【阿知賀SS】憧「シズが冷たい」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 01:57:35.85 ID:RjINKGXO0

憧「しーず!」

穏乃「」

憧「ねえ、シズったら!」

穏乃「」

憧「返事しないとキスしちゃうよん。なんてなー」

穏乃「」

憧「シズ……、お願いだから返事、して、よ……」

宥「憧ちゃん……」

玄「ねえ憧ちゃん。穏乃ちゃんはもう……」

憧「嘘! そんなの信じない!」

灼(こんなの辛すぎて、見てられないよ……)

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:00:33.76 ID:TIgowLFG0

大畜生咲にやられたか

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:02:32.06 ID:RjINKGXO0

憧「……」

灼「少しは落ち着いた……?」

憧「うん……。ごめん皆、あたし、冷静じゃなかった」

玄「仕方ないよ……。私だって、今でも頭が混乱して、上手く言えないんだけど、なんだか……」

憧「謝りついでに、3人にお願いしてもいいかな」

宥「お願い?」

憧「少しの間でいいから、シズと二人きりにして欲しいの」

灼「分かった……。行こう」

玄「うん……」

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:08:15.12 ID:RjINKGXO0

憧「2人っきりだね」

穏乃「」

憧「あんまガラじゃ、ないんだけどさ」

憧「久々に思い出話でもしてみよっか」

憧「……うん。何から話そうね」

憧「小さい頃は……、あたし達よく、走り回ってたっけ」

憧「シズったら、体力馬鹿でさ!」

憧「なっかなか足が止まらないから、結局毎日、日が暮れるまでずっと遊びまわってたね」

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:10:07.15 ID:gH7rCiX40

ドッキリおちなんだろ
そうに決まってる

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:13:31.23 ID:g67ou+7B0

宮永姉妹との試合なら死人がでても仕方ないね

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:14:26.85 ID:RjINKGXO0

憧「あー」

憧「今にして思えば、あたしたちの遊びってヒドくない?」

憧「こうなんていうの? 女の子らしさっていうのかな?」

憧「その手のものの欠片もないというか」

憧「いくら田舎っ子とはいえもうちょい何か可愛らしい遊びもあったでしょうよー!」

憧「それというのもシズが悪いんだからね。うんうん」

憧「あたしがおままごとみたいな遊びに誘っても、走ってる方が楽しいもんとか言って突っぱねてさ!」

憧「でも……、覚えてるよ」

憧「1回だけ。1回だけだけど」

憧「あたしのワガママに付き合って、おままごとしてくれたことがあったよね」

憧「……シズはもう忘れてそうだけど、さ」

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:22:35.34 ID:RjINKGXO0

憧「あたしがお母さん役。シズがお父さん役」

憧「偶然居合わせた玄には娘役を押し付けちゃったっけ。あっはは」

憧「その配役に他意があった訳では、勿論無いけれど……」

憧「このおままごとが、自分の気持ちに気付いたキッカケだったのは、確かかな」

憧「だから何年たっても忘れられないんだ」

憧「え? どんな気持ちに気付いたキッカケかって?」

憧「さあー。それは秘密!」

憧「手の内を全て出し切った女は魅力半減、とはお姉ちゃんの受け売りでね」

憧「ま……」

憧「そうやって気持ちを出し惜しみしたのは大きな後悔なんだけどさ」

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:25:21.87 ID:RjINKGXO0

憧「……」

憧「うっ、ぐすっ、うあああぁ……」

憧「なんで、どうしてあんた……!」

憧「シズ……、シズ……」

憧「……ぐすっ」

憧「……」

憧「……」

憧「ごめん。落ち着いた」

憧「続けるよ?」

