【国広一SS】透華「わたくし達の麻雀部をつくりますわ!!」

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:14:59.76 ID:VFAIP3/6P

コンコン
透華父「どうぞ」
ガチャリ
一「失礼します。旦那様、コーヒーのお替りをお持ちしました」

透華父「ご苦労。君が我が家にきて2週間か、そろそろこちらの生活にも慣れてきたかな?」

一「はい。皆さんが丁寧にご指導してくださいますので」

透華父「特に衣の相手をするのは、なかなか骨が折れるだろう」

透華父「間近で見た印象を聞かせてもらえるか?」

一「ボ・・私には及びもつかない大きな力を秘めた方です」

一「ただ、その力の持っていく場を持て余しているようにも思えます」

透華父「ふむ、それでは衣の側で透華の様子は・・・どうであったかな?」

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:17:24.67 ID:VFAIP3/6P

一「透華お嬢様・・・ですか?いつも通りハツラツとされていましたが」

一「何か気になることがおありでしょうか?」

透華父「そうか・・・ならば良い」

透華父「交友関係も含めて衣の面倒を見ると、張り切ってはいるがな」

透華父「あれも同年代の親しい友人は今まで、それほどいなかったのだ」

透華父「我が娘ながら、随分と個性的に育ってしまったのでな。周囲が気後れしてしまう」

透華父「だが最近の透華は実に楽しそうだ。おそらく君のおかげでもあるのだろう」

透華父「・・・詮ないことを言った。国広君、これからも二人のことをよろしくお願いする」ペッコリン

一「・・・!はい、微力を尽くさせていただきます」

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:21:31.66 ID:VFAIP3/6P

一(・・・とは言ってみたものの・・・)

衣「わーい、また衣の勝ちだー」

一「ボ、ボクがカードで負けた・・・」

一(この状況は、流石に受け止め難いー)

一(少しだけ残ってた自信まで丸ごと無くなっちゃいそうだよ!)

衣「然にあらず。それ程卑下することはないぞ」

衣「トーカ以外で衣とこんなに渡り合った玩具(オモチャ)は初めてだ」

一(オ、玩具って・・・。悪気はないんだろうなあ・・・)

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:23:44.54 ID:uAg97df70

麻雀以外も強いのかころたん

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:24:38.37 ID:p2bIz8xS0

ババ抜きで表情に出そう

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:25:06.98 ID:VFAIP3/6P

コンコン
透華「入りますわよ、衣」 ガチャッ

透華「・・・あらあら、また随分と派手にやられていますわね」

一「ううっ、面目次第もございません・・・」

透華「では何かまたペナルティを考えなければいけませんわね~」ニヤニヤ

一(これ以上手錠の鎖が短くなったりとかしたら困るなー)

一(普段の仕事に支障が出ないようなものに、なんとかお願いしてみないと・・・)

透華「コホン。それでは・・・」

一「・・・」ゴクッ

透華「お父様のいないところでは、敬語禁止!」ビシッ!

一「・・・・・・へ?」
こうしてボクは、透華付きのメイドになったのだった。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:29:08.81 ID:VFAIP3/6P

―――――

――――――――――
一「透華ー、お茶が入ったよ・・・って、さっきからずっとパソコンのモニターを睨んで、何を見てるの?」

透華「・・・優秀な打ち手が必要ですわ」

一「ああ、前に何度か言ってたことだね。チームを作るって話だっけ?」

透華「いくらわたくしが天才美少女雀士といえど、一試合でニ人分打つことは不可能」

透華「高等部に上がって団体戦に出るにはあとニ人」

透華「普段から四人打ちでやる為に、少なくともあと一人は骨のある人材を早急に見つけたいところです」

透華「・・・いい加減、三麻だけでは衣も飽きるでしょうしね」ボソッ

一(結局はそれだよねー。相変わらず衣に甘いなあ、まあ気持ちはわかるけど・・・)

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:32:07.26 ID:VFAIP3/6P

透華「そこで!この掲示板ですわ!!」
ディスプレイに写し出されていたのはアルファベットの羅列。
どうやら外国の掲示板みたいだ。
一「英語・・・じゃないね。どこの国の言葉?」

透華「ドイツ、ギーセンにある龍門渕姉妹校の校内掲示板ですわ」

透華「どうやら近隣の学校と行った女子麻雀対抗戦の話をしているようです」

透華「でも、こちらを見てくださいな」パチンッ

透華「ハギヨシっ!もう一度先ほどのページの用意を!」

ハギヨシ「はっ、透華お嬢様」シュタッ

一(うわっ、あっという間にページが翻訳されてく)

一(本当、この人は何でもありだなあ・・・どれどれ・・・)

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:35:00.22 ID:VFAIP3/6P

『対抗戦お疲れ様! 2位なら上々の結果じゃないでしょうか!

『でも、ジュンが出ていれば絶対勝ってたよねー。

『彼、日本に帰ってたわけでもないんでしょ?

『ダメダメ、ジュンは「学校の名誉を賭けて~」みたいなの面倒くさいみたい

『今ごろまたどこかで自称玄人をコテンパンにしてるんじゃないの(笑)
一「ジュン・・・この人が透華の言っていた骨のある打ち手ってこと?でも、彼って・・・?」

ハギヨシ「なぜかこの掲示板では”彼”について一貫して男性代名詞が使われているのです」

ハギヨシ「しかし、学園の生徒名簿を調べましたところ、確かにお嬢様たちと同学年」

ハギヨシ「15歳の女生徒である、と」

ハギヨシ「本名は”ジュン・イノウエ”となっております」

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:37:52.73 ID:VFAIP3/6P

透華「それで?そのジュンの実力の程はどうなっていますの!?」

ハギヨシ「公式戦への参加歴がなく、牌譜の類(たぐい)は見つけられませんでしたが、別の記録はありました」

ハギヨシ「これは先月ギーセン行政管区にて非公式で行われた室内ギャンブル競技大会の各種結果です」

ハギヨシ「当然大人も交えて、と申しますか参加者はほぼ全員大人の大会で」

ハギヨシ「高名な大学教授やプロのギャンブラーなども、何名か参加していたようです」

それを受け取りしばらくの間目を落としていた透華の身体が小刻みに震えていく。
頬もうっすらと赤くなっているみたいだ。そしてその顔に浮かぶのは・・・笑み!
Poker:first prize-Jun Inoue

Darts:first prize-Jun Inoue

Blackjack:first prize-Jun Inoue

Mahjong:first prize-Jun Inoue
透華「はじめ!行きますわよ!」

一「行く?行くってまさか・・・」

透華「ロンオブモチ!ドイツですわ!!」

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:41:14.14 ID:VFAIP3/6P

~一週間後~
透華「着きましたわ!」
ギーセン・・・ドイツ中西部ヘッセン州に属する交通の要所。
近隣にドイツ経済・金融の中心フランクフルトを抱え、国内でも学生比率の特に高い大学都市。
ボク達はホテルに着くやいなや街の中心部、マルクト広場にやってきていた。
一「うん、そうだね。まずはどこへ・・・って、ええー!?」

透華「Sie dort! Es gibt etwas, fur einen Moment nur zu horen?」

訳:『そこのあなた!少しばかり質問に答えていただけますかしら?』
視線を向けたときには、既に透華は道行く人へ流暢なドイツ語で次々話しかけている。
驚いたことに彼女は、ボクがパスポートの発行手続きを終えるまでの1週間で
ドイツ語を日常会話レベルでは完全にマスターしてしまっていた。

それも朝から晩まで、寝る間さえ削っての猛レッスンで。
何もそこまでしなくても、ハギヨシと呼ばれているあの万能執事さん
(今回も荷物持ち兼ボディーガードとして帯同している)に
任せればいいんじゃないかなと思うんだけど・・・。

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:44:22.60 ID:VFAIP3/6P

透華「相手が誰であろうと、その器を測るには目で見て直接言葉を交わすのが一番ですわ!」

透華「それが高貴なる者に課せられた義務というもの!」

透華「わたくしと話したからには、それはもう!どんな情報でもペラペラペ~ラのペラペーラでしてよ!!」
側に仕えるようになって分かったことだけれど、彼女は天才ではない。
いや、確かに才能はあるが、それだけではなかった。
彼女はそれ以上に努力の人なのだ。

その気になれば何でもしてもらえる環境にありながら、人に任せるのを良しとせず、
自分はおろか他人の面倒まで見ずにはいられない究極のオカン気質。

常人の数倍の理解力と記憶力、数十倍の集中力と根気、
そして何より数百倍の見栄っ張りさが彼女の原動力となっているのだ。
一(まあボクも、あの強引さに救われたようなものだけどね・・・)

一「透華ー、ボクも手伝うよー!まずは学校に行ってみないー?」

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:51:31.74 ID:VFAIP3/6P

―――――

――8時間後
学園を訪ね、寮で空振りし、市庁舎に乗り込み、
もう一度戻った広場では騒ぎを大きくしすぎて
危うく警察沙汰になるところだった。

大人しく寮で待ってみればという意見も出してみたけれど、
生来気が短い透華には、その場で状況が動くのをただ待つという
発想はないらしい。

向かった学園の生徒・教師陣、街のVIPから
どう見てもただの観光客まで手当たり次第に声をかけた末
すっかり日も暮れようという頃、夜によく顔を出すという噂を頼りに
辿り着いたのは街区の奥まった場所に佇む古いバーだった。

