1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 21:35:11.46 ID:FhSwXx2o0
ー個室居酒屋ー
菫「久しぶりだな、照」
照「ん。久しぶり」
菫「突然誘って悪いな」
照「ううん。会えて嬉しいよ」
菫「ははは。全然そんな顔じゃないぞ」
照「え?本当にそう思ってるよ」
菫「相変わらず、愛想がないな…」
照「無理に笑うのは疲れるの」
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 21:38:26.50 ID:FhSwXx2o0
菫「よく言うよ。昔からカメラの前じゃ完璧な愛想のよさだっただろ」
照「私のことをよく知らない人には、あのくらい分かりやすくしないと伝わらない」
照「菫は、そんなことをしなくても分かるでしょ?」
菫「ははは。それは喜んでいいのか?…とりあえず、なにか頼もう」
照「あー…じゃあ烏龍茶で」
菫「なんだ、飲まないのか」
照「あんまりお酒、強くなくて」
菫「そうか。まぁ、気がのってきたら遠慮するなよ。すみませーん」
照「うん」
店員「はーい!」
菫「生と烏龍茶、1つずつ。あと、枝豆と焼き鳥も」
店員「はい、よろこんで!」
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 21:42:54.18 ID:FhSwXx2o0
照「…手馴れてるね」
菫「え?なにが」
照「注文が」
菫「いや、普通だろ」
照「そうなの?私だったら噛みそう」
菫「頼りないな…ファンが知ったらがっかりするぞ」
照「…バレないようにする」
菫「しかし、すごいよな。こないだ、お前の笑顔が張り付いた電車が走ってたぞ。ここじゃこんなに無愛想なのに」
照「もう、その話はいいって」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 21:47:47.97 ID:FhSwXx2o0
菫「いや、本当にすごいよ。トッププロだもんな」
照「菫だって、なれるよ」
菫「馬鹿言え」
照「菫だって、三年間一緒にインハイを戦ったでしょ?」
菫「学生時代に多少いい成績を残したって、プロになれるのはほんの人握りだよ」
照「そうかな?」
菫「そうだよ」
照「……」
菫「……」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 21:51:28.39 ID:FhSwXx2o0
店員「おまたせいたしましたー!生のお客様ー!」
菫「あぁ、私だ」
店員「こちら、烏龍茶と枝豆と焼き鳥になります。ごゆっくりどうぞー!」
照「あ、美味しそうだね」
菫「よし。じゃあ、乾杯でもしとくか」
照「なにに?」
菫「旧友との再会に、とか」
照「…そうだね」
菫「それじゃ、乾杯」カツン
照「乾杯」カツン
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 21:55:08.30 ID:FhSwXx2o0
菫「んぐんぐ…ぷはぁー!そういや、淡はどうしてるんだ?」
照「あーなんか今は、海外の大会を荒らしてるとかって噂を聞いたけど」
菫「全く、あいつは…」ヤレヤレ
照「淡らしいけどね」
菫「プロになった当初は、お前より注目を浴びてたのにな」
照「私より、有名なとこに入ったからね」
菫「お前が随分地味なところに収まったってのもあったが…」
照「淡はやることが派手なんだよ。大きいところに入って、大きい成績残して…」
菫「すぐやめた…な」
照「まあ、あそこは厳しいしね。高校では好き勝手やってた淡には合わなかったんじゃない?」
菫「お前も、それが嫌で、地方の小さなチームに入ったのか?」
照「私はそういうわけじゃ、ないけど」
菫「ふーん…」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:00:17.15 ID:FhSwXx2o0
照「まぁ、淡が楽しそうなら私はいいと思うけど」
菫「今はいいだろうが、この先どうするんだあいつは…」
照「さぁ?ふらっとまた戻ってくるんじゃない?」
菫「いい加減なやつめ」
照「それでも許されちゃうんだよ。淡には、そういう魅力がある」
菫「…羨ましい話だ」
照「菫は、そういうことができないところがいいんだよ」
菫「照は、どっちも上手く持ち上げるな」
照「そんなんじゃないって…」
菫「分かってるよ」
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:05:13.83 ID:FhSwXx2o0
照「もう…。尭深や誠子はどうしてるの?菫はなにか知ってる?」
菫「尭深…は、こないだ手紙がきたぞ」
菫「今は、実家で農家を継いでるらしい」
照「農家!すごいね」
菫「ハーベストタイム(肉体労働)って書いてあったよ」
照「ふふ。想像できないね…」
菫「お世話になったので、と箱いっぱいに野菜や果物も送ってきた。美味かったなぁ」
照「なにそれ、菫ばっかずるい」
菫「お前にお世話になった覚えはない、ってことじゃないか」
照「尭深…そんな薄情な後輩だったの…」
