【末原恭子SS】由子「恋愛相談に乗ってほしい?」洋榎「せ、せや」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 20:38:17.13 ID:4vG2cpWW0

~放課後 姫松高校 屋上~

由子「どういう事なのよー?」

洋榎「言葉通りの意味や。こんな事他のヤツには相談できへん!」

由子「他のヤツにはって、恭子はどうなのよー……ってまさか」

洋榎「そのまさかや……」
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 20:42:27.02 ID:4vG2cpWW0

由子「まさか洋榎が恭子をねー」

洋榎「せやから由子に相談しとるんや。どうしたらええと思う?」

由子「どうしたらって、素直に想いを伝えればいいと思うのよー?」

洋榎「それができたら苦労せんわ! それでも恋愛相談屋か! やめてまえ!!」

由子「じゃあやめるのよー」

洋榎「ごめんなさい、力を貸してください」

由子「まあ、他ならぬ洋榎の頼みやから協力してあげるのよー」

洋榎「おおきに!」
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 20:46:38.49 ID:4vG2cpWW0

由子「それじゃあまず、恭子に惚れた経緯を話してよー」

洋榎「あ、アホ! そんな恥ずかしい事話せるか!」

由子「なら恋愛相談もここまでよー?」

洋榎「は、話す! 話すって!」

由子「最初からそうすればいいのよー。面倒くさいからそういうボケは抜きで頼むのよー」

洋榎「はい……」
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 20:50:56.95 ID:4vG2cpWW0

洋榎「別に最初から恭子の事が気になってたワケやない。好きやと気が付いたんもつい最近やしな……」

洋榎「最初に恭子の事を意識し始めたんは、一年の合宿の時やった……」

~回想~
二年前の合宿 入浴時間

洋榎「……」ジィー

恭子「な、なに見とんのや……」

洋榎「いや、慎ましい乳しとるなぁと思うてな」

恭子「アンタに言われとうないわ!」

~回想終了~

洋榎「あれが始まりやった……」

洋榎「今までオカンや絹のデカイ乳ばかり見てきた反動やったのか、それとも同じ悩みを抱える同士を見付けた喜びやったのか……」

洋榎「ともかく、以来恭子の乳が頭から離れんようになったんや」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 20:55:29.93 ID:4vG2cpWW0

由子「軽く犯罪のニオイがするエピソードなのよー」

洋榎「ウチかて女や! 別に構へんやろ! 話しを戻すで」

洋榎「恭子の乳、最初はその事しか頭になった。せやけど次第に末原恭子本人の存在がウチの中で大きくなっていったんや……」

洋榎「それからというもの、恭子の一挙手一投足が気になって仕方なくなったんや!」

洋榎「今まで恋なんてした事なかったから、最初はそれが『恋してる』って事だとも気が付かんかった」

洋榎「でも、恭子が漫や代行と仲良くしとるの見ると、なんだかモヤモヤするんや」

洋榎「それで初めて気が付いた。このモヤモヤは嫉妬で、ウチは恭子に惚れとるんやって」

由子「……」

洋榎「な、なんで黙っとんのや?」

由子「洋榎にしてはえらくまともな話しだったから拍子抜けしてただけなのよー」

洋榎「失礼なやっちゃな!」

由子「ごめんごめんなのよー」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 20:59:43.90 ID:4vG2cpWW0

洋榎「まったく……。で、どないしたらええと思う?」

由子「うーん、やっぱりまずはデートに誘うところからなのよー」

洋榎「で、デート!? そ、そんなん恥ずかしくて誘えるか!」

由子「なら、デートって考えなければいいのよー。二人でお出掛けするだけって考えるのよー」

洋榎「二人でお出掛け……って、デートやないか!」

由子「洋榎は本当にアホなのよー」

洋榎「なんでやねん!」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:04:42.99 ID:4vG2cpWW0

由子「兎に角、デートに誘うのよー」

洋榎「だから……」

由子「デートにも誘えないのなら、告白なんて一生ムリよー?」

洋榎「それは……そうやけど……」

由子「明日誘うのよー」

洋榎「あ、明日!? そんな急に……」

由子「洋榎はこうやって強引にでも決めてあげないと、絶対に誘えないのよー」

洋榎「せやけど、どこに行けばええのかとかもよく判らんし……」

由子「そういう細かい事は私がどうにかするのよー。洋榎はデートに誘う覚悟だけを固めてくればいいのよー」

洋榎「覚悟……」

由子「それじゃあ明日の朝、ここに集合するのよー」

洋榎「わ、判ったわ……」
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:09:18.78 ID:4vG2cpWW0