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:54:39.31 ID:VFAIP3/6P

透華「ぜい、ぜい・・・。ここにっ、ジュンがおりますのね!」

一「いや、まだそうと決まったわけじゃ・・・」

透華「いーえ!ここまで来たのです、絶対いるに決まっちゃってますわ!」
バターン!
カランカラン
樫製の扉を開けると、雑多な喧騒がボク達を包む。
いかにも地方の居酒屋といった風だけど、ざっと見たところ日本人の姿はない。

ひとまず、マスターにでも話を聞いてみようかと考えた矢先、
にこやかに近づいてくる茶髪と黒髪の二人組がいた。

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 17:57:35.64 ID:VFAIP3/6P

茶髪『あんたらジュンに何か用かい?』

透華『ええ、そうですわ。あなた方、どうしてそのことを?』

茶髪『いや、表でジュンの名前を口にしているのが聞こえたものでね』

黒髪『俺たちは、あいつの博打仲間でね』

黒髪『ちょいとポーカーに付き合ってくれたら、色々教えてあげてもいい。どうだい?』

一(胸元のポケットから真新しいトランプデッキ・・・それに、この人たちの指は・・・)

透華『いいでしょう!七並べの女王と呼ばれたわたくしの力、見せて差し上げますわ!』

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:00:17.96 ID:VFAIP3/6P

一「・・・えっと、透華、この勝負ボクがやってもいいかな?」

一「それぐらいなら言葉もなんとなく分かると思うし」

透華「あら、大丈夫ですかしら。この方たち、なかなか手慣れてそうですわよ」

透華「危ないと思ったら、すぐさまわたくしを御呼びなさいな」

一「うん、ありがとう。頑張るよ」

茶髪『話は決まったかい?じゃあルールは一般的なテキサスホールデム』

茶髪『カードを切るのは、こっちの相棒でいいかな?』

一「ええ、お願いします」

茶髪『よし決まりだ!チップはお互い100枚で。自信があるなら追加してもらっても構わないけどね』ニヤリ

茶髪『それじゃあまずは、様子見の一枚から行こうかな』ポイッ

一『コール・・・』スッ

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:03:32.80 ID:VFAIP3/6P

~30分後~
茶髪チップ:170枚  一チップ:30枚

一「・・・・」

茶髪『ハハ、今日はあまり調子が良くないのかな?』

茶髪(ククク、俺達が知り合いと知っていながら黒髪にディーラー任せる時点でズブの素人だ)

茶髪(あんたの手札も、共通カードに次何が来るかも俺には筒抜け)

茶髪(ちょいと高い授業料を払ってもらうぜえ)

透華「はじめ!本当に大丈夫ですの!?もうあまりチップが残っていませんわよ?」

一「大丈夫、大丈夫。ポーカーは一度の勝ちで大きく取り戻せるゲームだからさ」

一「さて・・・と。じゃあ、オール・イン(全賭け)です」

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:06:56.63 ID:VFAIP3/6P

茶髪『オール・イン?うーん、勝負に出たね・・・』チラッ

黒髪『・・・・・・』コクリ

茶髪(おやおや、ワンペアでオール・インとはな・・・)

茶髪(一か八かで降ろしてファーストベットを稼ごうって腹だろうが、気の毒にこれで終わりだよ)

茶髪『OK。30枚、コールだ』

黒髪『それでは、ショーダウンです』

茶髪『ツーペアだぜ、悪いな嬢ちゃ・・・』

一「Unhoflich(御無礼)スリーカードです・・・なんちゃって」パタパタ

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:07:30.05 ID:GrxZYqme0

はじめちゃんカッコいい!

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:10:06.17 ID:VFAIP3/6P

茶髪『なんだとーっ!そんなはずっ・・・』ガタッ

一「どうしたんですか?何か気になることでも?」

茶髪(ちくしょうっ!あの野郎、ミスりやがったのか!?)キッ!

黒髪『』ブンブンブンッ!

一「さあ、次の勝負にいきましょう」
茶髪『・・・ワンペア』

一「ツーペア」

茶髪『ストレート!』

一「フラッシュです」

茶髪『ッッッ!フルハウスだ!!!』

一「フォーカードだよ。わー今日はついてるなー」
茶髪チップ97枚 一チップ103枚

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:13:42.21 ID:VFAIP3/6P

茶髪(ちくしょうっ!こいつもなんかサマやってやがるのか!?)

茶髪(それにしたって、何の準備もせずにこの店に来て、俺たち二人を出し抜けたりするもんなのかよ!?)

透華「オーッホッホッホッ!はじめはやればデキる子、やればデキる子ですわ!」

一(黒髪さんの特技は、ボトムディールかあ)

一(ボクがお父さんに教わって出来るようになったのは、確か6歳くらいだったっけ)

一(・・・ちょっと懐かしいな)

一(まあ鎖がある状態でのこんな単純なパーム(握りこみ)も見破れないようじゃ、まだまだだけどね)

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:17:22.72 ID:VFAIP3/6P

茶髪(こうなりゃ、なりふり構ってられるか!)

茶髪(多少強引でも、特大のハンドで一気に決めてやる!!)

茶髪(調子に乗ってレイズについてきやがれ!泡ふかせてやるぜ!)

茶髪『レイズ10枚』

一「コール」

茶髪『レイズ!30枚!!』

一「コール」

茶髪(よしっ、乗ってきたっ!)

茶髪『残り57枚!オール・インだ!』

一「オール・イン、コールします」

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:21:52.26 ID:VFAIP3/6P

茶髪(場の共通カードは、スペードA・ダイヤ5・クラブ7・スペードJ・スペードQ・・・)

茶髪(俺の手札はスペードの10とスペードのK・・・ロイヤルフラッシュだ!)

茶髪(あいつがどんな手だろうと、必ず勝てる!)

黒髪『それでは、ショー・ダウンです』パタパタッ

茶髪『ハッハー、見ろ!スペードの10とスペードのK、ロイヤルフラッシュだ!』

茶髪『それに比べて、こっちはブ・・タ・・・?・・!?』

一「見てのとおりですよ”こちら”がロイヤルフラッシュ」

一「あなたのハンドはダイヤの3とハートの6。ハイカード・・・ブタです」

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:25:57.56 ID:VFAIP3/6P

黒髪『そ、そんなバカな!あいつは一度もこっちのカードに触ってもねえのに!』

一「何を言っているかは大体察しがつくけどさ」

一「視線誘導・会話によるブラフ、触れていないように”見せる”技術は色々あるんですよ」

一「種も仕掛けも・・・手品だから実はあるんだけどね。まあその辺は企業秘密ってことにしておいてよ」
茶髪・黒髪『』ガタガタガタガタ

一(ふう、熱くさせて一気に決める作戦成功。良かった、なんとか勝てた・・・)

一(でも、結局はこの”手”に頼っちゃったなあ)

一(いつか手品に依らない正攻法(まっすぐ)なボクが透華の役に立てる日が来るんだろうか・・・)

一(まあでも、とりあえずは・・・)

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:27:08.46 ID:GrxZYqme0

自動卓じゃなかったらはじめちゃん最強の可能性が微レ存

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:27:59.40 ID:pkg2uyir0

出る作品間違えてるね
天に出ろ

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:29:26.43 ID:VFAIP3/6P

一「ボクの前で手品を披露するのは、10年遅かったですね」

一「じゃあジュンについて、知っていることを洗いざらい教えていただけますか?」

茶髪&黒髪「「○▲□●・・・!」」
ボクにはもう聞き取れない早口で捨て台詞を残した二人組はその場を後ずさり
ぱっと振り向きざま、出口に向かって猛スピードで・・・コケた。
???『なんだよお前ら、また来てたのか?・・・懲りねえ奴らだなあ』
長い脚を伸ばして連中を転ばせた人物は、
片手で二人を引きずりながらそのままこちらへ歩いてくる。

スラリとした長身に、ツンツンに立てた髪と
涼しげな印象を抱かせる端正な顔立ち。

右手と口一杯にドイツ名物のカレーヴルストを
確保しているのは気になるけれど、かなりのハンサムさんだった。

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:33:30.63 ID:VFAIP3/6P

???『迷惑かけたなアンタら』

???『こいつらこの辺りの店で一見の客を見つけてはケチなイカサマで金を巻き上げようとするチンピラだ』

???『先月シメたと思ったんだが・・・もう戻ってきてやがったか』

???『今度はちょっとやそっとじゃ忘れないよう、深い思い出作ってやんなきゃな』

オッサンA『ジュン、手加減してやれよ 』

オッサンA『可愛らしいお嬢ちゃんたちにゃあ、ちょっとばかりきつい光景だろうしよ! 』

???『おいおい、だからオレも女だっての』

オッサンB『ちげえねえ、ただし”可愛い”の代わりに”凛々しい” がつくけどな。ハッハッハッ!』

一(ジュン?今ジュンって言ったの!?)

