【咲-Saki-】洋榎「必勝祈願や!」【小蒔・霞SS】

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 03:49:30.82 ID:VEcWE5NL0

二回戦終了後・姫松の宿泊先

洋榎「いやー、何とか2位通過出来て良かったわー」

洋榎(せやけど一回戦では鹿老渡相手に思わぬ苦戦、二回戦ではあわや敗退寸前まで追い込まれた……)

洋榎(ウチらは強い、それは確かや。でもここまでイマイチ調子が上がってこーへん)

洋榎「これはいっぺんお参りでもして厄を払って役満わんさか状態にせなアカンな」ドヤ

洋榎「そんなわけで今からみんなを誘って必勝祈願や!」

由子の部屋

洋榎「ゆーこー! 必勝祈願に行くでー!」

由子「……」

漫「……」

絹恵「……」

洋榎(漫や絹もココにおったんか。三人でタブレット見つめて何しとるんや……?)

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 03:50:45.30 ID:VEcWE5NL0

絹恵「末原先輩がプロファイリングしてくれた結果やと、清澄の次鋒は相手の顔色を伺って手を進めとるみたいですね」

由子「そーみたいやねー。しかも眼鏡外すと逆に集中力が増すみたいなのよー」

漫「つまり対策としては常にポーカフェイスで打つって感じですかね?」

絹恵「裏をかこうとして顔芸とかしても逆に見ぬかれそうやしなぁ。それがええんちゃいますかね」

由子「そやねー。対局中はなるべくヘラヘラ笑っておくことにするのよー」

絹恵「ウチの相手の一年生は相手を無視した完全デジタル打ちやから、
臨海や有珠山の人に適当に潰して貰えばええかな……」

由子「でもどこかで出し抜いてプラス抜けする事も大事なのよー」

絹恵「それは分かっとります。さて、あとは漫ちゃんやけど……アレ、ホンマにやるんですか?」

由子「どーしよっかー。代行は考えて物言ってるか分からへんから正直怖いんやけど……」

漫「いえ、やらせて下さい! これ以上迷惑掛ける訳にもいかないんで!」

由子「漫ちゃんがそこまで言うならやるしか無いのよー」

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 03:53:11.30 ID:VEcWE5NL0

絹恵「じゃあ行くで……準決勝は強豪揃いー漫ちゃんは爆発するー」5円玉ゆらゆら

由子「爆発するのよー」5円玉ゆらゆら

漫「ばく、はつ……」

絹恵「効くんはやっ!」

由子「でも好都合なのよー。爆発するー、爆発するー」

漫「爆発する……! これ以上愛宕先輩だけに頼ってられへん……!」

由子「その調子なのよー。ウチも今度こそ一位抜け出来るように頑張るんよー」

絹恵「清澄の大将は正直バケモンや……副将のウチが少しでも稼いで末原先輩を楽にしたらんと……」

洋榎(……そっか、結果だけ見れば一位抜け出来とるんはウチだけやったな)

洋榎(あの気合の入りよう、絹達は絹達で自分らで出来る事をやっとる)

洋榎(ならウチとしては邪魔するわけにはイカンな)カチャ

洋榎「しゃあない、ここは恭子と二人で行く事にするか」

洋榎「あんなけったいな三人と戦って一番毒気にあてられそうやしな」

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 03:55:32.50 ID:VEcWE5NL0

恭子の部屋

洋榎「恭子ー、お祓いついでに必勝祈願に行く―――」

恭子『いやっ、もう、もうやめてください代行っ……』

郁乃『嫌よ嫌よも好きのうちやでー? ほら、もっと素直になりぃな……』

恭子『堪忍、堪忍してください……っ』

郁乃『そんな事いうてホンマは嬉しいんやろー?』

恭子『違いますからぁ……』

洋榎「……」パタン

洋榎(ウチは何も聞かんかった。何も聞かんかったんや)

洋榎(ていうか部屋の奥におったみたいやけど何しとったんやろ……)ドキドキ

洋榎(アカンアカン! 考えたら悶々としてきた!)