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:28:40.88 ID:UZlm1gP30

穏-saru- 阿知賀編 episode of side 葬式

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:33:02.94 ID:RjINKGXO0

憧「小5の頃までは大して代わり映えしない毎日だったよね」

憧「あたしも、淡い恋心を抱きつつも、そんな日々が心地よくて……」

憧「って、さっきボカしたばかりなのに、つい恋心とか言っちったよ。うはー」

憧「まあ今さらだよね……」

憧「それでね」

憧「このままなんとなくシズと一緒に成長して、なんとなく一緒に大人になって」

憧「なんとなく一緒に年をとって、なんとなく一緒にお婆ちゃんになってさ」

憧「こう、あれだ」

憧「軒先で煎餅でも齧りながら、近所の誰かも誘って一緒に麻雀したり」

憧「そんな人生をあたしは送るのかなーって、漠然と考えていた」

憧「そう、考えていたんだけど……」

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:42:28.49 ID:RjINKGXO0

憧「小学校も高学年になって、あたしの人生ビジョンを大きく変える2つのできごとがあったんだよね」

憧「1つ目は、和の転入」

憧「2つ目は、保健の授業」

憧「シズには内緒にしてたから分かんなかったと思うけどさ」

憧「これらが当時のあたしにはバリッバリ刺激でねー」

憧「もうこの際だし当時の正直な本音を――」

玄「あのー。憧ちゃん、1人で大丈夫……?」

憧「ん、あ……、玄?」

憧「玄達には心配かけちゃってるよね」

玄「ううん! そんなことないよ!」

憧「でもごめん。もう少しだけ待ってくれる?」

玄「うん、分かった。……失礼しましたー」

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 02:55:34.00 ID:RjINKGXO0

玄「松実玄、ただいま帰還いたしましたー!」

灼「憧、どうだった?」

玄「さっきよりは落ち着いてたけど、まだ話したりなさそうだったよ」

宥「……」

玄「仕方ないよね。あの2人、中学時代以外はいっつも一緒の仲良しだったから……」

宥「玄ちゃん、えらいえらい」

玄「へ? やだなーお姉ちゃん、いきなり何を」

宥「憧ちゃんの前では泣くのを我慢したんだよね」

玄「……」

玄「だって、きっと私の何倍も、憧ちゃんは辛いから」

宥「玄ちゃんは優しいね」

宥「だけどもう我慢しなくていいんだよ」

玄「私……、うっ、ひっく、ひっく……、お姉ちゃぁぁん……」

宥「よしよし」

灼「……」

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 03:11:01.97 ID:9a8EmVXa0

親友を思いやる玄ちゃんはドラゴンの鑑

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 03:13:08.70 ID:RjINKGXO0

憧「和って凄いよね」

憧「何が凄いって、玄みたいに特別な体質でも無いのに麻雀が凄く強いんだ」

憧「身近な強い打ち手としてはハルエもいたけど、あれは大きく年上だしさ」

憧「ガチで格上だって思った、初めての身近な同年代かな、和は」

憧「そんで、密かにあたしは和に刺激されていたわけですよ」

憧「内輪で育んだ狭い視野をいきないり外からブチ壊した傑物」

憧「それがあたしの中の和」

憧「正直、純粋に凄いなって思ってる」

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 03:19:05.22 ID:RjINKGXO0

憧「それと……、ああ、保健の授業」

憧「ま、ぶっちゃけありがちな話だよねー」

憧「キスでもしたら子供ができるのかなー、なんてファンシーなこと思ってた小学生が、現実知ってさ」

憧「ああ。あたしもそんなに風に生まれたんだな、って」

憧「んでも、あたしはそこで普通の子以上のショックを受けたのよ」

憧「なんでって?」

憧「そりゃ好きな相手がシズだったからだよ」

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 03:20:29.92 ID:RjINKGXO0