???『ん?お前ら日本人か?』クルッ
改めてこちらを向いたその胸部には、意外にもしっかりとした膨らみが・・・
一「キミ、ひょっとしてキミの名前は・・・?」

急な展開の連続に思わず日本語で尋ねると、同じく滑らかな日本語が返ってきた。
「純。井上純」

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:38:59.83 ID:VFAIP3/6P

オレが望んでいたのは変化だった。そこそこ経済的に余裕のある
家庭に生まれ、周りの親戚はいわゆる難関大学の受験から
大手企業への就職と皆進んでいく。

オレもそんな風に育てられたし、特に疑問に思うでもなかった。
商社勤めの親父の都合でドイツに来てからも、それは変わらなかった。

地元では有名な全寮制のギムナジウムに入り、気のいい学友たちと勉学に励む。
別に不満があったわけじゃない、むしろ自分は恵まれているんだろうなとも思う。

だが平穏で、どこか単調な日々に刺激を求めて大人たちの溜まり場に顔を出すようになった。
知り合いは色々と増えたが、おかげで最近は親との仲が疎遠になるばかりだ。
3日前、久しぶりに実家に帰省したときもそうだった。
―――――
――――――――――

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:43:11.40 ID:VFAIP3/6P

純ママ「純、また連盟から招待状が届いているわよ。今度の州選抜に是非って」

純「あー、適当に無視しといてよ。学生同士の堅苦しいノリは苦手だ」

純パパ「まだ怪しげな盛り場に出入りしているのか?」
新聞をしかめっ面で読んでいた親父が口を挟んでくる。
純「別に非合法な場所に顔を出してるわけじゃないさ。それに学校の課題も、ちゃんとこなしてる」

純パパ「余計なことに割く労力を学業に費やせば、もっと効率的に己を高められると言っているんだ」

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:45:58.14 ID:VFAIP3/6P

純「やれやれ、親父は何かといっちゃそれだ。そんなに出世の上手い奴が偉いのかねえ」

純パパ「自らの努力の結果、周囲から認められ金銭を得て生活に潤いをもたらすのは良いことだ」

純パパ「それとも死んだ爺さんみたいな人生を送るつもりか?」

純「ああ。確かに毎日上司のご機嫌を気にして、
昨日のフットボールの試合がどうとかって人生よりは楽しそうだよな」

純ママ「純っ!」

純「・・・怪しげな盛り場で、人相の悪い奴らと遊んでくるわ」

純「せいぜい親の会社に迷惑かけないように気をつけるよ」
――――――――――
―――――

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:50:00.04 ID:VFAIP3/6P

純「・・・ちっ、しくった・・・」

つい売り言葉に買い言葉で言い返してしまったが、
父親の言い分の正しさも理解してはいる。
ただ自分には、そんな生き方は難しいだろうなと思うだけだ。

3日前の口論を思い出し、いまいち出口の見えない
モヤモヤした気持ちを抱えながら、バーにやって来ていた。

以前は日本人の小娘がこんなところにいるのを珍しがり
勝負を吹っ掛けてくる奴もいたが、カード・ダーツ・ビリヤード・それに麻雀
どれもそのうち負けなくなった。

それは純の持つ”少し特別な力“もあるが、それ以前に
ここには自分と全てを賭けて勝負をするような気迫の奴がいなかったからだ。
そう、これまでは・・・
透華「龍門渕透華といいます!あなたを勧誘しにきましたわ!!」
ドイツでもここまでは珍しい輝くような金髪を揺らし、満面の笑みで仁王立ちするこの女。
まるでそれ自体が発光体かのように、エネルギーに満ちている。

純「・・・二度も言わなくても聞こえてるよ」

純「勧誘とか言ってたが・・・で、オレにどうして欲しいって?」

透華「あなたには日本に来て我が龍門渕の中等部に転入し、
そこでわたくしたちと麻雀を打ってもらいます!」

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:53:37.62 ID:VFAIP3/6P

いきなり何を言い出すんだ、この女は。全く意味がわからない。
純「初対面の相手にそんなことを言われて、ハイそーですかと頷く奴がいたら会ってみたいね」

透華「賭けをいたしましょう」

透華「麻雀勝負でわたくしが勝ったら、あなたは明日の今ごろ機上の人になっていただきます」

純「そいつは大変だな。で、もしオレが勝ったなら?」

透華「あなたの言うことを何でも聞いて差し上げますわ」

純「何でもってのは、具体的に何をしてくれるんだ?」

透華「龍門渕グループと、わたくし自身にできる事の全て」

純「・・・・・・」

透華「カバン持ちでもヌイグルミの裁縫でも迷子探しでも、なんでもござれですわ」

透華「校門の前にあなたの銅像を建ててさし上げてもよろしくってよ!」

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 18:56:55.85 ID:VFAIP3/6P

純(本気か?さっきの話、それで一体この女になんのメリットがある?)

しかし数々の勝負で培った観察眼を持ってしても、冗談や駆け引きで言っているようには見えない。
その表情に浮かんでいるのは負けることなど微塵も考えていない純度100%の自信と、
自分以外の何かのために全力を尽くすという真摯さだけだった。
純「あー・・・っと、一応オレもギムナジウムの生徒でさ」

純「規則が厳しいことで有名なとこなんだが・・・」

透華「それなら心配ナッシング!先ほど学舎と市庁舎に寄ったついでに話は通して来ましたわ!」

透華「既に編入手続きの書類は揃えてあります」

透華「あとはご両親の承諾とあなたのサインがあれば、それでチョチョイのパッパと完全完了ですわ!」
バン!とテーブルにいくつかにまとめられた書類の束を放り出す。
そこには理事長やら校長やら寮長やら市議会長やら、
お偉いさんの署名が1ダースほど揃っていた。
純(・・・この女、マジでヤバい・・・)

59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:00:19.91 ID:VFAIP3/6P

こんな冷や汗をかくのはいつ以来だろうか。
しかしこの緊張感も久しく感じていなかったものだった。
純「あー、分かったよ。どうも承諾しねーと帰って寝ることも出来なそうだ」

純「で?アンタとオレの差しウマ勝負でいいんだな?」

透華「ええ、ちょうどあちらのテーブルが卓割れして似たようなモブ顔が二人残っています」

透華「シンプルに半荘一回勝負で得点の多かった方の勝ち、でどうですかしら?」

純「ああ、それでいい」

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:04:41.97 ID:VFAIP3/6P

純『悪いな、アンタらオレ達と一勝負付き合ってくれ』
座っていた二人に事情を掻い摘んで説明し、全自動卓の賽を回しながら聞いてみる。
純「なあ、日本にはお前みたいな奴が多いのか?」

透華「何を仰いますやら!わたくしはオンリー・ワンにしてスペシャル・ワン!」

透華「龍門渕透華ですわ!!」

純「はっ、だと思ったよ」
思わず苦笑する。
純(オレが望んでいた変化 ・・・)

純(それを持ってきたのが、まさか日本から来た妙な金持ちのお嬢ちゃんとはねえ・・・)

純「じゃあ、やろうか」

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:09:13.86 ID:VFAIP3/6P

東:モブA(25000) 南:透華(25000) 西:純(25000) 北:モブB(25000)

ルール:東南戦 アリアリ・赤3・ダブロン,トリロン無
東1局 15巡目

透華「ツモ!タンヤオ・ドラ1・赤1 1000・2000!」パラララ

純(フーン・・・)
東2局 親:透華

モブA:23000 透華:29000 純:24000 モブB:24000
モブA『テンパイ』透華「テンパイですわ」モブB『ノーテンです』純「・・・ノーテンだ」

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:12:37.12 ID:VFAIP3/6P

東2局1本場

モブA:24500 透華:30500 純:22500 モブB:22500
純「お前、麻雀をはじめたのはいつ頃だ?」

透華「・・・? 今年の春からですが、それがどうかしまして?」

純(なるほどな。東1局では手の進みが遅いと見るや平和三色手から喰いタンに移行・・・)

純(東2じゃ、上家のテンパイ気配を察してニ副露からの回し打ち)

純(教科書通りの綺麗な打ち方だ)

純(親番維持の期待値と、他家への振込の危険性もきっちり考慮に入れてある)

純(まだ甘いところもあるみたいだが、実際に卓をかこんで場数をこなせば
近い将来相当な打ち手になるだろう。けどな!)

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:17:27.77 ID:VFAIP3/6P

伸ばしていた脚を交差させ、甲を腿の上に置く。
_仏教における座法の一つ「結跏趺坐」
純は集中するとき、自然とこの形になる。
純「ポン!」

純(荒れ場の経験が浅いデジタルなんて、オレにとっちゃ絶好の的だぜ!)タンッ

一(オタ風の西ポンのあと手出しの西切り?)

純「それだ、お嬢ちゃん。ロン。一通・ドラ1・赤1 3900は4200」パラララ

一(・・・!メンホンも見えた手で、この人は何をやっているの?)

