワガママ言ってるはアナタの方アルネ」

悠慧「なんでだよ!」

店長「最初からチョンボしなけりゃ済む話。よく読まずにサインしたのはアナタアルネ」

店長「即ケーサツ呼ばないだけありがたいと思うヨロシ」

店長「おまけに無効券まであるとか、この辺じゃ超優良店アルヨ」クックック

悠慧「くっ…」

27 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:19:41 ID:Y6uOIX6Y

店長「さ、続けるヨ。まだ一局終わっただけアルネ」

悠慧「いや…ちょっと待ってよ…」

閑無「おい、誰か中国麻将わかるか…?」

はやり「わかんない」

慕「やったことない」

杏果「私も」

閑無「くっ……」

代打ちA「おいおい、いつまで待たせるんだー?」ニヤニヤ

代打ちB「早くしてくれよ」

代打ちC「…………」クックック

悠慧「うう…」

28 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:21:00 ID:Y6uOIX6Y

対局再開

…………

……

代打ちA「…………」タンッ

代打ちB「…………」タンッ

代打ちC「…………」タンッ

悠慧(もうわかんない…いつも通りに打つしか…)

スッ

咏「それじゃない!ふたつ左!!」

悠慧「!?」

29 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:22:15 ID:Y6uOIX6Y

咏「これさ!」ペシッ

コトッ

悠慧「あっ」

店長「む……」

悠慧「何すんだよ!?」

咏「和了りたかったら、言うとーりに打ちなぃ」ヒソヒソ

悠慧「えっ?」

代打ちA「おい、あれ…」ヒソヒソ

代打ちB「三尋木のお嬢だ…」ヒソヒソ

代打ちC「ちっ、厄介なのが…」ヒソヒソ

30 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:23:33 ID:Y6uOIX6Y

咏「いいかい、……じゃなくて……、……が、……ていう役だから……」ヒソヒソ

悠慧「は、はい……」ヒソヒソ

代打ちA「…………」タンッ

代打ちB「…………」タンッ

代打ちC「…………」タンッ

…………

……

咏「……そう、これで……」

タンッ

悠慧「ツモ!…じゃなくて、和? えっと、8点?でいいの?」

咏「ん」

31 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:24:49 ID:Y6uOIX6Y

咏「んじゃ、ちょろっと休憩ね! いいだろ、そんくらい!」

店長「……10分ダケヨ」

悠慧「あ、ありがとう……」

はやり「あなたは…昔こども全国大会で…?」

咏「まったく、危機感の足りないねーさんたちだねぃ」

悠慧「な、なんだよそれ…」

咏「インハイ選手がこんなボッタクリ雀荘で騙されたなんて…、ちょっとしたスキャンダルだぜぃ?」

悠慧「うっ……」

咏「知らねー土地での行動には、もーちょい気を付けてもらいたいもんだねぃ」

悠慧「……ごめんなさい」

32 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:26:12 ID:Y6uOIX6Y

咏「…そんじゃ、さっさとこの場を終わらせようかね」

悠慧「?」

咏「乗りかかっちまったもんはしょーがねーさね。勝って五万をチャラにするしかねーさ」

悠慧「そ、そうだよ! 勝てばいいんだ!」

閑無「いや、簡単に言うけどお前…」

杏果「ルールも役もわかんないでどうするの?」

悠慧「い、今みたいに教えてもらいながら打てばいいいじゃん!」

33 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:27:22 ID:Y6uOIX6Y

店長「おっと、相談して打つのはダメヨー。今のは大目に見るけど、次やったらチョンボつけるヨー?」

咏「……ま、普通そうだろうねー」

悠慧「そんな!」

店長「誰でもいいけど、打つのは一人。教えてもらうなら休憩中に終わらすヨロシ」ニヤニヤ

慕「!」

悠慧「そんな短時間で覚えられるわけ…」

店長「言っておくけど、10分以上は待たないヨ」

悠慧「うう……」

咏(……そう来るとは思ったけど……しゃーねーな、私が……)

慕「それなら私が打つよ!」

閑無「慕!?」

34 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:28:58 ID:Y6uOIX6Y

慕「打つのは誰でもいいんですよね?」

店長「……かまわんアルが」

慕「ルールと役、教えてくれるかな?」

咏「お、おう…いいけど…」

閑無「おい、慕…」

慕「大丈夫!心配しないで!」キラキラ

閑無(ああ…こいつのこの目……)

杏果(ただ中国麻将をやってみたくてしょうがないって顔だ……)

悠慧(ボッタクリとか心底どうでもいいって顔してる……)