洋榎「……こら必勝祈願ついでに煩悩も祓ってもらわなアカンなぁ」

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 03:56:30.77 ID:VEcWE5NL0

東京都内のどこかの神社

洋榎「結局ウチ一人になってもた……」

洋榎「ま、みんなの分もウチがお願いしたるか!」

洋榎「って、なんやこの神社。垣根の一部がひん曲がって変な形しとるなぁ」

?「それは鬼門除けのために施された処置なのですよー」

洋榎「ん? アンタ確か永水の……」

初美「薄墨初美なのですよー。妹さんには二回戦でお世話になりました」ペッコリン

洋榎「ああその節はどうもー。で、アンタはここで何しとるんや?」

洋榎「神社の中から出て来たみたいやけど」

初美「あーそれではですねー。私は今ここで巫女修行を兼ねたバイト中なのですよー」

洋榎「バイトって……アンタのトコって確か神代んトコの分家やろ?」

洋榎「それが他の神様の世話なんかしてええもんなんか?」

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 03:57:53.23 ID:VEcWE5NL0

初美「それなら心配いらないですよー。ここは薄墨家が分祀した神社ですから」

洋榎「ぶ、ぶんし……?」

初美「簡単に言うとのれん分けみたいなものだと思って貰えればいいですよー」

洋榎「なるほど、よー分かったわ」

初美「だから元を辿れば姫様の実家と同じ神様を祀っているようなものなので問題はないのです」

初美「そもそも日本の神道は八百万神を崇拝する多神教なのでそこまで厳しくはないんですけどね」

洋榎「つまり日本の神様は浮気者も許してくれるって事やな」

初美「浮気者じゃないですから! 親戚の家に遊びに来てるようなものですから!」

洋榎「す、すまん……言い方悪かった」

初美「……こっちこそ取り乱してしまってごめんなさいですよー」

洋榎「いやいや、アンタが神様の事を大事にしとるんがよー分かったから、ホンマごめんな」

初美「……まぁ、そういうんでしたら。それで今日はこの神社に何の御用ですか?」

洋榎「えー、インターハイのひっしょ……」

洋榎(おいおいアホかウチは。ウチらが蹴落とした選手の前で必勝祈願とか嫌がらせにも程があるやろ)

洋榎「……いや、たまたま通りがかっただけや」

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 03:58:47.44 ID:VEcWE5NL0

初美「敗退した私達に気を遣ってるんだったらその必要はありませんよー」

洋榎「い、いやそういうんじゃなくてやな……」

初美「対局中にあれだけ喋ってる癖に、嘘を付くのは下手なんですねー」

初美「表情を見ればバレバレなのですよー」

洋榎「むぅ……」

初美「去年はあなた達を私達が蹴落としたわけですしね、これも勝負事の常ですよー」

洋榎「そういえばそうやったな。今年をどうするかしか考えてへんかったわ」

初美「去年の事は眼中に無しですか。常に前を見てるのは貴女らしいと思いますよー」

洋榎「ウチや由子、それに恭子にとっては最後の年やからな」

初美「……そうですね」

洋榎「……? あっ」

洋榎(そういえば薄墨も三年やった! こんなちっこいナリやからつい年下やと思っとったわ……)

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 03:59:45.19 ID:VEcWE5NL0

初美「必勝祈願ならちょうど良い神様を祀っていますから着いて来て下さいですよー」

洋榎「う、うん……」

洋榎(怒って、へんのかな……)

初美「こらそこ! 真ん中は神様の通り道なので端に寄って下さいです!」

洋榎「」

洋榎(怒られた……)

御手洗前

初美「まずはここで手と口を洗って下さいねー」

初美「外界の穢れを落とすためなので必ず行なってくださいですよー」

洋榎「了解やで」

初美「正式な洗う順番があるのですが今回は私がやったようにして下さいですよー」

洋榎「真似すればええんやな。よっしゃ」

この後の流れは>>1がニワカ知識を披露していくだけになるのでキンクリです。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:00:59.15 ID:VEcWE5NL0