憧「今までは、なんとなーく、女の子同士でもずっとずっと一緒にいられるのかなって思ってたのに」

憧「シズとじゃ一生を共にすることはできないんだってこと、はっきりと学問的に理解させられて」

憧「じゃあ何? 女のことを好きなあたしは欠陥人間なの?」

憧「本気でそんなこと考えたよ……」

憧「だからシズと違う学校行ったのは、麻雀を張り切るためだけではなく」

憧「シズへの気持ちに整理をつけるためでもあったのよ」

憧「でも……、失敗だったのかな」

憧「シズと同じ学校に行って、もっとシズと時間を共有していれば」

憧「もしかしたらあたし、早くに決心できて」

憧「ひょっとしたら間に合ったのかも……」

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 03:32:35.23 ID:RjINKGXO0

憧「1つ、謝らなきゃならないことがある」

憧「中学の時に1度だけ、遠目にあたしに手を振ってくれたシズを無視した」

憧「その時は、ジャージで外を出歩くような子と友達だって思われるのが、嫌だったから」

憧「……」

憧「ごめん。本当に最低だったと思ってる」

憧「少し寂しそうなシズの顔は今でも脳裏にこびりついてるんだ」

憧「その日は家に帰ってから、罪悪感で泣いて」

憧「えーっと、その……」

憧「シズの昔の写真を見ながら、妄想を膨らませて……」

憧「初めての……、アレを、したよ」

憧「なんだろう……」

憧「シズをまだ思ってるんだって自分に言い聞かせることで、罪悪感を紛らわせたかったのかな……」

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 03:41:32.59 ID:RjINKGXO0

灼「……」

灼「……2人に、聞きたいことがあるんだけど」

玄「んー?」

灼「もしも、大切な人と自分のどちらかを……」

宥「どちらかを?」

灼「……」

灼「ごめん。なんでもない」

玄「??」

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 06:09:58.05 ID:RjINKGXO0

憧「シズ。大好きだよ、シズ」

憧「シズ……」

憧「シズ……」

憧「……」

憧「全国大会でさ」

憧「阿知賀がボロ負けしてさ」

憧「皆へこんでんのに、シズだけ空元気で……」

憧「あの日の夜」

憧「シズ、1人になりたいとか言って、夜中にどこかへ抜けてったじゃん」

憧「ああ、誰にも見られない場所で泣きたいのかなって、シズの気持ちを尊重してあたしは部屋に残ったけど」

憧「今思えば無理にでもついていくべきだった」

憧「だってきっと、あの時だよね……?」

憧「シズが他県の子と、」

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 06:12:03.04 ID:RjINKGXO0

憧「いっそ相手が男ならまだ良かったんだ」

憧「相手が男なら、はじめっから叶わない恋だったって割り切れた」

憧「でも、よりによって……」

憧「どうして女と……、シズ」

憧「だからあたしは……」

憧「……」

憧「……」

憧「いやいや、この後の行動は自分でも頭おかしかったと思うわ」

憧「どんだけあたしは自己中なんだって話」

憧「だけどシズの事になると……、気持ちが先走る」

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 06:15:24.08 ID:RjINKGXO0

『シズ。このコンビニの袋の中に、2つのジュース缶があります』

『どれどれ。……って、どっちも同じ種類じゃん』

『そう見えるでしょ。しかし実はこちらの、横向きに倒れている缶にだけ、毒が入っています』

『こっちに毒が?』

『うん。マジで毒が入ってる』

『はあ? 何言ってんの?』

『真剣な話だから』

『いやいやいや!』

『さあシズ。あたしとシズに、これらのジュースを1本ずつ配らなきゃならないとします』

『ええー』

『シズなら、どちらにどちらの缶を配りますか?』

『憧に毒飲ませるぐらいなら自分が飲むよ』

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 06:16:22.33 ID:RjINKGXO0

憧「白状すると……」

憧「実はあの時、あたしはシズに事実と反対のことを教えていた」

憧「毒入りの缶を、毒無し」

憧「そして毒無しの缶を毒入りと偽っていたんだ」

