【照菫SS】照「感傷と幸福に満ちた部屋」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 02:45:39.53 ID:ewJ6NTCT0

照「あー……」

照「暑い…………」

ふと時計を見ると時刻は午後三時を少し回ったところだった。
起きたのが一時ごろだったからかれこれ二時間はベッドでうだうだ過ごしていたことになる。

照「まだ二十歳にもなってないのに……」

照「こんな過ごし方してちゃやばいなぁ……」

今日は久しぶりの休日である。
高校を卒業してプロ雀士になった私はリーグ戦やらイベント出演やらでそれなりに忙しい毎日を送っていた。

ごろんと一つ寝返りを打つ。
今年の春にようやくお母さんに買ってもらった携帯電話が転がっているのが目に入る。

照「だめ………」

照「我慢できないや………」

のっそりとした動作でそれを手に取り着信履歴の画面を開いた。
一番上に表示されている名前を迷わず押す。

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 02:47:04.29 ID:ewJ6NTCT0

菫『はい』

照「会いたい」

菫『前も言っただろ?』

菫『私は今試験期間中で忙しいんだ』

照「菫は私に会いたくないの?」

菫『そういう言い方はずるい』

照「今日会えなかったら明日のリーグ戦で負けちゃうかも」

菫『また心にもないことを』

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 02:48:54.49 ID:ewJ6NTCT0

照「………」

菫『………』

照「………」

菫『………はぁ』

菫『どうせ食料もほとんどないんだろ? 何か買って行こうか?』

照「いい………」

照「できるだけ早く来て……」

菫『分かった。今大学を出るところだからもう少し待ってろ』

ツー ツー

照「………やった」

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 02:51:58.85 ID:ewJ6NTCT0

菫と恋人になったのは高校の卒業式の日のことだった。
麻雀部の送別会を終えた後、私と菫は示し合わせたかのように部室に誰も居なくなるまで残っていた。
気持ちを伝えることは前々から決めてたから、その日は一日中緊張しっぱなしで過ごしてた。
それなのに、二人きりになった部室で菫と向かい合ったときその緊張が嘘みたいに解けた。
菫も同じ気持ちなんだって、菫の瞳を見ただけで分かったから。

照「………ふふ」

思い出すと気恥かしくて嬉しくて少し笑みがこぼれる。

高校を卒業した私はプロとして活動するために東京で一人暮らしすることになった。
私と咲が仲直りしたのをきっかけにお父さんとお母さんも復縁して、お母さんが長野に帰っちゃったから。
お母さんは最後まで私が一人になることを心配してたけど、菫が説得したらすごく安心したようだった。
『照のことは私に任せて下さい』、だって。

照「あのときの菫、かっこよかったなぁ………」

そういう菫は東京の大学に進学して、今は麻雀部にも入ってない。
大学の授業は別に忙しくないんだって、普段はほぼ毎日私の家に来てくれる。
一緒にご飯を食べたり、掃除してくれたり、寄り添ってテレビを観たり、
たまには恋人らしいこともしたり。まぁ、そんな毎日。
でも、さすがに試験期間中は勉強しなきゃいけないらしく最近はあまり会えてなかった。
もうすぐ菫に会えると思うと、それだけで満たされた気持ちになる。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 02:54:11.93 ID:ewJ6NTCT0

照「菫が来るまでもうちょっとかかるかな……」

照「それまでどうしよう……」

ベッドから半分身を乗り出し、テープルの上に置いてあったリモコンを何とか掴んでテレビの電源を入れる。
この時間帯に面白そうな番組なんてなかったけど暇つぶしぐらいにはなるだろう。

アナ「続いては、三日後から開催される全国高校生麻雀大会に関する話題です」

照「そうか……」

照「そういえばもうすぐだったね……」

三週間ほど前に咲に全国出場のお祝いの電話をしたことを思い出す。
咲は今でも携帯電話を持ってないからメールもできないし、忙しい私を気遣ってか咲から連絡してくることはほとんどない。
私も特に用事がなければわざわざ連絡するようなことはしない。
だからなのか、私が久しぶりに電話をすると咲がすっごく嬉しそうにしてるのがこっちまで伝わってくる。
あんなにはしゃがれると何だか照れ臭くなるから、咲と電話で話すのは正直ちょっとだけ苦手である。
そのことを咲に言うとあの子はどんな顔するんだろうって、ちょっぴり意地悪な気持ちになったりもする。
でも、もちろんそんな事はしない。絶対にしない。たぶん。