拝殿

初美「では二礼二拍手一礼した後にお願いして下さいですよー」

洋榎「分かった。っと、ちょっと待ってや」

洋榎(インターハイ優勝さして下さいは安直すぎるからアカン)

洋榎(ムシが良すぎるお願いやし、神様に頼りきりっちゅうんもウチらのプライドが許さへん)

洋榎「すまんな、決まった」

ペコリペコリ パンパン ペッコリン

洋榎(……ウチらが本来の実力を出し切れますように)

初美「……」

洋榎「……待たせた。終わったで」

初美「結構短かったですね。関西人の事だからあれもこれもお願いするかと思ってたですよー」

洋榎「関西人やからってそんな卑しい事ばっかするかい!」

初美「……ごめんなさい、神前でありながら偏見だけで判断する礼を失した発言をしてしまいました」ペッコリン

洋榎「お、おう……。分かればええんや」

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:01:41.41 ID:VEcWE5NL0

洋榎(何やねん……さっきからいっちょ前の巫女らしい事ばっかしよって……)

洋榎(ていうか、対局中は脱げかけの露出狂みたいな格好やったのに今はちゃんとしとるやんけ……)

初美「お参りも終わりましたがこの後はどうするですかー?」

洋榎「そやなー。折角やからお守りでも買って……」

恭子『堪忍して下さい……っ』

洋榎「つ、ついでに煩悩退散もしてもらおかな///」

初美「煩悩追い払うのは神社じゃなくてお寺の仕事なのですよー」

洋榎「そ、そっか……」

初美「ていうか厄除けじゃなく何故煩悩ですかー? なんかえっちぃ事でも考えてるんですかー」

初美「……まさか、あの妹さんのやらしい肉体を見て興奮してるとか」

洋榎「んなわけあるかい! 絹が滅茶苦茶美少女なんは事実やけど!!」

初美「否定ついでにさりげなく自慢されたですよ」

洋榎「せやろーさすがやろー」

初美「人の自慢して流石とか言われても……」

洋榎「」

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:02:31.75 ID:VEcWE5NL0

初美「とりあえず煩悩の事は良いとして、必勝祈願のお守りならありますよー」

洋榎「ホンマか? じゃあそれ5つ貰っとくわ」

初美「分かりましたですよー」

洋榎「一番ええやつな! こういう時に奮発するんが大阪モンやからな!」ドヤ

初美「根に持ってたですか!?」

洋榎「あっはっはー。そういう訳でもないんやけど勘違いされっぱなしもシャクやからな」

洋榎「ちなみにこういう時には値切らへんで?」

初美「分かりました、もう分かりましたですよーっ」

鳥居前

洋榎「ほな、今日はありがとうな」

初美「どういたしましてですよー」

洋榎「アンタの巫女っぷり、なかなか板に付いとったで」

初美「ありがとうですよ。そう言って貰えると来年からやっていけそうな気がするですよ」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:05:48.20 ID:VEcWE5NL0