純(いつも以上に流れがよく見える。ジイちゃん、今日のオレは絶好調みたいだぜ・・・)
―――――
――――――――――

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:22:13.63 ID:VFAIP3/6P

祖父は僧侶だった。

元は国交省の官僚だったのが、出向先で寺院の住職と意気投合、土地に住み着き
最終的にその寺を継いでしまった。5年前に他界した大酒飲みでギャンブル狂いの生臭坊主。

井上家の変わり者としてお堅い職揃いの親戚一同からは奇異の目で見られていたが、
オレはこの破天荒な祖父が好きだった。よく寺に遊びに行っては花札や麻雀を教わったものだ。
純ジイ「純、勝負ごとには流れってえもんがあるんだ。流れを見極められるようになれ」

純ジイ「おめえには、その才がある。 もし流れが悪いなら、相手に押し付けろ」

純ジイ「反対に相手の流れが良さそうなら無理やりこっちに引き寄せちまえばいいんだ」

純ジイ「それが出来るようになったら・・・」

ショタ純「出来るようになったら・・・?」

純ジイ「どんな勝負であれ、おめえに勝てる奴はそうそういねえだろうよ」
――――――――――
―――――

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:29:01.88 ID:VFAIP3/6P

東3局 親:純

モブA:24500 透華:26300 純:26700 モブB:22500
純「チー!」タンッ

一(今度は平和も一盃口も捨てての両面喰い!意図的に荒れ場を作り出してる!?)

純「ツモだ。チャンタ・ドラ3。4000オール」パラ

一(まただ、本来透華のツモだったドラ牌を連続して引き入れての満貫和了)

一(凄い・・・。昔ボクが自ら閉ざしてしまった世界)

一(あれから先の世界にはこんな人達がいるんだ)

一(ボクもこの人達と本気で麻雀を打てたら・・・)

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:32:16.89 ID:VFAIP3/6P

東3局1本場 ロン 4200:純 放銃:モブB

モブA:20500 透華:22300 純:42900 モブB:14300
東3局2本場 ツモ 1800・3400:モブB

モブA:18700 透華:20500 純:39500 モブB:21300
東4局 ロン 5200:純 放銃:透華

モブA:18700 透華:15300 純:44700 モブB:21300

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:38:24.59 ID:VFAIP3/6P

南1局 親:モブA
透華(きいーっ!ちーっっとも和了れませんわ!)

透華(井・上・純~~!妙な鳴きばかりしくさりますわね!)

透華(こんなことでは、こんなことでは衣を抱えることなど出来ませんわ!!)
透華が麻雀を始めた理由。
それはとりもなおさず、自分がまず衣の遊び相手になることだった。
――

____

透華「わたくし、透華といいます。・・・あなたの従姉妹ですわ」

衣「・・・・・・トーカ・・・・・・?」

74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:42:42.35 ID:VFAIP3/6P

初めて衣と会った時のことを思い出す。
世の中の一切に興味をなくした目、保護された先からも怖れられ
半ば軟禁されるように与えられた一室が、その頃の彼女の世界の全てだった。

あのとき自分は誓ったのだ、この子の支えになると。
自分は、衣がいる場所へ行かねばならない。今のままではまだ遠い。
強くならなければ。その為に、ここで負けていては・・・
・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・

・・・・ ・・・・・・・・

・・・・ ・・・・

・・・・ ・・

・・・・

・・

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:49:31.53 ID:VFAIP3/6P

純「ツモ。1300・2600だ」

南2局 親:透華

モブA:16100 透華:14000 純:49900 モブB:20000
透華「・・・・・・」

純(まあ、こんなとこか。すっかり大人しくなっちまったな)

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 19:51:45.26 ID:VFAIP3/6P

透華「・・・・・・ ・・・・・・・」

純(しっかし極端な奴だな。いくらヘコまされたとはいえ、あれだけ喧しかったのが)

純(さっきから余計な戯言どころか、ポンやリーチの発声さえも・・・)

純(・・・?いや、ちょっと待て。そういえば、他家もオレもいつから鳴いていない?)

純(必要が無かったからと言えばそれまでだが・・・)

純(よくよく思い出してみれば、ここ数局鳴ける機会自体が無かった)

純(他の奴ならいざ知らず、オレがいる卓で
ここまで場が静かだったことが今までに一度でもあったか・・・?)
ゾワッ!
純(何かとんでもないものが出てきたような悪寒!なんだ?何が起こっている!?)タン

透華「・・・ロン。・・・ピンフ・一盃口・・・2900・・・・」

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:00:03.68 ID:VFAIP3/6P

純「・・・っ!・・・はいよ・・・・」チャラッ

南2局1本場

モブA:16100 透華:16900 純:47000 モブB:20000
透華「・・・門前自摸・タンヤオ・・・1100オール・・・」

純(・・・駄目だっ、何も出来ねえ。流れが消えた?いや、消えたんじゃない!)

純(まるで河の堰に穏やかに均されたような、そんな静かな感覚 ・・・こんなのは初めてだ!)
南2局2本場

モブA:15000 透華:20200 純:45900 モブB:18900
透華「・・・ロン。・・・七対子・・・3000・・・」

一(いつもの透華とは全く違う、ドライアイスのような冷たさ・・・)

一(周りが身動きすることさえ拒むようなこの感覚は、まるであの月夜のような・・・)

一「透華、キミは一体・・・」

83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:07:14.51 ID:VFAIP3/6P

南2局3本場

モブA:15000 透華:23200 純:42900 モブB:18900
純(・・・和了れる気もズラせる気も、まるでしねえ。一体どうなってんだ・・・)

タンッ

純(・・・!しまっ・・・!)
不用意に切った牌に対して透華が、またも手牌を倒そうとする
透華「ロ・・・

モブA『ロン。発のみ。1300は2200。頭ハネです』パラ

純(うおっ!た、助かったぜ・・・)

純(けど、ともかくこれで親の連荘は終わった。残り2局、逃げ切らせてもらう!)

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:11:24.41 ID:VFAIP3/6P

南3局 親:純

モブA:17200 透華:23200 純:40700 モブB:18900
透華はハッと気がついて卓上を見ていた。
なんだか随分と局が進んでいる。点棒も増えているようだ。
透華(寝落ち?寝落ちですの!?)

透華(冗談じゃありませんわ。徹夜の3日や4日で意識が飛ぶとは、わたくしもまだまだですわね)

透華(真正面から相手の器を測り、その器ごと受け入れるのが高貴なるアイドルの務め!)

透華(それが「よく覚えていませんでした」では、それこそ衣の家族は務まりません!)
そうだ、この程度でつまづいていては、とてもあの子の闇は抱えられない。
透華(井上純!あなたの器見せていただきますわよ!)

透華「リーチですわ!」ピシィッ

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:15:12.51 ID:VFAIP3/6P

純「っ‥ポンだ!」タン

純(ようやく一つ鳴けた。・・・だが、これは・・)

透華(一発を消されたくらいヘッチャラですわ!わたくし実は、とっても執念深いんですのよ!)

純(ズラしても、後から後から吹き出てくる怒涛のような流れ。・・・なんなんだ、こいつは!)
2巡後
透華(いらっしゃいまし!)カッ

透華「リーチ・ツモ・混一色・・・裏2!3000・6000いただきですわ!」パラララッ

透華「さあ!オーラスでしてよ!」
オーラス 親:モブB

モブA:14200 透華:35200 純:34700 モブB:15900

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:19:13.85 ID:VFAIP3/6P

純(ジイちゃん、こいつはビックリだぜ。オレの鳴きがまるで通じねーよ・・・)

____
――

純ジイ「そりゃあ!コイコイ!」パシ-ッ

ショタ純「あめしこう!」ペイッ

純ジイ「なにィ!?チキショー、またジジイの負けだ!ホレ、檀家からの高級饅頭食えっ!」

ショタ純「エヘヘ。ジイちゃんは弱いなー。今度オレがコツを教えてあげるよっ」

純ジイ「・・・純、・・・純。おめえには流れを読む才がある。そいつはおめえの宝モンだ」

純ジイ「でもな、こいつだけは覚えとけ」

純ジイ「世の中にはどうにも変えられないような、とんでもねえ流れを作り出す奴が稀にいるのよ」

ショタ純「えーっ!?それじゃ負けちゃうよ!そういうときは、どうすればいいのさ?」

純ジイ「そうさなあ、そんなときはいっそのこと・・・」

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:24:52.77 ID:VFAIP3/6P

――

____
純(そうだな、こんなときは・・・)

純(そいつの作った流れに乗ってみようかっ!)