~夜 愛宕家 洋榎の部屋~

洋榎「……判った、とは言うたけど、やっぱめっちゃ緊張する……」

洋榎「さっきから動悸が激しい……夕飯もろくに喉を通らんかった……」

洋榎「……ウチ、明日どうなってまうやろ……。それ以前に今日寝られんやろか……」

洋榎「……あ、今気付いたけど、断られたらどうどないしよ」

洋榎「断られたら、ウチの事嫌いって事なんじゃ……」

洋榎「どないしよどないしよどないしよどないしよどないしよ!!」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:14:30.30 ID:4vG2cpWW0

~翌日 朝 姫松高校 屋上~

洋榎「そんな事を考えていたら結局一睡もできへんかった……」

由子「やっぱり洋榎はアホなのよー」

洋榎「なんでや! 誰が聞いても恋する乙女の悩みやろ!」

由子「恭子が洋榎の誘いを断るワケないのよー」

洋榎「え?」

由子「Loveの方かどうかは判らないけど、恭子は洋榎の事が好きなのよー。心配する必要はないのよー」

由子「だから自身を持って恭子をデートに誘うのよー」

洋榎「お、おう、判った……」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:19:08.56 ID:4vG2cpWW0

洋榎「せやけど、デートに誘うってどこに誘えばええんや? 細かい事はどうにかするとかって言うとったけど……」

由子「それなら問題ないのよー。はい、これチケットなのよー」ピラ

洋榎「USJのチケットやないか! どうしたん、これ?」

由子「知り合いがUSJのスタッフで、たまにチケットとかくれるのよー」

洋榎「そ、そうなんか。てっきりワザワザ買ってきてくれたのかと思って心配したで」

由子「そんなワケないのよー。バイトもしてない女子高生のお財布はそんなに豊かじゃないのよー」

由子(昨日、急いで金券ショップに行った事は内緒なのよー。おかげでお財布はすっからかんよー)
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:20:11.66 ID:9iYNKtqv0

由子はいい子
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:23:46.12 ID:4vG2cpWW0

洋榎「それで、どうやって誘えばええんや?」

由子「そのチケットは今週末までが期限なのよー」

洋榎「あ、ホンマや」

由子「だから『週末ヒマ?』みたいな感じで誘えばいいのよー」

洋榎「もしヒマやなかったら?」

由子「大丈夫、恭子は今週末ヒマなのよー。恭子本人がそう言ってるのを聞いたのよー」

洋榎「そうか、よかった」

由子(昨日急いでリサーチした事も内緒なのよー)
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:25:53.29 ID:Sse0jbFs0

天使だな由子ちゃん
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:28:29.35 ID:4vG2cpWW0

洋榎「そんで、いつ誘ったらええと思う?」

由子「朝から行くのよー」

洋榎「そ、そんな……まだ勇気が……」

由子「なんの為に朝に呼び出したと思ってるのよー?」

洋榎「え?」

由子「朝でダメなら昼休み、昼休みでダメなら放課後があるのよー」

洋榎「せ、せやな!」

由子「でも朝に言えた方がいいのよー」

洋榎「なんでや?」

由子「一日中モヤモヤを抱えているのはよくないのよー」

洋榎「せ、せやな……」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:32:53.19 ID:4vG2cpWW0

~放課後~

洋榎「結局、放課後までデートの話しを切り出せんかった……」

由子「半ば予想していた事なのよー。洋榎はヘタレなのよー」

洋榎「クッ! 返す言葉があらへん……!」

由子「あんまり使いたくなかったけど、もう最終手段なのよー」

洋榎「最終手段?」

由子「洋榎、一旦チケットを返してよー」

洋榎「ほい」ピラ

由子「それじゃあ洋榎は先に部室に行って、恭子と会話でもしててよー。デートの話しはしないでよー」

洋榎「判ったけど、由子は?」

由子「私は後から行くのよー」

洋榎「さよか? じゃあウチは先に行くで」
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:33:33.28 ID:vjKDySm5O