菫もこの前白糸台に激励に行ったって言ってったっけ。
私はその日は試合があったから行けなかったけど。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 02:56:32.70 ID:ewJ6NTCT0

照「あの夏からもう一年か………」

去年のインターハイは色んなことがあった。
団体戦で白糸台は清澄高校に負けて三連覇を逃した。
個人戦は何とか咲に勝って私はチャンピオンになった。
そして、私と咲は無事仲直りした。

結果から言えば、たったそれだけの話。
でも、その中にはいくつもの想いも涙もあった。
振り返ってみれば、懐かしくて、ほろ苦くて、甘酸っぱくて、楽しくて。
こういうのを青春の味っていうのかな。
なんて小っ恥ずかしいことをぼんやり考えてみる。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 02:59:50.11 ID:ewJ6NTCT0

ガチャッ

菫「ただいま」

照「おかえり、菫」

ちなみに、「ただいま」っていうのは私が菫に無理やり言わせてたりする。

菫「お前また玄関の鍵閉め忘れてたな」

菫「気をつけろって何度も言ってるだろ」

照「菫が来るから開けておいたんだよ」

菫「嘘つけ。私は合鍵があるからそんな必要ないし」

菫「その格好は起きてから一歩もベッドから動いてないのが丸分かりだ」

照「ごめん。今度から気をつける」

菫「何度も聞いたぞ、それ」

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:02:25.46 ID:ewJ6NTCT0

照「それより菫」ジー

菫「どうした?」

照「今日は何だかおしゃれだね」

菫「そ、そうか……」

菫が少し照れたような仕草をする。菫かわいい。

照「その服初めて見たけど買ったばかりなの?」

菫「ああ、私はこういうのには疎いから大学の友達に連れてってもらったんだ」

照「………ふーん、そうなんだ」

その服装は確かに菫によく似合っていて、いつもよりちょっぴり魅力的に見えた。
だけど、知らない誰かと一緒に買い物だなんて聞くと何だか素直には喜べなかった。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:04:57.73 ID:ewJ6NTCT0

菫「珍しいな、照がニュースを見てるなんて」

そんな私の乙女心を知ってか知らずか、菫は唐突に話題を変えた。

菫「社会人として一般常識ぐらいは知っておくべきだって気にでもなったのか?」

照「………いや、さっき何気なくテレビ点けたら」

照「たまたまインターハイのこと報道してたから………」

菫「そうか、もうそんな時期か……」

照「この前白糸台に行ったんでしょ?」

照「どうだった? みんなの様子」

菫「お前が抜けて去年に比べると戦力が落ちるのは仕方ないが良い感じだったぞ」

菫「去年は三年生が主体のチームが多かったからな」

菫「上手くいけば優勝も狙えるかもしれん」

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:07:32.10 ID:ewJ6NTCT0

照「………ねえ、菫?」

菫「ん?」

照「私はどっちを応援すればいいのかな……?」

菫「………」

すぐには返事は返ってこなかった。
菫が答えられるような質問じゃないのは分かり切っていたのに、もやもやしたこの気持ちをぶつけずにはいられなかった。

菫「清澄は竹井が抜けただけだからな」

菫「優勝候補筆頭なのは間違いない」

少し間を置いて、菫はわざとはぐらかしたような返答をした。

照「インターハイ、か………」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:10:12.18 ID:GcWOpxum0

そういえば照の中の人の誕生日か

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:10:33.27 ID:ewJ6NTCT0

目を瞑って、去年の夏に思いを馳せる。
団体戦決勝で、私たちは清澄高校に負けた。
偶然だったとは思わない。僅かだが確かに、彼女たちの力は私たちを上回っていた。
周りは三連覇がどうのこうの騒ぎ立てていたが、自分たちの実力は十分出し切ったし私はむしろ清々しい気分だった。
菫も同じように感じていたと思う。

でも、みんなは違った。
誠子も、淡も、普段はあまり感情を表に出さない尭深まで、子供みたいに泣きじゃくっていた。
泣きながら、私と菫に何度も何度も「ごめんなさい」って謝った。
いくら名門だ最強だと持て囃されようが、尭深も誠子も淡も初めてインターハイに出場する一選手に過ぎない。
それなのに、私たちの存在がみんなに余計な重圧を与えていたかと思うとすごく申し訳なくなって、
あの子たちの流す涙が私の胸をきゅっと締め付けた。