洋榎「え……アンタ、卒業したらそのまま後を継ぐんか?」

初美「そういう事になってますねー。両親は健在なのでまだ見習いと言った感じですけど」

初美「こうして好き勝手に遊んでいられるのも今年までですねー」

初美「なので最後に個人戦が残っててホント良かったと思ってるですよ」

洋榎「そっか、アンタも子供みたいなナリしてちゃんと将来の事考えててんな……」

初美「名前覚えてるはずなのにアンタはやめて欲しいですよー」

洋榎「それもそうやな、じゃあ……」

初美「同学年だし初美で良いですよー」

洋榎「分かった、初美やな。にしても初美はすごいわ」

洋榎「ウチなんか『高校卒業したらプロ目指すでー!』とかそんなくらいの漠然とした事しか考えてへんし」

初美「貴女はそれで良いと思うですよー」

洋榎「洋榎、洋榎やで。貴女とか他人行儀やし気持ち悪いわ」

初美「そーですかー。では洋榎で」

洋榎「おう」

初美「ともかく洋榎はそうやっていつも自信満々なのが一番ですよー」

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:06:41.09 ID:VEcWE5NL0

洋榎「そ、そうか? 照れるやんけ」

初美「インハイっていう舞台で出会ったのも何かの縁ですし、洋榎がプロになった時は応援させてもらうですよ」

洋榎「そっか、そん時はよろしゅーな。さて、んじゃそろそろ帰るかな」

初美「そうですかー。それではまた……」

初美「……っと、最後に煩悩退散のおまじないですよー」

洋榎「え? それはお寺でやれってさっき―――」

初美「んっ……」

洋榎「!? んーっ!?」

洋榎(え!? なんなん!? なんなんこれ!? いやなんなんとかとか言われるまでもなくこれは……)

洋榎(これはどう見てもキスやんけ!!)

初美「……ぷはっ」

洋榎「……ぷはっ! ちょ、初美アンタ何を!」

初美「だから、男の裸体に興奮して煩悩満載な変態さんにその事を忘れさせるためのおまじないですよー」

洋榎「そんな事言うてへんやろ!? それに、あのっ、そのっ……ウチ初めてなんやで!?」

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:07:16.29 ID:VEcWE5NL0

初美「大丈夫、女の子同士はノーカンですよー」

洋榎「ノーカンなわけ……まあええわ。そう言うんやったらそう言うことにしたるっ」

初美「そうですよー」

洋榎(って出来るわけないやろおおおお!)

洋榎(でもこっちだけ慌ててるっていうんも手玉に取られとるみたいでムカつくな……)

洋榎「あースッキリしたわー。初美のお陰で悟りの境地やわー」

初美「それは何よりですよー」

洋榎「じゃ、煩悩も退散した事やしそろそろ帰るわ。じゃあな」スタタタ

洋榎(ふぅ……なんとか誤魔化しきれたで)ドキドキ

洋榎(余計煩悩まみれになった気がするけどな……)
初美「……行ったですかー」

初美「頑張って下さいですよー。普段の実力が出せるよう、応援してますからね」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:20:17.30 ID:VEcWE5NL0

そして三回戦

洋榎「ツモ! 2000・4000!」

有珠山「くっ……」

臨海「……」

久「うーん、また和了られちゃったわ」

洋榎(おー、なんかめっちゃ調子ええでー!)

洋榎(漫も由子も実力を出し切れとった感じやし、これも初美んトコでお参りした結果やな!)

臨海(私の支配が姫松にだけは効きにくい……一体どういう事なんだ……)ゴゴゴゴゴ

久(うわぁ~、なんか天江衣みたいに禍々しいのが出てるわねぇ。なんで愛宕さんにだけ効かないのかしら)
こんな調子でウチら姫松高校はその後も快進撃を続けた。
決勝では清澄や白糸台に力及ばす3位と言う結果に終わったんやけどな。
でもウチと同じ三年やった由子や恭子も実力を全て出しきれた清々しい顔をしとった。
それもこれも全部初美んトコの神社のご利益があったからかもしれへんな。
ま、ウチらの実力あってこそやねんけどな!