由子さんマジええ人や…
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:37:18.53 ID:4vG2cpWW0

~部室~

洋榎「おはよーさん」

恭子「おはようございます、主将」

洋榎(恭子はいつ見てもかわええなぁ~。制服プラスジャージでかわいく見えるのは恭子だけやで)

恭子「あれ? 主将、ゆーこは一緒やないんですか?」

洋榎「由子ならもう少ししたら来ると思うで」

恭子「そうですか」

洋榎「由子になんか用があったんか?」

恭子「いえ、ゆーこに用というか……久しぶりに三麻でも打ちたいと思いまして」

洋榎「三麻か……なつかしいな」

恭子「インハイも近いですからね、初心を忘れない為にもまた三麻を打ちたいんです」

洋榎「……せやな。由子が来たら三麻やるか」

恭子「はい、是非」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:42:53.84 ID:4vG2cpWW0

ドア「ガチャ!」

由子「遅れたのよー」

恭子「ゆーこ、インハイ前だと言うのに弛んでるで。主将からもなにか言うてやってください」

洋榎「うむ。一発デコピンやな」

由子「か、勘弁なのよー。それより、二人共週末はヒマなのよー?」

洋榎(来たか……)

洋榎「ウチはヒマやけど、恭子は?」

恭子「ウチもヒマです」

由子「よかったのよー」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:45:05.66 ID:yvwZSjxA0

今からゆーこは更に天使となるだろう
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:46:40.49 ID:4vG2cpWW0

恭子「ゆーこ、なんの話しなん?」

由子「知人に貰ったUSJのチケットが二枚あるのよー。期限は週末までよー。だけど私は用事があって行けないのよー」

恭子「つまり、ウチらで行ってこいと?」

由子「別に嫌ならいいのよー?」

洋榎「う、ウチは嫌やないけど……恭子は?」

恭子「ウチも嫌やないですけど、いいんか? ゆーこ。金券ショップに持ってけばそれなりの金になるやろうーに」

由子「お金にするより、二人が楽しんで来てくれた方が嬉しいのよー」

恭子「ゆーこ……」

洋榎「こ、ここはお言葉に甘えよか、恭子」

恭子「そう、ですね」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:51:06.39 ID:4vG2cpWW0

由子「ありがとうなのよー。はい、これチケットよー」ピラ

恭子「お礼を言うのはこっちの方や。ありがとーな、ゆーこ」

由子「私の分まで楽しんできてよー。それと、私はこれから用事があるから今日はこれで失礼するのよー」

洋榎「え? ちょ、ちょっと待ちぃ!」

由子「これだけお膳立てしてあげたんだから、あとは自分でどうにかするのよー」ヒソヒソ

由子「それじゃあまた明日なのよー」

洋榎「あ……」

洋榎(……せやな。いつまでも由子に頼ってられへんもんな。自分の想いぐらい、自分で伝えな!)

恭子「三麻……」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 21:56:04.70 ID:4vG2cpWW0

~部活終了~
洋榎「う~ん! 今日もぎょうさん打ったなぁ」

恭子「……」

洋榎「ん? どないした恭子。部活中も全然集中しとらんかったみたいやけど、なんかあったんか?」

恭子「……少し、週末の事を考えてまして」

洋榎「週末? ああ、USJか。ウチはめっちゃ楽しみやけど、恭子は違うんか?」

洋榎(恭子はウチとの……で、デートになんか不安でもあるんやろうか……)

恭子「いえ、ウチも楽しみです。楽しみ過ぎて上の空やったというか……」

洋榎「なんや、由子に弛んでるとか言っておいて自分がそんなんでどないすんねん」

恭子「そうですよね。インハイも近いのに……」

洋榎「でもまあ、たまには息抜きも必要やろ。気いばっか張ってたってしゃーないで?」

恭子「ふふ、そうですね。それじゃあ週末は思いっきり楽しみましょうか」

洋榎「もちろんや!」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:01:37.56 ID:4vG2cpWW0

~その日の夜 末原家~

恭子「とは言うたものの、めっちゃ緊張してきた……」

恭子「主将……いや、洋榎とUSJって、完全にデートやん!」

恭子「そもそも洋榎と二人きっりでお出掛けなんて初めてなんやなかろうか……」

恭子「アカン、考えれば考えるだけ緊張してきた。誰か相談に乗ってくれる人は……」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:05:29.10 ID:4vG2cpWW0