菫「冗談だよ。気を遣ってるじゃないか?」
照「え、なにに?」
菫「なんていうか、照はちょっと近寄り難い雰囲気だったからなぁ…」
照「え、そんなつもりは…」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:05:46.36 ID:DBdUZYqc0
あのおっぱいで農家とか妄想が捗るな
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:08:22.73 ID:FhSwXx2o0
菫「分かってるさ。今度言っとくよ。照にも送ってやれって」
照「それじゃ私が、催促してるみたい」
菫「だってそうだろ?」
照「違う。手紙とか、そういうのが羨ましいな…って」
菫「そうだ!手紙と言えば今朝、誠子からもきてたんだ!」
照「え」
菫「なんでも誠子、結婚するらしいぞ」
照「!!」
菫「驚きだよな」
照「…うん」
菫「おめでた婚だとか…お子さんももうすぐ産まれるらしい」
照「へぇ」
菫「…私たちも、そんな歳になったんだな」
照「そうだね」
菫「……」ゴクッ
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:11:38.14 ID:TtmfUaFS0
漁師と結婚でもしたのか
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:12:05.02 ID:FhSwXx2o0
照「…菫は?」
菫「は?」
照「菫は結婚とかの予定、ないの?」
菫「っ!」
照「……」
菫「…あいにく、全然縁がないんだ」ゴクッ
照「そうなの?菫は、しっかりしてるし美人だから、いくらでも相手がいそうだけど」
菫「そういうことだけじゃないんだよ。結婚っていうのは」
照「?…そう」
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:14:57.44 ID:FhSwXx2o0
菫「…照は?」
照「私は、ないよ」
菫「…そうか」
照「うん」
菫「まぁ、忙しそうだしなぁ」
照「そうでもないよ」
菫「……」
照「……」
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:17:17.92 ID:FhSwXx2o0
菫「…なぁ照?」
照「なに?」
菫「お前の照魔鏡って、麻雀のことしか見えないのか?」
照「そうだよ。どうして?」
菫「…ずっと、不安だったんだよ」
照「なにが?」
菫「お前が、私のなにもかもを見透かしてるんじゃないかって」
照「……」
菫「…あのさ、私は同性しか好きになれないんだ」
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:19:54.08 ID:FhSwXx2o0
照「え」
菫「…本当に驚いたって顔だな」
照「うん。今、驚いてる」
菫「…そうか」
菫「はぁーっ、ヒヤヒヤしてた高校時代が馬鹿らしいな…」
照「う、うん」
菫「…で、どう思う?」
照「どうって…?」
菫「なんでもいいよ。気持ち悪いでも、そんなのおかしい、でも」
照「そんなこと、思うわけ無いよ」
菫「そ、そうだな」
菫「お前は、そんなこと言う奴じゃないよな…」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:20:37.87 ID:DBdUZYqc0
やっぱりレズか
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:23:06.73 ID:FhSwXx2o0
照「ただ…」
菫「ただ?」
照「…つらいだろうなって思う」
菫「?」
照「菫の気持ちは、菫にとって、自然なことなんでしょ?」
菫「…あぁ」
照「だったらそれは、他の人と変わらない恋なんだと思う」
菫「……」
照「でも、菫は自分のことをおかしいと思ってる」
照「恋愛の悩みって誰にでもあると思うけど、菫は、余計なものまで抱え込んでいるんじゃない?」
照「世間が、菫の周りが、そうさせているのなら、それは悲しいことだと思う」
菫「照…」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:24:21.32 ID:DBdUZYqc0
付き合っちゃえよ
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:28:25.29 ID:FhSwXx2o0
照「だって今、このことを私に話すのだって躊躇したでしょ?」
菫「…そうだな」
照「そんな思いを、今まで何度もしてきたんだろうなって考えると」
照「つらかっただろうな、って思うよ」
菫「……」
照「ごめんね、急だったから、上手く言えてないね」
菫「…いや、充分だよ」
照「そう?」
菫「すごいな、お前は。やっぱりその照魔鏡で、全てを見透かしてるんじゃないかって思う」
照「そんなことないって…」
菫「…ありがとな」
照「…うん」
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:32:29.80 ID:FhSwXx2o0