はやり(輝いてるねー☆)甘栗ポリポリ

35 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:30:20 ID:Y6uOIX6Y

咏「じゃ、あんま時間ねーから手短に……で…………ていうのが…………」

慕「うん…………じゃあ…………のときは…………」

咏「そうそう、…………で…………だから…………」

慕「うん…………うんうん…………」

咏「あとはそうさね、役は紙に書くか…………」カキカキ

…………

……

閑無「……おい慕、大丈夫かよ?」

慕「うん! 大体わかった!」

36 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:31:40 ID:Y6uOIX6Y

対局再開

慕「和! えっと、8点・4点・2点で…14点です!」

代打ちA「ぬぅ……」

代打ちB「むむ……」

咏(いいセンスしてるね…。さすがに、全国大会に出るくらいのことはあるってかぃ)

閑無「よし、やった!」

咏(……だがいかんせん、覚える時間が短かった……)

…………

……

タンッ

代打ちC「和 16点」

慕「えっ? あっ、フリテン無いんだっけ…」

咏(どうしたって、即完璧に対応ってわけにゃいかねーよな……)

37 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:32:53 ID:Y6uOIX6Y

…………

……

咏(この代打ちたちも……、さすがにこっちのプロって感じだねぃ)

タンッ

代打ちA「和 24点(中国語)」

慕「えっと、はい?」

店長「にじゅうよんてんネ」

慕「あ、はい…」

咏(だんだん日本語でしゃべらなくなってきてる…)

38 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:34:34 ID:Y6uOIX6Y

…………

……

代打ちB「和 18点(中国語)」

店長「じゅうはってんヨ」

慕「…はい」

咏(……それに当然のごとく、こっちばっかり狙い撃ち……。女子高生相手に本気かい)

悠慧「うう…もうラス前……」

閑無「大丈夫か…?」

はやり「はや~…」甘栗ポリポリ

咏(一位にゃちょっと厳しいってとこかな…。しゃーねー、やっぱ私が代わりにもう一戦…)

39 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:36:24 ID:Y6uOIX6Y

オーラス(北四局)

悠慧(最後…ここ勝たないと一位になれない…)

慕「…………」タンッ

閑無(索子がかなりきてる…。清一色いけるか……?)

杏果(清一色なら結構いいんじゃないかな……?)

慕「…………」タンッ

咏(いや、清一色に平和ついても足りねー…逆転するにはもうひとつ高い役…)

慕(えっと…ここで鳥さんがくれば…この役がついて…)

咏(一色双竜会…。一索ツモれば逆転だけど…それもうラス1だぜぃ…?)

慕(……大丈夫!)

40 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:37:43 ID:Y6uOIX6Y

慕(鳥さんは……今日も来てくれる!)

スウッ
バサッ バサバサッ
咏「……鳥……?」

41 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:38:48 ID:Y6uOIX6Y
――そのとき私は、確かに見た。
どこからともなく現れた一羽の鳥が、突然あの人の肩に舞い降りて……

42 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:40:02 ID:Y6uOIX6Y

タンッ

慕「和! 64点です!」パサッ

咏(引き当てた…ラス1の一索を…)

悠慧「やったぁ!」

閑無「よーし!! 逆転!!」

慕「……私の一位ですね」

店長「くっ……」

咏(……いやいや、肩にでかい鳥がとまってるってばよ)

杏果「……ふう」

はやり「やったねっ☆」

咏(おっかしーだろうよオイ、なんで誰もリアクションしねーんだ……?)

咏(わかんねー… すべてがわっかんねー……)

咏「……ねえあんた、その鳥は……」

43 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:41:25 ID:Y6uOIX6Y

ガッシャーン!!

店員A「うわー!」

店長「どうしたネ!騒がしいアルヨ!!」

店員B「店長ー!裏の養鶏場の柵がー!!」

店員C「鶏が逃げたぞー!!」

店長「なにィ!?」

グガァゴゴ!! グガァゴゴ!!

悠慧「な、なんだこれ!?」

バサッ バサバサッ!! グガァゴゴ!!
グガァゴゴ!! ギャッギャッギャ!!

閑無「鶏がいっぱい店の中に入ってきた!!」

バサバサバサバサッ!! グガァゴゴ!! グガァゴゴ!! グガァゴゴ!!

44 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:42:19 ID:Y6uOIX6Y

店長「つ、捕まえるネー!」

グガァゴゴ!! ギャッギャッギャ!! バサバサバサッ!!

店員A「こいつ! 大人しくしろ!!」

ドガッ バキッ クァァッカッカッ!!

店員B「痛っ! 痛い痛い痛い!」

ガッシャーン!! ドンガラガッシャン!!

店員C「あー!! それ高いやつ壊すんじゃないネー!!」

グガァゴゴ!! グガァゴゴ!!

悠慧「ひゃっ! 髪を引っ張るなよ!」

バサバサバサバサッ!! ギャッギャッギャ!!

閑無「うわ…なんだこれ…」

45 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:43:55 ID:Y6uOIX6Y

咏(どうなってんだよこりゃ……。わかんねーけど、チャンスだ!)