~真瀬家~

ケータイ「電話やで」

由子「およ、恭子から電話? もしもしよー」

恭子『もしもしゆーこ? 恭子やけど……』

由子「恭子から電話とは珍しいのよー。どうかしたのよー?」

恭子『え~と、週末の事についてなんやけど……』

由子「週末? あ、もしかして行けなくなったって事よー?」

恭子『いや、そうやないんや。ただその……緊張してな……』

由子(およ? これってまさか、なのよー)

由子「恭子、もしかして……洋榎の事好きなの?」

恭子『……なんで判るんや?』

由子「友達と遊びに行くだけで、普通はそんなに緊張しないのよー。つまり、そういう事なのよー」

恭子『……やっぱりゆーこに電話して正解やったな』

由子(あ、この流れは……)

恭子『ゆーこ、ウチの恋愛相談に乗ってくれへんか?』
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:07:48.54 ID:fLpuhI840

これはすばらです
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:09:19.54 ID:4vG2cpWW0

由子「やっぱりなのよー」

恭子『なにがやっぱりなんや?』

由子「こっちの話しなのよー。それで、恋愛相談って具体的にはどんな事なのよー?」

恭子『相談に乗ってくれるんか!?』

由子「他ならぬ恭子の頼みじゃ断れないのよー」

恭子『おおきに!』

由子(似たようなやり取りを昨日もした気がするのよー。多分気のせいなのよー)
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:14:32.73 ID:4vG2cpWW0

恭子『それで週末の事やけど、どないしたええやろ?』

由子「どうもこうも、普通に楽しめばいいのよー」

恭子『それができれば苦労はせん!』

由子「ねえ恭子、上手くやろうとか、よく見られようとか、そういう事考えてない?」

恭子『それは……』

由子「難しく考えないで、普段通りの恭子でいればいいの。洋榎だって、そういう飾らない恭子を好きになってくれると思うよ?」

恭子『せやけど……』

由子「自信がない? そんなんじゃいつまで経っても前に進まないよ? 洋榎に好きになってもらえないよ?」

恭子『……』

由子「私が厳しい事を言っているのは判ってる。でもね、前に踏み出す勇気も持てない人間に、幸せは掴めないの」

恭子『……判った、努力してみる』

由子「うんうん。真瀬由子は頑張る女子を応援するのよー」
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:18:05.74 ID:fLpuhI840

ゆーこちゃんお母さんみたいだな
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:18:58.03 ID:/b3F8xiJP

ぼくは敬意を表するッ!
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:19:34.68 ID:4vG2cpWW0

~電話終了~

由子「ふう、これでどうにかなりそうなのよー」

由子「……本当に?」

由子「奥手の二人の事だから、お互い言い出せずに解散、なんて事になりかねないのよー」

由子「両思いだって事を伝えられれば……ううん、本人の口で伝えなければ意味ないのよー」

由子「やっぱり私がどうにかするしかないのよー」

由子「……なんで私がこんなに心配しなくちゃいけないのよー?」

由子「まあ、これだけお膳立てしたのに進展はありませんでした、じゃあ目覚めがわるいけど……」

由子「はあ、これだけ悩んでも結局は手伝う方に心が流れてる……」

由子「うん、そうだよね。やっぱり友達……特に親友である二人には、幸せになってほしい」

由子「……私と違って」
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:24:47.75 ID:4vG2cpWW0

~週末 USJ~

洋榎「キタで、USJ! 中学の卒業遠足以来やから、約三年ぶりか」

恭子「ウチもです」

洋榎「……」

恭子「どうかしましたか? 主将」

洋榎「敬語禁止、主将呼び禁止や。今日は部活やのうてプライベートなんやからな」

恭子「……せやな。ほな今日は思いっきり楽しもうか、洋榎」

洋榎「おう!」
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:28:33.25 ID:4vG2cpWW0

~洋榎達の後方十メートル~

由子「気が付かれないように尾行するのって大変なのよー」

由子「メガネを掛けて、髪型と喋り方を変えると、自分でもビックリするぐらい別人だったのよー」

由子「でも、一番大変だったのは出費なのよー。まさか三枚もチケットを買う羽目になるとは……」

由子「おかげでお財布の中身は完全にすっからかん……まあ、これも二人に為と考えれば痛くはないけれど……」

由子「兎に角、今は二人をくっつける事に専念するのよー」
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:31:57.84 ID:4vG2cpWW0