そして、個人戦の決勝で私は咲と対戦した。
ずっと捨てようとしていた過去の出来事が否が応でも思い出されて最初は集中できていなかった。
でも、そんなことは対局が進むにつれいつしか忘れていた。
今は全国の頂点を決める舞台で、咲はその一番の強敵だった。
団体戦で白糸台の優勝を阻んだ張本人で、私が倒すべき相手だった。
淡たちの涙を悲しみで終わらせない為に、みんなを勇気づけて少しでも来年に繋がる為に、
ここで私が咲に負けるわけにいかないって強く想った。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:14:14.28 ID:ewJ6NTCT0

照「菫は去年のみんなの涙を覚えてる………?」

菫「当たり前だろう、忘れられるものか………」

菫「照には悪いが私は全力で白糸台を応援するよ」

菫「あの涙が報われてほしいと願わずにはいられないから……」

照「………私だってもちろんそうだよ」

照「白糸台のみんなには全国優勝してほしい………」

照「でも………」

照「私以外の誰かに咲が負けるところも………やっぱり見たくないな………」

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:17:18.56 ID:ewJ6NTCT0

菫「どっちかにつく必要なんてないさ」

菫「私たちにはどうせ外から見届けることしかできないんだから」

照「………うん」

菫「でも、もし暇があれば白糸台にも顔を出してやれ」

菫「照の立場なんてみんな知ってる」

菫「それでも、お前の言葉はきっとあいつらにとって何より大きな励みになる」

菫「淡なんて特にな」

照「………うん」

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:19:57.56 ID:ewJ6NTCT0

菫は急に立ち上がると、ベランダのカーテンをシャッと開けた。
いつの間にか陽はすっかり傾いていて、窓から差し込む西日が菫の横顔をオレンジ色に染める。
それはすごく綺麗で、心臓の鼓動が少し高鳴るのを感じた。

菫「今日はやけにセンチメンタルじゃないか」

菫「それで私に電話してきたのか?」

照「………どうだろう」

照「インターハイのことを思い出したのは菫に電話した後だから」

照「ただ……無性に菫に会いたくなったんだ……」

菫「………」

照「忙しいのにごめんね」

照「………やっぱり迷惑だった?」

菫「いや、嬉しいよ」

菫「好きな人が自分のことを求めてくれてるんだから」

照「………」

頬がちょっぴり赤くなる。
菫の真っ直ぐな言葉はいつだって私の心を温かく包んでくれるようだった。

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:23:03.70 ID:ewJ6NTCT0

菫「起きてから何も食べてないんだろ?」

菫「何か作ろうか?」

照「………いい」

照「お腹は別にすいてないし」

照「それよりもこっちに来て………」

照「ぎゅっと、しててほしい………」

菫「……まだ陽も沈んでないぞ」

菫「この暑さじゃ汗だくになるし」

照「………大学のお友達と買った新しい服がしわになるのが嫌なの?」

菫「馬鹿なこと言うな」

そう言って菫は特に表情も変えず私の隣に腰を下ろした。
どこか優雅さを感じさせるゆったりとした仕草で横になり、私の体を優しく抱き寄せてくれた。

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:24:56.37 ID:ewJ6NTCT0

照「ん………」

菫「……妬いたのか?」

照「………だって、菫ってモテるんだもん」

菫「そんなの照だって同じだろ」

照「……私のはそんなんじゃない」

照「……好きっていうよりはファンって感じだし」

照「でも……菫は昔からいっぱい告白もされてた……」

菫「そう心配することはないさ」

菫「私と照の関係なんてみんな知ってるんだから」

菫「あの宮永照から略奪しようなんて奴はそうそういないだろ」

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:26:58.68 ID:ewJ6NTCT0

照「………そんなの分かんないよ」

照「………他人の心なんて分かんない」

菫「確かにそうだな」

菫「でも、私の心なら分かるだろ」

照「………」

菫「大丈夫。照から離れたりしないよ」

私を抱きしめる菫の腕の力が強くなる。
胸が少し苦しくなって、その苦しさがたまらなく愛おしくて、私は今幸せなんだと実感できた。
菫は私のもので、私は菫のものなんだって叫びたいような衝動に駆られる。

でも、菫の優しさに甘えているこの状況が正しいのかどうか不安になることもある。
私は前からずっと心に引っ掛かっていたことを菫に尋ねる。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:29:46.92 ID:ewJ6NTCT0