純「ポン!」タンッ

透華「ポン!」タンッ
鳴きを入れても奴は止まらず、むしろ勢いはますます加速していく。
だが、オレの流れも止まらない。
純「チー!」タンッ

透華「ポンですわ!」タンッ

88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:28:41.22 ID:VFAIP3/6P

牌を晒すたびに、どんどん自分が軽くなっていく感覚。
自分の中にあったゴミみたいなこだわりが、消し飛んでいく。

気づけばオレも奴も手元にあるのは一牌だけになっていた。
裸単騎・・・オレの待ちは、東。
そして恐らく奴の待ちも・・・
…パタ…
3巡後、卓上に現れた東と同時に静かに奴の手牌が倒された。

透華「・・・ツモ。中・トイトイ・三色同刻 2000・4000!ですわ!」

91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:32:30.46 ID:VFAIP3/6P

――

____
モブC『お疲れさん、噂の彼はどうだったよ?』

モブA『あー、もうっ!ほんっと、疲れた!!』

モブA『和了りも振込みもゼロの半荘干渉せずってなら楽勝だけどさ!』

モブA『サシ勝負に影響しないような適度な打ち回しって結構神経使うんだから!』

モブB『それも意図的に場を荒らす人がいるんだから大変だよー』

モブB『今度はニーマンが打つ役やってよねー』

モブC/ニーマン『だってアタシ日本語わからねーし。お前らの方が適任だって』

モブA/ブルーメンタール姉『あいつは、ずっとドイツに住んでるってーの!』

モブB/ブルーメンタール妹『でも噂通り、なかなか面白い打ち方の人だったねー』

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:36:12.27 ID:VFAIP3/6P

ブル姉『まあね。打牌のスタイルもそうだけど、あのタフさはちょっとばかり面倒そうだったわ』

ブル姉『選抜戦でうちの州とやるなら、マークすべき相手だったと思うけどさ』

ブル姉『あいつ、この国出ちゃうみたいよ?』

ブル妹『本番でお手合わせしてみたかったけどねー』

ブル妹『それに気になる人がもう一人いたしー・・・』

ブル姉『・・・あの金髪ジャパニーズ、よく分かんなかったわね』

ブル姉『妙に素人くさいと思ったら急に隙なくなったり、バカみたいにツキまくったりさ』

ブル妹『でもお姉ちゃん、途中でちょっと本気になったでしょー』

ブル妹『あの頭ハネ、ホントは直撃したかったんじゃないー?』

94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:41:10.85 ID:VFAIP3/6P

ブル姉『るっさい!どの程度やれるのか、ちょっと見てみただけよっ!』

ブル姉『まあまあだったわねっ』プイツ

ニーマン『まあお互い麻雀やって勝ち続けてれば、そのうち当たることもあるだろうよ』

ブル姉『・・・そうね、そのときは改めて叩きのめしてあげるわよ』

ブル姉『どちらにしろ、誰が相手だろうと、私たちブルーメンタール姉妹に・・・敵はないわっ!』

ブル妹『ないわー』

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:46:38.24 ID:VFAIP3/6P

-翌日-フランクフルト空港
透華「オーッホッホッホ!待っていなさい衣!」

透華「あなたの遊び相手、もうすぐ連れていきますわよ!」

純「だから誰だよ、衣って・・・」
スーツケースの山の前で高笑いする透華を遠目に収めながら純はボヤいた。
純「あいつ、たった数日の滞在にあれだけの荷物を持ってきてたのか・・・」
まったくもってワケの分からないお嬢様だ。
対する自分は、足元に置いてある小さな手さげバッグ1つ。
これから住む国を変えようとする人間の荷物とは別の意味で思えない。
純(まあ、これでいいさ )

96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:50:01.73 ID:VFAIP3/6P

純「まさか、こんな形で日本に戻るとはなあ」

勝負が決まるやいなや、出国・転出・転入と透華はあっという間に手続きを済ませていた。
実家に戻った純が荷造りがてら「日本に行くことになった」と簡素極まる報告をしたのが今朝の話だ。

母さんは半ば呆れて声も出ない感じだったが、今夜辺り出張から帰ってきた親父と
馬鹿娘の処遇について話し合うのかもしれない。だが純はもう考えを変えるつもりは無かった。
久方ぶりの母国へ、まだ見ぬ世界へ、そこで自分は何を見つけるのだろうか・・・

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:50:56.28 ID:SowQodey0

ブルーメンタール姉妹モブ顔だったのか…

98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:53:10.04 ID:VFAIP3/6P

一「寂しい?」
柄にもなく物思いに耽っていると声をかけられ、近づいてくる人影に顔を上げる。
純「いいや、別にそんなことはねーぜ。学園裏のブルストが食えなくなるのは、ちっと惜しいけどな」

一「ハハ、まあ日本にも美味しい食べ物はあるし、退屈はしないと思うよ。色々な意味で・・・」

一「でも楽しいんじゃないかな。ううん、きっとそうなるよ」

一「改めてよろしくね、井上純くん。ボクたちは家族になるんだ」

純(家族・・血や家柄とは違う絆でつながった、もう一つの家族、か・・・)

純「ああ、これからよろしくな。国広くん」
握手を返し、バッグを肩に担いで入場ゲートに歩いて行く。
純(これでしばらくはこの国も見納めか)
搭乗ゲートの前、何となく振り向いた視線の先、だがそこに立っていたのは・・・
純「親父・・・」

99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 20:59:29.91 ID:VFAIP3/6P

純パパ「帰りの便がちょうど近かったのでな」
どうも出国時間のアタリをつけて待っていたらしい、父の姿がそこにあった。
妙に言い訳がましく一度咳払いをしてから続ける
純パパ「純、お前が決めたお前の人生だ、好きにするがいい。

純パパ「私はここで私の務めを果たすだけだ、そこにはお前の父という務めも入っているがな」

純パパ「お母さんにも言っておく。気丈に振舞っていても
あれで心配症だから、たまには顔を見せに帰ってきてやれ」

純パパ「・・・それと、日本に行ったら爺さんの墓参りを忘れるなよ」

純パパ「お前に似て大食らいだったから、お供えの饅頭は多めに持っていけ」

純「・・・ああ、世界チャンピオンになって帰ってくるわ」
ニッと笑い片手を上げながら幾分軽くなったように
思えるバッグを担いでゲートをくぐる。今度は振り返らなかった。

そして純は慣れ親しんだドイツを後にする。
向かう先には、またいくつかの新たな出会いが・・・。

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:06:05.61 ID:VFAIP3/6P

~一ヶ月後。日本・長野~
透華「ただいま戻りましたわ!」
見たこともないような大きな門を通り、案内されるがまま
これまた呆れるような広さの部屋に通されると、私と同年代のメイドが二人出迎えた。
一「お帰りー透華。その人がゲームで会った人?」

純「うわ、ほんとにそのまま連れてきたよ。相変わらず強引な奴・・・」

???「・・・・・・・・・」

101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:10:35.22 ID:VFAIP3/6P

窓を眺めると、気づかない内に太陽が随分高く上っている。
一日中ログイン生活を続けているせいで時間の感覚がいまいち無いが、
多分今は午前10時くらいのはずだ。
衣「おはよー。・・・うにゅ?誰だ?」ペタペタペタ
部屋の奥から今度は子供が出てきた。
今起きたばかりと思われる、まだ焦点の定まっていない
目をこすりながら、不思議そうにこちらを見てくる。
一「お早う衣。彼女はボクたちの新しい友だちだよ。えーと、名前は・・・」

智紀「・・・沢村智紀」フラッ
ヘリの中でずっと座っていたのを、急に立ち上がってここまで歩いて来たからだろうか。
一瞬立ちくらみに襲われる。そういえば、今回起きたのは何時間前だったっけ。
さすがに一昨日ということは無かったと思うけれど・・・。

102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:14:55.70 ID:VFAIP3/6P

衣「トモキは、眠いのかー?」

智紀「・・・大丈夫。オチるときの限界域は把握している」

衣「輾転反側は禍事の種と父君も言っていた。衣は、昨日もちゃんと早く寝たよ!」

智紀(全然聞いていない・・・)

衣「それなら衣の抱きぐるみを貸してあげるぞ。これで今日から白河夜船の心地だ!」ニコー

智紀「・・・ありがとう」
その妙に温かいクマともタヌキともつかないヌイグルミを抱えながら
そういえば子どもの体温は高いらしいとボンヤリ思い出す。
ここが、私がこれから住むところ・・・。
透華と名乗る少女がこちらを振り返り、満面の笑みで言った。

透華「ようこそ、龍門渕家へ!!」

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:19:54.25 ID:VFAIP3/6P

カチャカチャカチャ
透華「あら、聞き慣れたタイプ音がするかと思えば。まだ起きていましたの?」

智紀「ここに来た日のことを思い出していた・・・」

透華「そうですか。まだ4ヶ月ほどですが、随分前のことのようにも思えますわ。

透華「いよいよ明日から高等部へ進学ですわね。」

智紀「・・・面倒くさい・・・」

透華「まーだそんなこと言ってますの、この元引きこもりニートは!」

透華「あなたをきちんと学校に通わせることも、ご両親との約束なのですから!」

透華「さっ、明日に備えて今日はもう休みなさいな」
明日から学生生活・・・。登校なんていつ以来だろう。
通学路を歩いて教室の椅子に座り、ノートを広げて黒板に向かう
姿というのは我ながら想像しにくい。通信で単位を全部取れたらいいのに。
智紀「・・・面倒くさい・・・」

105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:25:28.13 ID:VFAIP3/6P

新生活スタート-国広一の場合
噂好き女子「ねえねえ、中等部からエスカレーターの子に聞いたんだけどさ!」

噂好き女子「国広さん、あの龍門淵のお屋敷に住み込みって本当?龍門渕さんってどう?」

噂好き女子「お嬢様ってよく気難しいっていうけど」

一「ううん、全然そんなこと無いよ。とてもよくしてくれてる」

一「今度みんなでお屋敷に遊びに来たらどう?歓迎されると思うな」

噂好き女子「ほんとに!?私一回行ってみたかったんだよね!実はうちもさあ~・・・」

一(・・・クラスはバラバラになっちゃったけど、みんなどうしてるかなあ・・・)