由子「まずはフェイズ1『はぐれると危ないから手を繋ごうか作戦』なのよー」

由子「作戦は簡単。私が走って恭子にぶつかり、それを洋榎が抱き留める」

由子「事前に『園内は広くて人が沢山いるからはぐれないように手を繋ぐといい』というアドバイスを洋榎には出してあるから、きっと手を繋ぐのよー」

由子「それでも繋がなかった時は……いや、考えない事にするのよー」

由子「さあ、突撃なのよー!」
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:38:56.45 ID:4vG2cpWW0

チョットハヤスギルカモヨビーダッシュ

由子「ドン!」

恭子「きゃ!」

洋榎「おっと」キャッチ

洋榎「園内で走るんなやドアホ!」

由子「ごめんなさーい」

洋榎「なんやアイツ……大丈夫か、恭子」

恭子(洋榎の腕に……抱かれとる……)ドキドキ

洋榎「恭子?」

恭子「だ、大丈夫や。ありがとうな、洋榎」

洋榎「……手、繋いどこか」

恭子「え?」

洋榎「い、今みたいなヤツがまた居るかも知れんからな。念の為や」

恭子「せ、せやな」
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:42:36.30 ID:4vG2cpWW0

由子「なんとかフェイズ1は完了したのよ」

由子「というか、こうでもしないと手も繋げないとは……奥手と言うか乙女と言うか……」

由子「まあ、文句を言って仕方ないのよー。私は私のできる事をするのよー」

由子「しばらくはこのまま様子をみるのよー」

由子「手を繋いだんだから、少しは進展があると思うのだけど……」
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:44:47.94 ID:RqlHFQ3o0

ここまで手を打ってくれる由子ちゃんは間違いなく聖人
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:46:33.76 ID:4vG2cpWW0

洋榎「……」ドキドキ

恭子「……」ドキドキ

洋榎(……アカン、手を繋いだけど、緊張してなにも言えへん)

恭子(洋榎なんにも言ってくれへんな……まあ、ウチもやけど。でも洋榎の手、温かいなぁ~)

洋榎(と、兎に角なんか話しを振らな……)

洋榎「きょ、恭子、どこから回りたい?」

恭子「う、ウチはどこでもええで? 洋榎は乗りたいアトラクションとかないんか?」

洋榎(せや、由子の言われた作戦や)

洋榎「ならジュラシックパークに行ってみいへんか?」

恭子「ええで」
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:50:37.39 ID:4vG2cpWW0

由子「およ、二人はジュラシックパークに行くようなのよー」

由子「洋榎は私のアドバイス通りに動くつもりみたいよー」

由子「私もフェイズ2『濡れ濡れスケスケラッキースケベ作戦』を実行に移す必要がありそうなのよー」

~ジュラシックパーク 制御室~

由子「なんとか忍び込む事に成功したのよー」

由子「さーて、飛び出す水量の調整を……」
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:52:41.84 ID:qOTjUB8p0

行動力すげぇえええ
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:55:27.53 ID:/b3F8xiJP

これはギャングスターですわ
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 22:55:34.37 ID:4vG2cpWW0

洋榎「……」ビショビショ

恭子「……」ビショビショ

洋榎(由子の言ってた通りびしょ濡れになったけど……)

洋榎「ジュラシックパークってこんなに濡れたか? 前に乗った時はここまで濡れんかったけど……」

恭子「レインコートを着てたのに中まで水が入ってきおった……乗る席がアカンかったんやろうか」

洋榎「かもな。兎に角、びしょ濡れのままやどうしようもあらへん。売店でTシャツでも買って……!?」

恭子「ん? どないしたん? 洋榎」

洋榎「い、いや、なんでもあらへん!」

恭子「? まあええけど。それより早く売店でTシャツ買って着替えな風邪ひいてしまうで」

洋榎「せ、せやな」

洋榎(濡れた服が肌に張り付いて恭子の下着が透けて見える……。なるほど、この為のジュラシックパークか、由子!)