照「菫はどうして麻雀部に入らなかったの?」

菫「………」

照「私のお母さんに約束したから……?」

照「私のために時間を作ってくれてるの……?」

菫「わざわざそんな自分を卑下するような方向に考えるな」

菫「私が照と一緒にいたかっただけだ」

そう言うと菫は私の頭を撫でてくれた。
嘘も強がりも感じさせない、いつもと変わらない優しい手つき。

照「でも、麻雀に未練はなかったの……?」

菫「ないよ、それははっきり言える」

照「………」

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:31:55.99 ID:ewJ6NTCT0

菫「誰も彼もが燃え尽きるまでやり続けることが正しいなんて私は思わない」

菫「照の隣で麻雀をしていられたあの時間が私にとって何より最高の思い出だ」

照「………でも、最後の団体戦で負けちゃった」

菫「個人戦で照が勝ってくれたじゃないか」

照「………」

菫「あのときは詳しい事情を知らなかったからお前の様子がおかしくて最初は不安にもなったが、やっぱり照は照だった」

菫「白糸台みんなの期待を背負って戦う、相手が誰であろうと負けないいつもの照だった」

照「………」

菫「あの姿を最後に見届けられたんだ、麻雀に未練なんてないさ」

照「………やっぱり、私のせいで麻雀やめたんだ」

菫「ふふ、そうとも言えるかもしれないな」

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:33:49.04 ID:ewJ6NTCT0

照「………ねぇ?」

菫「ん?」

照「………私の試合、見ててくれてる?」

菫「もちろんだよ」

菫「家に居ても、インターハイの控え室に戻ったような不思議な感覚になってこそばゆくなる」

照「………頑張るから」

照「………誰にも負けないから」

照「………ずっと、私のこと見ててね」

菫「ああ、ずっと見守ってるよ」

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:35:15.15 ID:ewJ6NTCT0

長いこと抱き合ってたせいで、私も菫も汗で全身がすっかり濡れてしまっていた。
だけど、一人のときは不快でしかなかった汗とこのじっとりした空気が、
菫といると何故だか魅惑的なものに感じられて仕方なかった。

照「んー………」

菫「おい照、もぞもぞするな」

照「だって、もう我慢が………」

菫「先にシャワーを浴びさせろ」

照「………そんなの後でいいじゃん」

菫「だめだ」

菫「お前と違って私は朝から外を出歩いてたんだから」

菫「風呂の準備してくるから待ってろ」

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:37:10.02 ID:ewJ6NTCT0

照「………それじゃあお風呂は一緒に入ること」

菫「ここの風呂は狭いから好きじゃないって言ってるだろ」

照「………どうせくっついてるんだから広くても狭くても同じだよ」

菫「どうせ後でくっつくんだから風呂ぐらい別々でいいじゃないか」

照「………私はずっとくっついてたいの」

菫「私は、その、あれだ」

菫「一人でちょっとどきどきしながら待ってるほうが好きなんだ」

照「何それかわいい」

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:38:24.49 ID:ewJ6NTCT0

照「私がシャワー浴びてる間にそんなこと考えてたんだ」

照「………菫のえっち」

菫「うるさい」

照「でも今日はだめ」

照「さもないと今から襲う」

菫「はぁ………」

菫「分かったから大人しく待ってろ」

照「………うん、待ってる」

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/23(土) 03:40:25.37 ID:ewJ6NTCT0

それから私たちはいつも通りの時間を過ごす。
一緒にお風呂に入って、そのままベッドで抱き合って、菫が作ってくれたご飯を食べて、もたれ合ってテレビを観た。
そして、明日も試験があるからって少し早めに菫は帰っていった。

静寂を取り戻した部屋で、私は何もすることがなかったので目覚ましをセットして部屋の明かりを消した。
菫の匂いが残ったシーツに顔をうずめて、今日何度目になるか分からない幸せを感じる。
眠気は全然なかったし暑いのも相変わらずだったけど、私はただひたすらその幸福感に浸っていた。

明日の朝になればまたせわしない戦いの日々が始まる。
だけど、そんな毎日にふと訪れる今日みたいな一日が、勝負の世界に生き続ける勇気と気力を私に与えてくれるようだった。

瞼がだんだん重くなってくるのを感じる。
感傷と幸福に満ちたこの部屋で、今日も私は深い眠りに落ちていった。

カン

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