107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:29:54.78 ID:VFAIP3/6P

沢村智紀の場合
智紀「・・・・・・・」ペラッ

世話好き女子「はい、プリント。うっわ、キミすっごい肌白いねー」

世話好き女子「どこか雪国の生まれだったりする?」

智紀「・・・北海道」

世話好き女子「おっ、白馬や飯山辺りかと思ったら予想以上に北だったか!」

世話好き女子「私は杉乃!1つ年下の従姉妹が、ここの中等部に通っててさ!」

杉乃「楽しそうな学校だから、受験勉強頑張って入ったんだ!1年間よろしくねっ!!」

智紀「・・・・・・・・・・よろしく」

109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:33:13.20 ID:VFAIP3/6P

~3日後~
杉乃「へー、ネットゲーム得意なんだ。じゃあさ、PCとかも詳しいの?」

智紀「多少は・・・」

クラスメイトA「えー!?沢村さん。凄いんだね!」

クラスメイトB「パソコンのセットアップってやつの方法とか教えてもらえる?」

クラスメイトB「私、弟にバカにされてばっかでさー」
ワイワイ,ドヤドヤ
智紀(色々な人が私に関わりをもってくる・・・学校は不思議なところ・・・)

111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:36:39.65 ID:VFAIP3/6P

~2週間後~
杉乃「智紀、部活何やるか決めた?」

杉乃「まあ帰宅部もいいけどさ、花の高校生活」

杉乃「青春をクラブ活動にかけてみるのも良いと思わんかね!」

杉乃「うちの学校コンピュータ部みたいなのって、あるのかなー?」
・・・とりあえず帰宅部と思われている。
もっとも数カ月前までは正真正銘の引きこもりだったわけだから、
それに比べれば随分な進歩とも言えるけれど・・・。
杉乃「特にここ麻雀部が、すっごい強いらしいんだよね!」

杉乃「私も高校入ったら、何か始めようかと思ってさ-」

杉乃「どうせならやりがいあるとこ入りたいなって!」

杉乃「それで合格発表の帰りに本屋さんで入門書買っちゃったんだよねー」

智紀(麻雀部・・・)

112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:36:51.07 ID:BpxTcXhx0

ともきーがネトゲ基地という風潮

113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:40:18.68 ID:VFAIP3/6P

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

透華『これからわたくしたち5人で、うちの高校のロートル麻雀部員を殲滅しますわよ!』

透華『県予選、全国・・・そして世界!!』

透華『あなたと楽しく遊べる相手が、必ずどこかにいるはずですわ!!』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
智紀「・・・それは・・・ちょっと、考えた方がいいかもしれない・・・」

杉乃「・・・?なんかあるの?」

智紀「なんでもない・・・と、思う・・・。今のところは・・・」

杉乃「ふーん?まあいいけどねっ。智紀も、何か部活始めたくなったら教えてよねー」

116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 21:46:37.25 ID:VFAIP3/6P

透華「さあ!いよいよ、わたくしたちによる華麗なる殲滅劇の幕開けですわよ!」

智紀「・・・・」
放課後私たちを部室棟に呼び出した透華は、高らかに宣言した。
これはマズいパターンのやつだ・・・。
純「前言ってたアレ、そのままの意味だったのか・・・」

透華「トーゼンですわ!」

透華「県大会まで間があるとはいえ、諸々の準備は必要ですし、今月中には形を整えませんと!」

一「あのさ、透華。今日は衣もいないし、また今度にした方がいいんじゃないかな?」

一「まだほとんど何も知らない麻雀部に、いきなり押しかけるのもどうかなって思うし・・・」

智紀「まずは情報収集も必要・・・」

純「おお、智紀がこういうのに積極的とは珍しいな」

純「ま、でもオレも、その方がいいと思うぜ」

透華「あら、それもそうですわね」

透華「それでは今日は様子見ということで、後日の布石といたしましょう!」

127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 22:05:27.01 ID:VFAIP3/6P

一「ああ、でもとりあえず今から乗り込むことは決定なんだ・・・」

純「やれやれだな。しゃーねえ、付き合ってやるか」

透華「フッフッフ、さあ!お手並み拝見といきますわよ!!」
部室棟にある中でも一際大きな部屋の前へ一直線に歩いてきた透華は、
そう言って躊躇なく扉を開け放った。
バターン!
部員A「え、な、何・・・?」

透華「わたくし、龍門渕透華と申します!」

透華「この部の責任者の方はいらっしゃいますかしら!?」

130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 22:11:05.32 ID:VFAIP3/6P

部長「私が部長です。龍門渕・・・そうですか、理事長のお孫さんが今年進級してくるとは聞いていましたが・・・」

部長「中等部での武勇伝は色々と伺っていますよ。それで、今日はどういった御用でしょうか?」

透華「龍門渕高校麻雀部の実力を確かめに参りましたわ!」

部長「ああ、入部希望?」

透華「そうともいいますわね!」

透華「ですが、そんじょそこらの入部希望者じゃありませんわよ!!まさに、これから伝説となる・・・」

部長「でしたら、来週末に一斉入部テストを行いますので、そのときにいらしてください」

透華「・・・はい?」

部長「うちは入部希望者が多いので、いちいち個別に取り合ってはいられないんですよ」

部長「理事長のご親戚とはいえ、特別扱いするわけにもいかないのでね」

部長「概要は掲示板にも書いてあったはずですが?」

131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 22:17:21.39 ID:VFAIP3/6P

純・智紀・一「・・・・」

透華「な、なんですの、その目は!?あなたたちも知りませんでしたでしょっ!////」
部長「それと、あなたたちの麻雀歴や大会での実績は?」

純「あー、公式戦は出たことねーや。でもガキの頃から不良住職にサシで鍛えられてたぜ」

一「ボクは・・・小学生の頃大会に出てそれきりかな・・・」

透華「1年ですわ!!」ドヤア

智紀「118日目・・・」
平部員一同「「フフフフフ…クスクスクスクスクス…」」

透華「・・・何かおかしなことでもありまして?」

132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 22:18:11.00 ID:hYv3cEqy0

この部員は白糸台で道作っちゃうタイプ

134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 22:23:22.08 ID:VFAIP3/6P

副部長「クックックッ・・・失礼」

副部長「ですが我が龍門渕高校麻雀部は、県内でも屈指の名門を名乗らせていただいていまして」

副部長「県内県外問わず、インターミドルで名を馳せた選手が毎年多数集まります」

副部長「それこそ中1の頃からマメすら出来ないようなキャリアの人までね」

副部長「率直に言って、あなた方では受かるのは少々大変でしょう」

副部長「今のうちに諦めたほうが賢明かと思いますけどね」

透華「そ・・・っ!

一「そうですねっ!あと10日も無いですけど、合格出来るように努力します」

一「ご忠告ありがとうございました!」
|彡 ササッ~バタンッ!

138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 22:33:47.48 ID:VFAIP3/6P

~翌日夜・龍門渕邸~
透華「キーッ!何っですの、あの態度は!!今思い返しても、いまいましい!!」

衣「気炎万丈。透華は昨日からずっとプンプンしている」
確かに。いくら好き放題言われたとはいえ、
よくここまで怒りを持続できるものだ。

その精神的活力を、もっと有意義なものに使えばいいのにと
学校の為にも思わずにはいられない。
純「まあしょうがねーよ、あっちからしたらオレたちタダの痛い子だもんな」

透華「タダの、ですって!!わたくしたちを見て、その類まれなオーラに気づかないとは!」

透華「眼科の名医か、最新型スカウターが大量に必要ですわね!!」

一「まあまあ、クラスの噂好きの子にちょっと聞いてみたんだけどさ」

一「龍門渕の麻雀部って、結構特殊みたいなんだよね」

139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 22:39:16.17 ID:VFAIP3/6P

透華「そんなの見れば分かりますわ!!」

一「部員数では風越より少ないけど、それも毎年の入部者を20人までと決めてるかららしいんだ」

一「そして人気競技で県大会上位の常連だから、当然学校からの補助も手厚い」

一「部室も2つ用意されていて、レギュラーである5人と、
校内ランク1位の部長さんを除く2位~5位の控えメンバー
それぞれ4人を合わせた9人が一軍としてあの第一ホールを専有」

一「各自専用のデスク、ロッカーとパソコンも支給されてる」
それはちょっと羨ましい、マシンスペックはどれくらいだろう。
純「至れり尽くせりだな。大量の部費をせしめつつ、分け前の多さは確保」

純「ランキング戦で部内のヒエラルキーも維持してるわけか」

純「ある意味社会の縮図だ。なかなか良く出来てるじゃねーの」

142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 22:46:08.63 ID:VFAIP3/6P