洋榎(せやけど紫か……恭子もなかなかに派手な下着付けとるんやな)

~~~~~~~~~~

由子「洋榎はこのアドバイスの意味を察したようなのよー」

由子「でも、本当の目的は別にあるのよー」
78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:01:37.33 ID:4vG2cpWW0

~着替え完了~

洋榎(これは……!?)

恭子「フリーサイズのTシャツやからブカブカやな」

洋榎(そのブカブカ加減が……たまらなくエロイ!)

洋榎(そうか由子、これが真の目的やったんやな!)

洋榎「せ、せやけどサイズはこれしかなかったんやからしゃーないやろ」

恭子「我慢するしかないか」

洋榎「それに、Tシャツも似合っとるしな」

恭子「……あ、ありがとう///」
79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:02:44.70 ID:RqlHFQ3o0

この由子なら姫松高校を任せられる
82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:06:14.94 ID:4vG2cpWW0

由子「フェイズ2も成功したようなのよー」

由子「これでさらに二人の距離が縮んだはずよー」

由子「取り合えず園内でできる私のできる事はこんなところよー」

由子「さあ、一足先に帰ってフェイズファイナルの準備をするのよー」

由子「……結局、私はアトラクションには一つも乗ってないのよー」
83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:10:38.72 ID:4vG2cpWW0

~閉園時間~

恭子「もう閉園時間か。楽しい時間はすぐに過ぎてしまうなぁ~」

洋榎「せ、せやな」

洋榎(結局、告白できへんまま閉園時間になってしもうた……)

恭子「一応これから帰るって親にメールを……ん? 母ちゃんからメールが来とる」

恭子「……」

洋榎「ん? どないした?」

恭子「……急に両親で旅行に行く事になったて。明日の夜には帰ってくるようやけど」

洋榎「そりゃホンマに急な話しやな。家に帰っても誰もおらんのか。でもカギぐらい持っとるやろ?」

恭子「もちろんや」ガサゴソ

恭子「……あれ?」

洋榎「恭子?」

恭子「そ、そんなアホな……」ガサゴソ

恭子「……カギがあらへん」

洋榎「マジか」
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:12:35.89 ID:szaTwlT60

天使の策か!?
87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:17:04.23 ID:4vG2cpWW0

恭子「ど、どないしよ……家に入れん!」

洋榎「お、落ち着け恭子」

恭子「わ、判っとるけど……」

洋榎「もう暗い。カギを探すのは困難や」

恭子「ならどないしたら……」

洋榎「……ウチに来い」

恭子「え?」

洋榎「帰るところがないんなら、ウチに来ればええ。幸い明日は休日やしな」

恭子「……ええんか?」

洋榎「あたりまえや。恭子が困っとるのを放っておけるか!」

恭子「洋榎……」
94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:22:08.87 ID:4vG2cpWW0

~愛宕家前~

洋榎(とは言うたものの、オカンが許可してくれるやろうか……)

洋榎(いや、弱気になるんやない。絹も仲間に引き入れてオカンを説得するんや!)

洋榎「……て、あれ? 電気が付いとらん」

恭子「ホンマやな」

洋榎「兎に角入るで」

ドア「ガチャ」

洋榎「ただいま~。オカン? 絹? おらんの?」

シ~ン

恭子「……ホンマにおらんようやな」

洋榎「取り合えずリビングまで行ってみよか」
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:27:00.09 ID:4vG2cpWW0

~愛宕家 リビング~

洋榎「テーブルの上に置き手紙がある」

『急に帰省する事になった 明日の夜には帰る オカン』

恭子「……洋榎のところもか」

洋榎「まあ、この方が都合がええけど……」

洋榎(……あれ? これってつまり、明日の夜まで恭子と二人っきりって事か!?)
99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:32:09.70 ID:4vG2cpWW0

洋榎(……どないしよ)

恭子「洋榎、ウチは結局どないしたらええんや?」

洋榎「ん? ああ。心配ない、泊ってけや」

恭子「ええんか? 親御さんがいないのに勝手して」

洋榎「ええねんええねん。オカン達が勝手に帰省したなら、こっちも勝手してやろうやないか」

恭子「……そうか。ありがとう」

洋榎(……ここで言わなあかんよな)

洋榎「恭子、代わりに、っちゅーたらあれやけど、ウチの言う事に『はい』か『いいえ』でええから答えてほしい」