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:26:21.42 ID:VEcWE5NL0

初美がいた神社

洋榎「つーことでお礼参りに来たでー!」

洋榎「って初美おらんやないかい」

神主「どうされましたか?」

洋榎「あ、いやー。ここで巫女見習いしとった薄墨初美にお礼を言おうと思って来たんですけど」

神主「……そうですか。彼女でしたらもうここでは働いていませんよ」

洋榎「そっか、そろそろ個人戦始まるしその調整でもしとるんかな」

洋榎「ほな神様に挨拶だけさせて貰いますわ」

神主「どうぞどうぞ、薄墨さんも喜ばれると思います」

洋榎「っと、歩く時は道の端っこやったな」スタスタ

神主「……」

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:33:03.05 ID:VEcWE5NL0

ペコリペコリ パンパン ペッコリン

洋榎「ありがとうございました。お陰さんでウチらは実力を出しきる事が出来ました」

洋榎「ウチは個人戦にも出るんで、良かったら引き続き応援お願いしますわ」

洋榎「あ、ここで働いとった初美も応援したって下さいね」

洋榎「あいつは自分ちの神様もそうやけど、ここにおる神様の事も滅茶苦茶大事にしとったんで」

洋榎「直接対決する事になったらあっちを応援したって下さい」

洋榎「まあ、実力でウチが勝つんやけどな!」ドヤ

そして、個人戦一日目

洋榎(おい……どういう事やねん……)

洋榎(初美、個人戦出とったんちゃうんかい……)

洋榎(なんで会場のどこにもおらんねん!)