咏「じゃ、これ以上いちゃもんつけられねーうちに! さっさとおさらばするよっ!」

はやり「うん、行こう!」

杏果「はい、じゃあこれで清算ですねー。お釣りはいりません、それじゃ!」

タッタッタッ

悠慧「あっ、待ってよー! 私の大沼×南浦本はー!」

閑無「この期に及んで何バカなこと言ってんだ! 行くぞ!」グイッ

慕「えー、もう一戦くらい…」

閑無「帰ってからにしろ!」

店長「い、いやちょっと! 助けてアルネー!」

グガァゴゴ!!! グガァゴゴ!!! バサッバサバサバサッ!!!

46 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:45:26 ID:Y6uOIX6Y

店の外

杏果「……ふう、やれやれだったね」

閑無「なんとか逃げてきたな…」

はやり「鶏さんに助けられちゃったね~☆」

悠慧「私の本…」

閑無「もういいじゃんかよ本なんて!」

悠慧「でも…」

杏果「私も持ってるから貸してあげるよ、あんな本くらい」

悠慧「えっ!? 杏果もそっちに興味あったの!?」

杏果「そっちって? 物凄く真面目な麻雀の解説本だよ、二人の対談形式の」

悠慧「えっ」

閑無「?」

47 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:46:46 ID:Y6uOIX6Y

悠慧「…麻雀の…本…?」

杏果「うん」

悠慧「…………」

杏果「…………」

閑無「?」

悠慧「……しょんなぁぁ……」ヘナヘナ

閑無「? 何だと思ってたんだよ?」

杏果「世の中知らない方がいいこともあるよ、閑無」

閑無「???」

はやり「はやや~…」甘栗ポリポリ

48 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:48:16 ID:Y6uOIX6Y

咏「ねえ、あんた…」

慕「ん?」

咏「肩……鳥とまってっぜ……?」

慕「あら? あなたはこの鳥さんが見えるの?」

咏(見えるの?ってなんだよ… 他の人には見えてないのかい…?)キョロキョロ

慕「なかなか見える人、いないんだけどな…」

咏「……いや、知らんし」

慕「そう? でもたぶん…」

咏「ん?」

慕「そこにいるあなたの猫さんと一緒だよ」ウフフッ

咏「!」

49 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:50:07 ID:Y6uOIX6Y

咏「……どういう意味かねぃ」

慕「お友達でしょ? その猫さん!」

咏「…………」

慕「?」

咏「…………それだけ?」

慕「そうだよ?」ニコニコ

咏「…………」

慕「…………」

咏「……そーいう風に考えたこたぁなかったね……」

慕「?」ニコニコ

咏「……その鳥は……あんたの友達だってのかい?」

慕「うん、私の大事なお友達だよ!」ニコッ

50 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:51:31 ID:Y6uOIX6Y

咏「……さっきの一索ツモってさ…… その鳥が……」

慕「うん。友達を呼んできてくれたね」

咏「…………」

慕「…………」

咏「……んじゃ、あの鶏たちも……?」

慕「うーん? そっちはよくわかんないよ」

咏「…………」

慕「甘栗の匂いとかで寄ってきたんじゃないかな? 知らんけどっ!」ウフフッ

咏「…………おもしれー人だ」

51 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:53:11 ID:Y6uOIX6Y

――鳥さんが一索を呼んできてくれた、か。

さっぱり意味わかんねー、どんなオカルトだよと思ったけれど……、でも。

確かにあの鳥は、あの人と一緒にそこにいた。

なんとなく気になって見ちまった、その後の全国大会でも。

あの人が大事な一手をツモるとき、いつもあの鳥がそばにいた。

52 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:54:51 ID:Y6uOIX6Y

……あれからだったかねぃ……。

私がオカルトだなんだと関係なく、学生だのプロだのと分け隔てもせず、

誰の麻雀でも真剣に考えるようになったのは。

知らんけど。

…………。

いまでも思うんだよね…。

一索だけじゃなくあの鶏たちも、やっぱりあの人が呼んだんじゃないかって。

……いや、知らんけどさ。

――

53 :以下、名無しが深夜にお送りします 2014/12/12(金) 22:56:13 ID:Y6uOIX6Y

…………

……

えり「どうしたんですか、さっきから?」

咏「…ねーえりちゃん、ヒッチコックの『鳥』って映画知ってる?」

えり「ひっ!? なんですかいきなり! そんなの私に見せようっていうんですか!?」

咏「お、知ってたかー。見たことあんの?」

えり「見たことは無いですけど、話くらい知ってますよ! 怖いやつですよね!」

咏「……んじゃ、中華マフィア系の映画とかイケるクチー?」

えり「嫌ですよ!! やめてください、そういうの!」

咏「…………」

咏(……やっぱでまかせでいいや)
カン

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