憧「てなわけで、晴れて毒入りの缶が回ってきたのは、あたしの手元」

憧「結果的にあたしは服毒自殺へ挑戦することになった」

憧「あ」

憧「一応言い訳しておくと、端からあんたに毒を飲ませるつもりはなかったよ」

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 06:18:40.09 ID:RjINKGXO0

憧「実際にそうなったパターン通り、毒入り缶があたしの手元に回ってくるならば、それでよし」

憧「だけどもし、シズの方に毒がいきそうになったら……」

憧「そんときゃ適当に話を有耶無耶にして誤魔化す予定だった」

憧「そのー、なんていうのー?」

憧「どうせシズがあたしのものにならないなら、シズが酷い奴でいてくれた方が、まだ気楽でさ」

憧「裏を返せば、あんたが優しければ優しいほど、あたしにとっては辛いから……」

憧「だからこそ」

憧「シズがあたしでなく、自分自身の方に毒を回す選択をする」

憧「そんな風に、あたしに優しさを見せてくれた時にだけ、自殺できるような仕掛けにしておいたんだ」

憧「それとね」

憧「こんなに周りくどい手段を選んだ理由が、更にもう1つ」

憧「つーかこっちがメインの理由なんだけどさ」

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 06:21:16.10 ID:RjINKGXO0

憧「あたしはシズの目の前で死ぬことで、あの女よりも鮮烈に、シズの中に居続けたかった」

憧「シズの心を自分で独占したかったんだ」

憧「そのためにも――」

憧「“自分がこちらの缶を選んだせいで、憧が死んだ”」

憧「そんな、きっとシズがあたしの死に対して抱くであろう罪悪感」

憧「それを死の印象づけに利用する考えがあった」

憧「我ながら悪趣味だよね」

憧「……なのにどうして、シズが死んで、あたしが助かって、なんて展開を迎えちゃうかね」

74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 06:22:42.36 ID:RjINKGXO0

憧「昔っから落ち着きが無いとは思ってたけどさ」

憧「素直に救急車を呼べばいいものを」

憧「倒れたあたしを助けるために、走って病院を探しに行くなんて」

憧「そんで、車にぶつかっちゃうなんて……」

憧「しかも肝心のあたしは、無意識の内に毒を嘔吐して死にきれずに」

憧「訳わかんないよ」

憧「こんなの想定してなかったよ」

憧「あたしが死んでそれで終わりか、両方生き残るか」

憧「そのどちらかだと思っていたのに……」

憧「これじゃあ、あたし……、ただシズを死なせただけじゃない……」

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 06:24:03.55 ID:RjINKGXO0

憧「ごめん。シズ」

憧「ごめん、ごめん、ごめん」

憧「でも安心して」

憧「シズを1人にはしないからね」

憧「ほら。警察に見つからなかったのが1包み残ってたんだ」

憧「大丈夫、今度こそ平気だから」

憧「……」

憧「最後にもう1度だけ、キスしてもいいかな」

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 06:25:27.62 ID:RjINKGXO0

玄「お姉ちゃん、灼ちゃん」

宥「うん……」

玄「私には本当にどうしようもなかったのかな……?」

灼「どうかな。よく、わからないよ」

玄「そっか……」

灼「ただ……」

玄「ただ?」

灼「憧の寝顔は、私には安らかに見える」

宥「……うん。そうだね」

玄「おやすみなさい、憧ちゃん、穏乃ちゃん」

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/13(金) 06:26:18.19 ID:RjINKGXO0

『わん、わんわん!』

『くーろ。玄はペット役じゃなくて娘役だったでしょ』

『おっとそうでした! 失敬!』

『ねえ憧ー。私はいつ出ていけばいいの?』

『あ、ごめんごめん。もういいよ!』

『おっけ。じゃ、気を取り直しまして……、ただいま、憧』

『おかえりなさい、あなたー! ちゅっ!』

『ちょっと憧!?』

『ファーストキスげっとー!』

おわり

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