恭子「なんや?」

洋榎「……」

恭子「洋榎?」

洋榎「恭子! 好きや!! 付き合ってくれ!!!」
100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:33:51.15 ID:fLpuhI840

もし断ったら泊まれなくなりそうなタイミングだな
102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:34:20.14 ID:OtOWDh4Q0

このタイミングで言っちゃう洋榎ちゃんは確実に童貞
103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:37:38.59 ID:4vG2cpWW0

洋榎(……言うたで)

恭子「……」

洋榎「きょ、恭子……?」

恭子「……」ポロポロ

洋榎「な、なんで泣くんや? 泣くほど嫌やったんか?」オロオロ

恭子「アホ……逆や逆」ポロポロ

洋榎「逆?」

恭子「泣くほど……嬉しいんや!」

洋榎「え? ちゅー事は……」

恭子「答えは……『はい』や」ポロポロ

洋榎「恭子!」ギュッ

恭子「洋榎!」ギュッ
108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:43:37.91 ID:4vG2cpWW0

~真瀬家~
由子「ふう、これでフェイズファイナルも完了なのよー」

由子「さすがに丸一日同じ屋根の下で過ごして進展がないって事はないハズよー」

由子「まあ、恭子にぶつかった時にカギをくすねたりと準備をするのは骨が折れたけど」

雅枝「お前さんが家に訪ねて来て、一日家を空けてくれと言ってきた時は驚いたけどな」

由子「雅枝さんも恭子のご両親も話しが判る人でよかったのよー」

雅枝「ウチらが反対したらどないするつもりだったんや?」

由子「最終的にはぶん殴ってでも了承を取り付けるつもりだったのよー」

雅枝「な、なかなかアグレッシブやな……」

由子「二人の為ならそれぐらいの事はするのよー」

雅枝「……お前さん、どうしてそんなんに洋榎達に入れ込んでくれるんだい?」

由子「それはもちろん親友だから……」

雅枝「それだけやないやろ?」

由子「……」

雅枝「教えてくれへんか?」

由子「……似てるんですよ、あの二人は……昔の私に」
111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:49:21.20 ID:4vG2cpWW0

由子「中三の頃、私も恋をしていました」

由子「相手は同じ麻雀部の仲間」

由子「その人の事を考えるだけで幸せで、まさに恋する乙女っていう状態でした」

由子「でも私は奥手で、なかなか自分の想いを伝える事ができないでいた……」

由子「そこで、仲のよかった麻雀部の仲間に相談したんです」

由子「その子が言うには『告白の為にもいくつかステップがある。まずは雰囲気作りから』」

由子「という事で、私は勇気を出して好きな人を遊園地に誘いました」

由子「ちょうど今回の洋榎と恭子のように……」
113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/05(日) 23:53:58.70 ID:4vG2cpWW0

由子「でも、その人は約束の場所に来てくれなかった……」

由子「ううん、来られなくなってしまったって言う方が適切ですね」

雅枝「来られなく?」

由子「途中で事故に遭っていたんです」

由子「打ちどころが悪く、即死でした」

雅枝「……」

由子「結局、私は想いを伝えられず仕舞い。今となっては、その人が死んだという事よりも、そちらの方が心残りなんです」

由子「あの二人には、私の二の轍を踏んでほしくないんです」

由子「まだ『死』が二人を分かつ事はないでしょうけど、私達はもう三年生。卒業してしまえばバラバラになってしまう」

由子「連絡を取り合う事はあるでしょうけど、今のように毎日顔を合わせるという事はなくなってしまうでしょう」

由子「だから二人には、最高のカタチで『今』を過ごしてほしいんですよ」
115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/06(月) 00:00:32.45 ID:4vG2cpWW0

雅枝「……お前さん」

由子「同情はなしで頼むのよー」

雅枝(口調が戻った……)

由子「私に同情するぐらいなら……私に同情してくれたのなら、その分二人の事を応援してほしいのよー」

由子「……そうすればきっと、私も報われるから」

雅枝「……せやな。よし! 今日は飲むで!」

由子「人の家であんまり酔っぱらわないでほしいのよー」

雅枝「なに言うとんのや、お前さんも飲むんやで!」

由子「高校生に飲酒を勧めるなんて、それでも教育関係者よー?」

雅枝「これも一つの教育や!」

由子「はぁ、今夜は眠れなさそうなのよー」

カン!

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