一「うちの学校は裕福な家庭が多いから、どっちかというと校内でのステータスが目的みたいだけどね」

一「発言権が増せば、それだけ自由度も高くなるし」

衣「豈図らんや、龍門渕自恃の学び舎も驕傲の園だ」

衣「やっぱり衣は、ここ(屋敷)にいる方がいい」

純「そう言うなって。お前もちょっとくらい顔出してみろよ」

純「ちと量は物足りねーが、学食のメニューもなかなかだったぜ」
そう言いながら衣を抱えて頭を撫でる。
休日の大通公園でよく見かけるような、なかなかに長閑な光景だ。
お茶でも入れてこようかな。
衣「うう~、気安くポンポンするなーっ」

一「ちなみに一軍の部室になってる第一ホールは、出前も取り放題らしいよ」

純「何!本当か、国広くん!?」

純「透華、こりゃ呑気にダベってる場合じゃねーよ!今すぐ奴らを倒しにいこう!!」

透華「最高に目立つ方法でケチョンケチョンにしなければ気がすみませんわ!!」

透華「昨日寝ずに考えた計画があります!まずはプランα(アルファ)!・・・

144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 22:52:09.56 ID:VFAIP3/6P

~翌日放課後~
結局、昨夜は透華の独演会で終わり、話はまとまらなかった。
このままだと実際の行動に移すのは当分先になりそうだ。

透華にああ言った手前、私自身一応選手の牌譜を調べもしたが、
はっきり言ってあまりやる気は出ていない。
このまま立ち消えになった方がいい気もするし。

今夜はプランΙ(イオタ)からだったか。
明日は土曜で休日だから、また長くなりそうだ。

Civ5新拡張版で、どの文明から始めるかでも
シミュレートしつつ適当に相槌を打っていよう・・・。
そう心に決めた所で、見慣れた顔に出会った。

145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 22:59:57.22 ID:VFAIP3/6P

杉乃「あ・・・」

智紀「・・・・・・・」
ただ、そこに浮かぶ表情は彼女としては初めて見る種類のものだった。
目と鼻先が赤く、声はかすれがちになっている。
杉乃「智紀・・・」

そして手にはクシャクシャになった『麻雀部』と書かれた入部希望用紙。

智紀「それ・・・」

杉乃「いや、入部希望書出しに行ったらさ!素人はいらないって言われちゃって」

杉乃「それでよせばいいのに、”だったら私の実力を見てください!”なんて言っちゃってさ!」

148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:06:43.68 ID:VFAIP3/6P

早口でまくし立てる。
なんだろう・・・よく分からないモヤモヤが胸に広がっていく。
やたら動悸が激しいし、視界も狭くなってきた。
これは早急に処置した方が良さそうだけれど、どうすればいいかも分からない。
杉乃「それでもうボコボコ。才能ないって」

杉乃「今後もやるだけ無駄だって。ま、そうだよね。ハハ・・・」

智紀「・・・・・・」クルッ
分からないので、私はその場を立ち去った。
杉乃「智紀・・・?」

智紀「・・・急用を思い出した。また来週・・・」

151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:11:37.63 ID:VFAIP3/6P

カツッカツッカツッ
バタンッ!!
部長「・・・おや、これはこの間の中にいた・・・118日、いや今日でキャリア120日の君かな?」

智紀「さっき、別の一年生が来たはず・・・どうして、あんなことを言ったの?」

部長「なるほど、先程の元気のいい子は君の友人かな?」

部長「前回説明した通りだよ。我が部は、初心者を必要とはしていない」

智紀「そう・・・」

部長「それで用件の方をまだ聞いていなかったが・・・」

部長「またこの部の実力を見たいとか、そういった話ですか?」

智紀「違う。あなたたちを・・・殲滅しに来た――」

154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:17:56.45 ID:VFAIP3/6P

副部長「おやおや、今年の新入生は本当に元気だねえ」

副部長「だが、うちのランキング戦は数日かけて行う勝ち抜けのデスマッチ式だ」

副部長「誰かを飛び終了させてのトップ目、若しくは一人の得点が+5万点以上になるまで半荘を繰り返す」

副部長「決着がつかなければ点棒は半荘ごとにリセット」

副部長「私ら全員と戦うには、ちょいと時間が掛かり過ぎるんじゃないか?」

智紀「問題ない・・・あなたたちはPCを一台ずつ持っているんでしょう?」

副部長「・・・なんだって?」

智紀「今からオンラインで麻雀を打つ。3人一組でかかってくるといい」

智紀「私があなたたち全員と相手をする」

156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:20:21.98 ID:VFAIP3/6P

部員A「ハァ?あなた、さっきから何を言って・・・

部長「―――確かに、校内サーバでの対戦はアドレスのチェック機能が緩い」

部長「数種類のIDを使用すれば、1つのPCで複数窓を開いての3卓同時対戦もシステム的には可能だが・・・」

部長「それで勝負になると、本気で思っているのかな?」

智紀「構わない。あなたたちは全員昨年秋の新人戦に出ている・・・。データは収集済み・・・」

部長「いいだろう。ただし打牌の設定制限時間は3秒」

部長「操作ミスだろうと何だろうと、少しでも切るのが遅れたら即刻反則負けだ」

智紀「勝負成立・・・・」

157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:26:58.58 ID:VFAIP3/6P

副部長(3卓同時にツモ巡が回れば、思考時間は1卓辺り1秒しかない)

副部長(半荘で勝負がつかなかった場合、得点はリセットされる)

副部長(私たちはいざとなったら協力し合えるし、そしてお前が一位の時にお互いを飛ばすことは当然ない)

副部長(フッ、これでどうやって勝つつもりだ!)
ブウンッ
愛用のMacBookを取り出して電源を入れるのと同時に、
頭の中のスイッチが切り替わっていくのを感じる。
久しぶりのネットモード。
いや、これ程勝ちたいと思ったのは初めてかもしれない。
”Player Ready…”

159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:31:21.74 ID:VFAIP3/6P

開始25分経過。全卓1回戦終了 智紀 A卓2位 B卓3位 C卓1位 トビ0 決着つかず

60分経過 A卓(3回戦/2位) B卓(3回戦/1位) C卓(3回戦/2位) トビ0
部員A「ウソでしょ・・・かれこれ1時間以上、全くよどみなく3卓同時に進めている・・・」

部員B「どういう頭の構造をしてるの。逆に焦ってミスが増えてるのはこっちじゃない!」

部長(加えて個々のプレイングのクセを読んだかのような待ちや躱し方もしてくる)

部長(データを収集済みというのは、あながちハッタリでも無さそうだな・・・)
90分経過 A卓(5回戦/1位) B卓(4回戦/1位) C卓(4回戦/2位) トビ0
智紀「・・・・・・・・・」

162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:35:43.00 ID:hYv3cEqy0

のどっちともやりあえるレベルやな
広範囲なネトマとは差があるとは思うが

163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:36:10.00 ID:VFAIP3/6P

A卓 上家:九萬チー

A卓 上家:打・二筒

B卓 対面:打・西(ドラ)→立直

B卓 智紀:ポン・西(ドラ)

B卓 智紀:打・三萬

C卓 下家:打・ニ索

B卓 下家:チー・三萬

B卓 下家:打・六萬

A卓 智紀:打・赤五筒

C卓 対面:打・一索
PCウインドウに描画された牌情報が頭の中でログに変換されていく
普通に考えたら明らかに余分なその工程を、私の脳は止めようとしない
視界に入るのと同時に指は動き、その履歴と過去のデータを元に思考は複数展開する。

165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:39:57.78 ID:VFAIP3/6P

A卓:上家 ドラの字牌は1枚でも必ず抱える。しかし場に2枚見えた時点で即手放す

B卓:対面 最終形でも、リーチをかけるのはシャボ待ちのみ

C卓:下家 下りる時の捨て牌選択は、まず一・九の刻子から

A卓:対面 タンヤオ手を好み、字牌は役牌でも序盤から優先的に捨てる。ただし自風のみ例外
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2時間経過 A卓(6回戦/2位) B卓(5回戦/1位) C卓(6回戦/1位) トビ0

167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:44:16.40 ID:VFAIP3/6P

部員B(ああっもう、埒が明かない!こうなったら)チャッ…

部長「・・・1つ注意し忘れたことがあった、沢村君」

部長「勝ち目が無いからといって、わざと飛んで終わりにしようなどとは思わないことだ」

部員B(ひっ!)ビクッ

智紀「・・・」

部長「それは、この勝負の興を損なうだけでなく」

部長「今後の君の競技人生において大きな傷を残すこととなるだろう」

部員B「部、部長・・・」

部長「もっとも、今後の競技人生というものがあればの話だがな」

部長「先ほどからわずかにペースが落ちているようだが、そろそろ限界か?」

智紀「・・・問題ない。連続ログイン時間2桁になってからがニュービーとコアの差」

169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:51:17.22 ID:VFAIP3/6P

2時間30分経過 C卓7回戦 上家トビ終了。智紀1位 C卓決着

2時間50分経過 B卓8回戦 智紀1位 81000点(+56000点)B卓決着

副部長「くそっ!」ガタッ

副部長「・・・第二ホールの2軍を呼んでこい」

部員C「副部長、それはっ・・・」

副部長「いいから呼んでこい!うちには、まだ30人からの部員がいる!」

副部長「全員倒すと言ったんだ、嫌だとは言わないよな!!」

智紀「・・・連れてくればいい。何人でも、何十時間でも私は相手をする」
だが、続いて響いて来たのは別の声だった。
それは私に取っては、もはや聞き慣れたハスキーボイス。
純「張り切ってるとこワリーんだけどさ、向こうの部屋にいた奴らなら来れねーと思うぜ」