菫「っしかし、なんで話しちゃったんだ?私は」
照「酔ってるんじゃない?」
菫「まさか、一杯で?」
照「私は一口でも、酔うよ」
菫「嘘だろ?試しに飲んでみてくれよ」
照「え、いいよ…」
菫「いいから」
照「うーん…じゃあ、一口だけ」コクッ
菫「…どうだ?」
照「別に…」
菫「なーんだ」
照「なんだ、って…」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:36:39.16 ID:FhSwXx2o0
菫「ま、そりゃそうか」
照「ちょ、私が話を大きく言ったみたいじゃ…」
菫「まぁ照だって大人だ。多少話くらい膨らますよな?」
照「だからやめてってー」
菫「ははは。お前の周りの人は、こんな軽口言わないだろ?」
照「うーん。それはまぁ…」
菫「…なぁ照。今、好きな人はいないのか?」
照「だから、言ったじゃない。全然だって」
菫「好きと結婚は違うよ」
照「…でも、いないよ」
菫「ならさ」
照「何?」
菫「!…ごめん。ペース早かったのかな。お手洗いに行ってくる」
照「あぁ、いってらっしゃい」
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:40:48.34 ID:FhSwXx2o0
ートイレ個室ー
菫「…さっき、なんて言おうとした?」
菫「ならさ」
菫「…ならさ、私と付き合わないか?」
菫「いや、お前が私をそういう目で見てないのは分かってるよ」
菫「でも相性いいと思うんだ私たち」
菫「私は、ずっと照のことが好きだから、いつかお前が私を見てくれればいい」
菫「それまでの、お試しでさ」
菫「…バカみたいだな。高校のときに考えた告白だろ」
菫「…本当に、酔ってるのかもな」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:44:02.50 ID:FhSwXx2o0
照「あ、おかえり」
菫「あぁ」
照「菫…さっきの話なんだけど」
菫「えっ!?あ、あぁ、それはもういいんだ。たいした話じゃないし」
照「好きな人が、って話」
菫「…え?」
照「ごめんね。嘘ついた」
菫「え、なにが」
照「ずっと、好きな人が、いるんだ」
照「言うつもり、なかったんだけど。菫が言ってくれたから」
菫「え…」
照「それとも、酔いがまわってきたのかな…」
菫「……」
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:45:29.25 ID:FhSwXx2o0
照「あのね」
菫「あぁ」ゴクリ
照「私、妹のことが…咲のことが、好きなの」
菫「…は?」
照「いつから、好きなのかは分からない。ずっと昔からかもしれないし、ここ数年かもしれない」
照「でも今は確実に、咲のことが好き」
菫「…それは、恋愛感情で?」
照「うん」
菫「家族愛の延長かも、しれないだろ?」
照「それはないよ」
菫「どうして?」
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:47:04.26 ID:FhSwXx2o0
照「私、咲と一緒にお風呂に入れない」
菫「はぁ…」
照「夢を見たの。私も咲も裸だった。すごく幸福で、でも切ない夢」
照「そのことを思い出すから、咲の裸を今までみたいには見れない」
照「これはもう、家族愛じゃないでしょ?」
菫「……」
照「自覚したら、もう咲の全てが愛おしくて咲以外のことは考えられなくなって」
照「大きなチームに入らなかったのは、咲と離れたくなかったから」
照「それでよかったと思ってる」
照「咲は、いつか私から離れてしまうかもしれないけど、それでも…」
菫「…おかしいだろ」
照「…菫?」
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:49:00.99 ID:FhSwXx2o0
菫「おかしいだろ!そんなの…」
菫「実の妹が、好きだなんて、そんなの絶対かえってこないにきまってるのに…」
照「……」
菫「お前は有名人で、そんなことが知れたら世間が許さないに決まってる」
菫「お前の気持ちはきっと自分も、妹も苦しめる…」
菫「お前にはもっと、普通で、まっとうで、幸せな…」
照「…分かってるよ」
菫「分かってない」
照「…分かってるの。私も、菫も」
菫「……」
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:51:12.44 ID:FhSwXx2o0
照「このつらさは同じでしょ?」
菫「あ…」
照「…やっぱり酔ったのかもしれない。今日はもう、帰るね」
菫「て、照…ごめん!」
照「じゃあ」
菫「ま、待って」
照「…なに?」
菫「…また飲もうな」
照「…うん」ニコッ
菫「あ…」
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/11/22(金) 22:52:31.22 ID:FhSwXx2o0
パタン
菫「……」
菫「なつかしい笑顔だな」
菫「いや、ついこないだも見たか」
菫「…照」
菫「全然、同じじゃない。私とお前は、違いすぎる」
カン