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:41:48.93 ID:VEcWE5NL0

洋榎「そこの姫様!」

小蒔「えっ? あっ……」スタタタ

洋榎「なんで逃げんねん! アンタ何か隠しとるんちゃうやろな!?」

小蒔「私は、私は何も知りませんっ」

洋榎「じゃあなんでそうやって申し訳なさそうに逃げんねん!」

小蒔「……っ」

『まもなく、個人戦一日目の第一試合が始まります。選手の皆さんは所定の卓まで移動して下さい』

洋榎「……ちっ、逃がしてもたか」

洋榎「まあええ。試合の合間合間で追い回して絶対に問い詰めたる」

洋榎「あれは絶対なんか知っとるわ」

そやけど、どんくさそうに見えて神代の逃げ足は案外早かった。
結局捕まえる事が出来たんは一日目が終わったその帰り道やった。

洋榎「さて、いい加減話してもらおか。初美に何があってん」

小蒔「え、えっと……でも初美ちゃんからは何も言うなって……あっ」

洋榎「ほーう、なんか隠し事せなアカンような事情ってわけかぁ」

小蒔「ぅぅ……」

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:49:53.35 ID:VEcWE5NL0

小蒔「でもホントに、ホントに愛宕さんにだけは言うなって口止めされてるんです……っ」

洋榎「ウチだけに……? どういう事やねん」

小蒔「そ、それは……」

霞「それは私から説明させて貰います。だから姫様を責めるのはもうやめて下さい」

洋榎「アンタは永水の大将の石戸霞やったな」

霞「覚えててくれたんですね。光栄です」

洋榎「まあな。それで初美に何があってん」

小蒔「霞ちゃん……」

霞「いいんですよ小蒔ちゃん、初美から責められるのは私だけですから」

洋榎「はよせえや! こちとら一日中気になって仕方なかったんやからな!!」

小蒔「……っ」

霞「分かりました。説明するなら私達の宿泊先に来てもらった方が早いですね」

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 04:56:07.78 ID:VEcWE5NL0

永水女子の宿泊先

洋榎「おい、初美……」

初美「……」

洋榎「なんで寝とんねん……」

初美「……」

洋榎「目ェ覚ませや……なぁ!」

霞「触らないで!」

洋榎「っ!」

霞「今、初美に触れると貴方も魔に取り込まれてしまいますよ」

洋榎「魔……? なんやねんそれ、そんなオカルトあり得るかいな」

霞「でも事実なのよ。初美は本来なら貴方達姫松高校の選手が受けるはずだった魔性の気……」

霞「具体的に言うと宮永照や荒川憩と言った、向こう側の人間が放つ支配のオーラを代わりに引き受けていたのよ」

洋榎「なん、やて……?」

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 05:06:47.95 ID:VEcWE5NL0

霞「準決勝以降、貴方達姫松高校の選手は特にアクシデントに見舞われる事無く普段通りの実力を出せていたでしょう?」

洋榎「せやな……特に二回戦で大失点した恭子の調子は特に良かったわ」

霞「つまりそういう事よ。貴方達は初美のお陰で『普通の麻雀』をさせて貰えていたのよ」

洋榎「……で、その結果初美がこうなったんか」

霞「そうね。春や巴がいれば全員でお祓いも出来たのだけど……・」

小蒔「実家に戻ってやらないといけない事もあるので、二人は団体戦が終わった後すぐに帰ってしまいましたから……」

霞「私達二人では力不足なの。ごめんなさいね」

霞「でも安心して。初美ほどの力があればあと数日もすれば目を覚ますから」

洋榎「数日って……それやとインターハイ終わってまうやろ!」

霞「……」

小蒔「……・」

洋榎「何とか言ったらどうやねん!」

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 05:18:45.23 ID:VEcWE5NL0

霞「私や小蒔ちゃんはこういった邪気への抵抗力はあまりないの」

小蒔「悪い物を受け止めて結晶化して浄化する……これは悪石の巫女と呼ばれる初美ちゃんにしか出来ない事なんです」

洋榎「そうかそうかー。で、どうやったら初美を目を覚ますねん」

小蒔「それは……」

霞「……無いことはありません。悪化するようであれば私達も試してみるつもりでした」

洋榎「へぇ、言ってみいや」

霞「方法は単純です。初美が持っている邪気をこちらでも引き受ければ良いんです」

洋榎「つまりさっきアンタが触んなって言ったわけやけど触ればええって事やねんな?」

小蒔「いいえ、それではダメなんです。外へ漏れ出している邪気はすでに霧散する寸前のものなので意味が無いのです」

霞「だから……邪気が出てくる場所から入る場所へ取り込む」

霞「つまり、口づけを交わすのです」

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 05:26:49.22 ID:VEcWE5NL0

洋榎「……それって、もしかしてウチらから邪気を引き受けるためのきっかけにもなるんか?」

霞「そうですね……髪の毛などを触媒として繋がるのが一般的ではありますが」

小蒔「か、霞ちゃんっ。それ以上しゃべっちゃったら……」

洋榎「なるほどなぁ」

洋榎(それであの時いきなりキスなんかしてきたってわけかい……)

洋榎(準決勝や決勝でウチらが宮永姉妹や臨海の奴らと当たるんは分かったわけやからなぁ)

洋榎「石戸霞とか言うったっけな」

霞「はい」

洋榎「そこまで話したんやったら分かっとるやろうけど、止めんといてや」

霞「そうですね……でも、ここまで話してしまったのですから」

霞「ついでに初美が何故こんな事をしたのかも話しておかないといけませんね」

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 05:44:31.08 ID:VEcWE5NL0

霞「初美は、貴女に憧れていたのですよ」

洋榎「……」

小蒔「常に明るくて前向きで未来に向かって自分の決めた道へ前進あるのみ、そんな貴女がとても眩しいって言ってました」

霞「私達もその気持ちはよく分かります。姫様はもちろんの事ですが、私達も将来が約束されているような身ですから」

霞「自分の生きるべき道が決まっているのは、悩む必要がなくて羨ましいと思う人もいるかもしれません」

霞「でも、自分で決められないのもそれで辛い事なんですよ」

小蒔「だから、夢に向かって突き進む愛宕さんを、少しでも、手助け、出来ればって……」

霞「実力が叶わずして夢破れるのでしたらそれは仕方の無いことです。でも私達……」

霞「いえ、初美は貴女にはその力があると確信していました」

霞「でも、夢を叶える精神力も実力も兼ね備えた人でも向こう側の人間の手に掛かれば心を折られかねなかった」

霞「今年、阿知賀女子で監督をしていた赤土晴絵さんのようにね……」

霞「だから、彼女達に自分の力で対抗出来る力が身につくまでに潰れないように。そんな気持ちを胸に初美は今眠っています」

霞「それでも、貴女はやると言うのですか?」

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 05:54:56.97 ID:VEcWE5NL0

洋榎「そんなん……決まっとるやろ。やる」

小蒔「愛宕さん……!」

霞「そうですか……なら私はもう止めはしません」

小蒔「ま、待って下さい!」

洋榎「なんや、姫様は止めるって言うんか?」

小蒔(初美ちゃんの気持ちを考えたら……初美ちゃんはこんな事にだけはならないで欲しいって言っていたんです……!)

小蒔「は、初美ちゃんは一人で浄化するから任せて欲しいって言ってましたっ」

洋榎「だから?」

小蒔「えーとそのですね……それには大きな理由があるんですっ」

洋榎「ほぉ」

小蒔「初美ちゃんは……初美ちゃんは……まだファーストキスを済ませていません!」

小蒔「だからこんな形で眠っている間にとか、可哀想じゃないですかっ」

洋榎「……ぷっ。あはっ、あはは、あははははっ! 何を言い出すかと思えばそんなことかいな!」

小蒔「何を言っているんですか。女の子からすると大事な事なんですよっ」

小蒔「初美ちゃんが私達のを拒んだのもそれが理由なんですからねっ」

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 05:59:39.10 ID:VEcWE5NL0

洋榎「あーははは! ひぃ、笑いが止まらへん!」

小蒔「何がおかしいんですか! 私だっていい加減怒りますよ!」

洋榎「分かった、分かった。もう笑うんはやめる。代わりにエエ事教えたるわ」

小蒔「? 何ですか?」

洋榎「それはなぁ……」

初美『大丈夫、女の子同士はノーカンですよー』

洋榎「大丈夫、女の子同士はノーカンや」

小蒔「えっ」

洋榎「んっ……」チュ

小蒔「えええええっ!?」

霞「あらあら」

小蒔「あわわわ///」オロオロ

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 06:08:43.29 ID:VEcWE5NL0

洋榎(この前は不意打ちみたいな感じでよー分からんかったけど……)

洋榎(初美のくちびる、結構プルプルしとるんやなぁ……)

洋榎(ってこんな時に考える事ちゃうかな―――)

洋榎「っぐ!? ぐあ、うぁあああああああ!!!」

小蒔「愛宕さんっ!!」

霞「ダメ、今愛宕さんに触ると姫様も取り憑かれてしまうわ」

小蒔「でも!」

霞「信じましょう。あれだけの話を聞いてもこの道を選んだ愛宕さんの意志の力を」

小蒔「……」

洋榎(なんやねん、なんやねんこれ! こんなもんと初美は戦っとったんかい!)

洋榎(体の節々が痛い……このままバラバラになってしまいそうや……)

洋榎(いやいっそバラバラになってしまった方が、楽かも……)

初美『「去年の事は眼中に無しですか。常に前を見てるのは貴女らしいと思いますよー』

霞『初美は、貴女に憧れていたのですよ』

小蒔『常に明るくて前向きで未来に向かって自分の決めた道へ前進あるのみ、そんな貴女がとても眩しいって言ってました』

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 06:19:27.75 ID:VEcWE5NL0

洋榎(そうや、ウチはこんな所で諦めへんで……)

洋榎(ウチが諦めたら……初美の想いも……)

洋榎(初美が楽しみにしとった最後の個人戦もここで終わってまうやろ!)

洋榎「はつみいいいい!」

小蒔「愛宕さん! もうやめて下さいっ! これ以上は貴女が! 」

小蒔「後は私が、私が頑張りますから、もうっ……!」

洋榎(へへ、セカンドキスも頂きや……あ、これで三回目やったか)

洋榎(神代や石戸なんか渡してたまるかい……)

洋榎(これはウチらの……ウチのために夏を捨てる覚悟で頑張ってくれた初美へのウチからのお返しやねんからな)

洋榎(ああ、なんか意識が遠くなってきたな……)

洋榎(でも大分吸い取ったやろうしい、これで初美も……)バタン

小蒔「愛宕さん! 愛宕さあああん!!」

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 06:30:11.94 ID:VEcWE5NL0

そして、個人戦2日目

小蒔「……」

美穂子「……」

『まもなく、個人戦二日目の第一試合が始まります。選手の皆さんは所定の卓まで移動して下さい』

小蒔「……」

美穂子「もうすぐ始まってしまいますね。他の二人は来ないのでしょうか、どうしましょう」

小蒔「……」

ダダダッ! ダダダダッ!

洋榎「いやー遅れてスンマセン!」

初美「ギリギリセーフですかー? セーフですよねー!?」

「はい、姫松の愛宕洋榎選手に永水女子の薄墨初美さんね、ほら、あの空いてる卓ですから早く着席しなさいっ」

洋榎「ほいほい了解領海内でのホエールウォッチングやでー」

初美「意味分からないですよー。そういうの対局中はやめて下さいですよー?」

洋榎「あ、はい、スンマセン……」

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 06:40:13.39 ID:VEcWE5NL0

小蒔「良かった、本当に良かった……っ」

洋榎「いやー姫さんにも多大なご心配をお掛けしたようでごめんやで」

初美「姫様、あれだけしゃべっちゃダメって言ったじゃないですかー」

小蒔「ご、ごめんなさい」

洋榎「まーまー、結果オーライやしええやんええやん」

初美「そんな訳ですよー。……洋榎、体だるいですよねー?」

洋榎「え? い、いやー寝過ごしたんはただ単に夜更かししとっただけやでー?」

初美「だから嘘付いてるのバレバレなんですよー」

洋榎「」

初美「まあ良いですよ……ありがとうです」

洋榎「ん」

初美(おかげで楽しいにしていた個人戦に出られます。それに今日は洋榎と卓を囲めるなんて夢のようですよー)

初美(この日の思い出があれば巫女として生きる人生にも納得出来る気がするですよ)

美穂子「あ、あの、随分と仲がよろしいみたいですけど……お二人はどういった御関係なんですか?」

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 06:49:15.70 ID:VEcWE5NL0

洋榎「ウチと初美か? ええやろ、教えたるわ」

初美「よ、余計な事は言わないで下さいですよ?」

洋榎「ウチと初美はな……」耳打ち

美穂子「……えっ///やだっ、私には刺激が強すぎますっ///」

初美「何言ったですかー!?」

洋榎「さーなー?」

美穂子「///」

『そこの卓! 早く試合を開始しなさい!』

洋榎・初美「「」」

小蒔「あ、あのそういう事ですからそろそろ席に……ね?」

洋榎「お、おう。初美、ウチは負けへんでー」

初美「望むところですよー」

小蒔(愛宕洋榎さん……苗字からして火防の神である愛宕権現の加護があったのかもしれませんね)

小蒔(……いえ、そういう野暮な詮索はやめましょう)

小蒔(愛宕さんの初美ちゃんを思う気持ちが彼女を目覚めさせた。それでいいじゃないですか)

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/25(火) 06:57:42.21 ID:VEcWE5NL0

小蒔「私も負けませんよーっ。全力で当たらせて頂きます!」

初美「と言っても姫様は寝るだけなんですけどねー」

小蒔「そ、それは言わないでくださいー」

洋榎「泥酔拳ならぬ熟睡拳ってか?」ドヤ

初美「ぇー……」

洋榎「ガーン、ドン引きされた……」

美穂子「わ、私だって負けませんからねっ」

洋榎「気合入っとんな。その意気やで」

美穂子(勝って私も、上埜さんに……///)

初美「じゃあそろそろ始めるですよー。一日休んだ分もガッツリ稼がせて頂くですよー」

洋榎「ウチを相手にそう上手くいくかな? まあお互いベストを尽くそうや」

初美「勿論ですよー。それじゃあ」

洋榎「試合開始や!」

カン!

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