純「さっきまで、うちのお姫様の遊び相手になってもらってたからな」

一「まあ衣が途中で飽きて寝ちゃったから、結局一番多く飛ばしてたのは純くんだけどね」

衣「ムニャムニャ・・・トモキの端敵は万象一切灰燼とn・・・」ZZZzzzz

172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/23(日) 23:57:06.78 ID:VFAIP3/6P

-第二ホール-
二軍の皆さん「「に、人間じゃない・・・」」
透華「オーホッホッホッ!これぞプランΩ(オメガ)!!」

透華「わたくしたちの実力を遂に目の当たりにしてしまったようですわね!」

純「ったく、ついさっき来といてよく言うぜ」

透華「いまいち事情は飲み込めませんが、とにかくよし!ですわ!」

透華「智紀!あなたが怒っているのなら、相応の理由があるのでしょう!」

透華「わたくしが責任を持ちます、存分にやっておしまいなさい!!」

智紀「透華・・・」

174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:00:36.10 ID:XsGDZ54wP

副部長「なんだよ、なんなんだよ、こいつらぁ・・・」

部長「・・・やれやれ。これはとんでもない入部希望者だったかな」

智紀「・・・なぜ?」

智紀「こんなことをしなくても、あなたは強い・・・」

智紀「どうしてもっと練習して、部員を鍛えて、上を目指さない・・・?」

部長「・・・」

部長(私も昔はそう思っていたさ。でもな、世の中にはとんでもないバケモノがいるんだよ)

部長(それまでの努力も、夢も、希望も、全て根こそぎ否定していくような・・・)

175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:05:31.21 ID:XsGDZ54wP

―2年前。インターハイ長野県予選―
久保キャプテン「そいつは通らないな。ロン・18600」

部長(一年時)「ううっ!」

実況「またもや親ッパネの直撃ー!!」

実況「風越の中堅エース久保貴子の勢いが止まりません!!」

実況「これで早くも二位以下に10万点差の大独走状態」

実況「風越女子5年連続の全国出場に大きく前進です!!」

実況「一方、龍門渕高校は非常に苦しくなって来ましたー!」
絶対的なエースを擁し、長野史上最強と言われた2年前の風越女子。
全国での優勝を夢見ていた私の矜持は、県予選決勝の舞台で粉々に打ち砕かれた。

176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:09:16.18 ID:XsGDZ54wP

-中堅戦終了後-
部長(一年時)「・・・申し訳有りませんでしたっ」

先輩A「しょうがないよ。あなたも今までの試合では稼いでくれてたしさ。久保はちょっと強すぎ」

先輩B「まあ決勝まで来たんだし、今年のノルマは達成じゃん?」

部長(一年時)「え・・・?」

先輩A「私たちの最後の試合だしね。あとは楽しんでこよう!」

部長(一年時)「そんな・・・」

結局このまま龍門渕は副将戦・大将戦とも失点し敗退。だが先輩たちに悲壮感は無かった。
どんなときでも諦めず、勝利を最優先に追うことは間違っているのだろうか?
一人ひとりが責任を強く感じて臨むよりも、楽しく打つのが重要なのだろうか?

私は分からなくなった。
そしてそんな風越も長野勢10数年ぶりのベスト8まで進んだものの、
準決勝ではシード校の壁に阻まれ完敗した。上には上がいるんだ。

それにいくら一人が気を張っても、周りのやる気と実力がついてこれなければ意味が無い。
半端に夢を見る初心者が入ったって3年間つらい思いをするだけだ。それならいっそ・・・

178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:12:30.97 ID:XsGDZ54wP

智紀「・・・何?」

部長「・・・君には、まだ分からないよ」

智紀「・・・そうかもしれない」

智紀「去年までの私はずっと家に閉じこもって誰とも触れ合ってこなかったから」

智紀「私には本当の挫折も、立ち上がる勇気も、理解できないのかもしれない・・・」

智紀「でも、みんなは違う。私がここに来るキッカケとなったゲームを、透華は未だに挑んでくる」

智紀「そのたびにボロボロに負かしても、何度でもしつこいくらいに・・・」タンッ

透華「何を言っちゃってますの、この子は!前回の対戦は紙一重でしたでしょ!!」

透華「なんなら今すぐにでも、ハッキリクッキリ決着をっ・・・ムグムグッ・・・」

純「まあまあ。今いいところみたいだから、ちょーっと黙って聞いてみようぜ」

179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:15:51.47 ID:XsGDZ54wP

智紀「純は、その透華との麻雀勝負に負けて日本にやってきた・・・」

智紀「でも彼女が自分の選択について何か後悔しているところを、私は見た事がない」

智紀「・・・純は勝っても負けても、その結果を受け止めていつも勝負を楽しんでいる」

智紀「絵は下手だけど・・・本当に、びっくりするくらい下手だけど」タンッ

純「・・・おい・・・」

部長「・・・・・」タンッ

181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:19:09.46 ID:XsGDZ54wP

智紀「一は、いつも間に立って私たちをつないでくれる」

智紀「一度無くしてしまった絆を、今でも大切に思っているから」

智紀「一がいるから私たちは安心してお互いの気持ちをぶつけ合える」タンッ

一「ともきー・・・」

智紀「そして衣は、衣は昔とても悲しいことがあって・・・」

智紀「それでも初めて会ったとき、私を気遣ってくれた」タンッ
純の肩に乗って気持ちよさそうに寝息を立てる衣を見る。
部長「・・・・・」タンッ

智紀「私はみんなと麻雀を打つことが楽しい」

智紀「みんなと1つの目標を追いかけることが今はとても楽しい」

智紀「だから、まだ強くなりたい・・・」タンッ

182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:19:56.59 ID:QdeMZFzE0

ともきースピンオフ書こう小林さん

183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:23:18.06 ID:XsGDZ54wP

部長「・・・・」スッ…
ピッピッピッ・・・ビー
部員A「部、部長・・・」

A卓9回戦 部長:時間切れ失格。1位:智紀-A卓決着?

部員B「部長っ・・・」
スクッ
部長「龍門渕さん」

透華「何でしょう?」

部長「言えた義理じゃないんだが、出来たら他の部員の面倒を頼まれてくれるかな?」

部長「残るにしろ、辞めるにしろ、他の部に移るにしろ、便宜を図って貰えればありがたい」

部長「彼女たちには、全員私から伝えておく」

184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:26:32.62 ID:XsGDZ54wP

透華「・・・承りました。ですが、あなたはどうなさるおつもりです?」

部長「私は、少しやることが出来たんでね」

部長(時間はあまり無い)

部長(roof-topという雀荘に今年実業団からプロに転向した選手が、よく顔を出すという噂らしい)

部長(しばらく通ってみるか。実戦で鍛え直して卒業までに久保貴子にリベンジだ・・・)

部長「3月までには、寄らせてもらうさ。そのときには、また勝負したいな」

部長「今度は実際に卓を囲んで・・・な」

智紀「了解した・・・」

こうして、透華が言うところの『ロートル麻雀部殲滅プランΩ』は終了した。

188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:39:44.02 ID:XsGDZ54wP

~翌月曜~
杉乃「おっはよ、智紀!この前はごめんね、なんか変なとこ見せちゃって」

杉乃「あのあと国広さんたちに智紀がどこ行ったか聞かれたんだけどさ」

杉乃「なんかいいね、君たちの関係」
なるほど、そういうことか。こういうのは水くさい、というのだろうか。
とりあえず今日はみんなにお菓子でも買っていこう。
杉乃「それでさ、私チア部を作ることにしたんだ!」

杉乃「頑張ってる人を応援するっていうのが、やっぱり一番性に合っているみたいだしね!」
・・・・。いや、麻雀部はもう変わったのだけど・・・・。
まあ、いいか。確かに杉乃には、笑顔で人に発破をかけている方が
似合っているかもしれないから・・・。
智紀「じゃあ、予定をしっかり空けておいて・・・」

杉乃「ん?」

智紀「今年の夏は・・・きっと、長くなると思うから・・・」

196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:56:40.93 ID:XsGDZ54wP

実況「さあ、今年もこの季節がやって参りました!」

実況「王者風越の7連覇はなるか?はたまた新興勢力が、その牙城を崩すのか?」

実況「第70回全国高校麻雀選手権大会長野県予選、いよいよ開幕です!」
ザッ!
透華「あなたたち、準備は出来ていまして?」

純「ふあ~あ。ようやくかよ、待ちくたびれたぜ」

智紀「戦略パートは完了・・・。実行フェイズ・・・」

一「うん、頑張ろうね!」

衣「―――活気横溢。雲霞の敵も凄愴に滅す―――!」ゴオッ

透華「わたくし達の麻雀部、お披露目ですわ!!」

積(カン)!

198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2014/02/24(月) 00:57:46.92 ID:XsGDZ54wP

以上です。
最後の最後でさるってしまって申し訳ありませんでした。
支援してくれた方々ありがとうございました!

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする